posted by 渡月・トワヤ
at 00:00:00 │
EDIT
── 9,10,11,12……
しつこいくらいに何度も繰り返し数えているのは、目の数。
これを間違えると、後々泣く羽目になるのだ。
PR
最近、日付に興味がなくなったのかどうかは定かじゃないが、短大は学園より早く冬休みが始まるのもあってゆるゆると過ごしていたら、クリスマス目前だったというお粗末な話。
彼へのクリスマスプレゼントは何にしようかなぁ。
そう考えはじめたのは先月末だった。それが、なかば勇み足で世間もそこまでクリスマス一色じゃなかったのも手伝って、考えはそこでストップしてしまっていたのだった。
今年の冬はクリスマスを前に、雪がちらつくような寒い日が続いている。
あ、えっ!?
もうクリスマス!?
そう気づいたのは、1週間前のことだった……。
その日からは、自室にこもる日が続いている。
──22,23,24,25。
目を数えて、自分に嘆息する。
手仕事は嫌いじゃないけれど、どうしてハードル上げちゃったんだろう、自分。
初めてならば、無難にマフラーにすればよかったのに、思いついちゃったものは仕方ない。
図書館で借りてきた編み物の本を前に、今ボクの手元でせわしなく動いているのは、3本の細い棒針。
固まった肩をぐりぐりと回し、ケータイを確認した。
日付が変わるまでは、あとちょっと。
「よっしゃぁぁぁ!間に合ったぁぁぁ!」
ぐっと拳を握りしめ、勝鬨を上げるボク(←
ワインレッドの紙袋に、金銀のオーガンジーの細いリボンを結んで、彼の部屋の郵便受けにことんと落とした。
彼は今日もお仕事で、帰りは遅くなるだろう。
郵便受けを覗いて、彼はどんな顔をするかな。
喜んでくれるかな。
そんな風に彼のことを想えば、ボクの胸にぽわっと明りが灯って、何とも言えず満たされる心。
チャコールグレーの糸で編んだ手袋。
手首にほど近い部分には、白い六花の模様を一つだけ。ボクの実力では、それが限界なのだ。
少しだけイビツだけれど、ボクの想いが少しでも伝わりますように。
Thinking of you with love at Christmas.
posted by 渡月・トワヤ
at 12:53:44 │
EDIT
冬が近づいてて、日ごと寒さが増して、
だからこそ、ちょっとした出来事が、胸に火を灯す。
ふわっと巻いてくれたマフラーがとても暖かくて、
色なき風も、なんだかボクを避けてくみたいだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 15:15:51 │
EDIT
傍らのカップから立てる紅茶の湯気に、
開け放った窓からすべりこむ金木犀の風が溶けてゆく。
早くも傾きはじめた太陽が、部屋を金色の光で満たしてく。
まるでボクは、光が射しこむ海の底で、きらきら眩しい水面を見上げているみたいだ。
今読んでいる本の印象が、そう感じさせてるのかな。
「きっといいことがあるよ」
穏やかでやさしくて、そしてちょっと不思議なお話。
傍らのカップから立ちのぼる湯気。
そう、こんな感じの、穏やかな午後。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:35:37 │
EDIT
彼とのデートから帰ってきたボクは、
胸に抱えたままだった小さな紙袋を迷うことなく飾り棚の、一番目立つ場所へと置いた。
店から出て紙袋を渡されたボクは、少しだけ困った顔をして微笑んだ。
彼の気持ちは本当に嬉しい。
けれど、買ってもらう理由が、どうしても見つからない。
彼に予定外の出費をさせてしまった申し訳なさばかりが先に立つから「ごめんな」って言葉が口をついて出そうになる。
でもそれは、彼の想いまでを否定してしまう気がして。
「ありがとう」
と口にしてみたものの、自分の中で折り合いがついていないから無邪気には笑えず、そのことがますます自分を苦しめる。
ボクはいつの間にか、無口になっていた。
「どうした?」
基本的に即断即決のボクが考えこむことなど皆無に等しいからか、彼は少し首を傾げて、ボクの顔を覗き込んだ。
長い時間をこうして寄り添って過ごしてきた彼とは、誰よりも理解しあえているつもりだけれど、わかってくれているはずだというのは、ただの甘え。なんでもないとやり過ごして残るのは、後味の悪さと後悔だけだ。
言葉にしなくちゃ、何も伝わらない。
「うん。あのな……」
上手に言える自信はまったくなかったけれど、彼にはちゃんと聞いてもらいたい。
ボクは背伸びして彼にだけ聞こえるように耳元で囁いた。
「……そうかぁ」
彼は目をぱちくりさせながらしきりに頷き「話してくれてありがとうな」とボクの頭をぽむぽむと撫でた。
言ってくれて良かったよ。
彼の優しい眼差しにそんな言葉が滲んでいるようで、ボクは彼がまたこうしてボクのことを受け止めてくれたことに安堵する。
「じゃあさ、こうしよう」
さらに彼が提案してくれたアイディアは、ボクの思いやワガママを全部包み込んで余りあるもの。
ああ、あなたは。
付き合う前から、ずっとこんなふうにしてくれたよね。
言わなくちゃ何も伝わらないとは思うけれど、ボクは全部を言う必要はなかった。
彼とボクの似ているところ、共通する価値観が、言葉を超えた部分を補ってくれるのかな。
それとも、彼がボクをそれだけちゃんと見つめていてくれていることの証なのだろうか。
愛するってそういうことなのかもしれない(しれっと)
時折思うよ。
口にも出したことがない「いつかこうなったらいいなぁ」っていうような些細な願望ですら、あなたにはなんだか筒抜けみたいなときがあるから、もしかしたらボクの心の声はあなたにはダダ漏れなんじゃないだろうか、って。
それはちっとも嫌なことじゃなく(ちょっと気恥ずかしかったりはするけれど)あなただからいいやって、思える。
そうだ。
だいちだから、嬉しいんだ。
ボクは隣を歩く彼の手をきゅっと握り、今度は心からの笑顔を彼に向けた。そのボクの頬は、きっとさくら色に色づいている。
彼とのデートから自室に帰ってきたボクは、
飾り棚の前に立って小さな紙袋を見つめ、こぼれる笑みを抑えられないでいる。
そしてその頬は、さくら色に染まったままだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 10:17:41 │
EDIT
しとしとと降り続く雨。
先日、少し冷たくなった風に乗ってきた甘い香りはキンモクセイ。
その香りを胸いっぱいに吸い込んで高い空を見上げると、あぁ秋が来たなぁって実感する。
そう、いつの間にか夏は過ぎていて、本格的な秋の訪れ。
この雨で、あの小さなオレンジの花が散ってしまわないといいな。