posted by 渡月・トワヤ
at 13:00:21 │
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ガッコは冬休みなのだが初日が祝日ってぇのは、イマイチ実感が沸かないもんだ。
それでも珍しく早く起きることができたので、午前中いっぱい使って洗濯したり掃除したりして過ごす。
換気のために窓を開けると、思った以上に風が強くて!
ぶら下げてあったウィンドウチャイムが風情ゼロにかき鳴らされ
ボクは「うわっ!」と慌てて窓を閉めた。
…ともかく、掃除も一段落。
さて。
この後は予定もないし、ケーキでも買ってこようかな。
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季節柄、店内はクリスマスムードいっぱいのディスプレイ。
ショーケースに並ぶケーキのどれにも、柊の葉を模した厚紙がちょこんと飾られている。
お一人さま用の小さい小さいホールケーキなんかまである。
そりゃ確かに一人で食うけれど、ホールケーキ…飽きちゃうよね。
ボクは同じ量を食うのなら、数種類をちょっとずつ食いたいタイプだ。
昼飯後と、3時のおやつ、夕食後…3つー!
結局、ガトーショコラと抹茶のシフォンケーキ、フルーツタルトを買い求め、これまたクリスマス専用っぽい、赤と緑の模様が描かれている箱に納められたそれを抱えて帰路につく。
ケーキを食べることを想像し、にまにましながらエントランスに入ったところで
「あぁ、トワヤちゃん」
ボクの顔を見た守衛のおじさんが声をかけてきて、こっちへ来いとばかりに手招きする。今のだらしない顔、見られてなきゃ良いけれど。
「こんちはー。なぁに?」
ボクが守衛室の窓越しに覗きこむと、ちょうどおじさんが屈みこみ、入り口のドア付近に積んであった何個かの小包らしき箱を抱えあげるところだった。
「これね、全部トワヤちゃん宛だよ」
おじさんは器用にドアを開くとボクへとその荷物を預けて、エレベーターの「△」ボタンを押してくれた。
「えっ?あっ!?これ、全部??」
渡されたモンは、その真偽はともかくとして、とりあえず受け取らないと落としちゃうし。
あわわ、と多少慌てながら全部を抱え、到着したエレベーターに乗り込んでくるりと踵を返し、守衛のおじさんに「ありがとっ」とぺこりと頭を下げて、ドアは閉まった。
部屋に着いてとりあえずケーキを冷蔵庫に仕舞うと、コーヒーメーカーをセットした。コーヒーが落ちる間に、荷物を確かめる。
宛名はすべてボク宛で、間違いはない。
差出人は…実家からとー……わっ、仄守っち!えぇとこれは…五十鈴!おぉぉ、こっちはカナメ!んでもって、ゼン!
わーわーわー…!どうしよう!
今日届いたってことは、誕生日だからだよね!?
俄かに信じられず、自問自答。
でも、でもすっげぇ嬉しい!!
床に座ったままじだじだと身悶えて、「く~~~~~っ」と堪える。
でなけりゃ、危うく奇声を発しそうだ。
こんなにたくさんの人たちに大切にされて、ボクってなんて幸せ者なんだろうか!
その時、コーヒーが落ちた合図が耳に届いた。
よし、昼飯食ったらケーキを食おう。
今日はなんて、最高の一日!
posted by 渡月・トワヤ
at 00:00:00 │
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── ピンポーン
ドアのチャイムが鳴った。
こんな時間に誰だろう?
訝しげにドアを開くと、まいおが立っていて。
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「トワヤさん…」
少しばかりうつむいて、何かただ事ではない雰囲気。
「大丈夫か?」
声をかけようとしたとたん、くっと顔を上げたまいおは満面笑顔。
そして
「お誕生日おめでとうー!」
後ろ手に隠していた小さなクラッカーをパン!と鳴らしたのだ。
「お、おぉぉぉ…!」
日付変更線を跨いですぐだったというのもあり、ボクは面食らってしまった。
そう、今日はボクの誕生日だったのだ。
誕生日に、家族以外からお祝いを言われるなんていつ以来だろうか。
というのも、唯一の地元の友人、さやかはかなりのウッカリ(?)で、
「トワちゃんの誕生日って、9月だよね」
と、事実、9月21日にプレゼントを贈ってくれていたのだ。
(どうしてその日なのか、皆目見当がつかない)
ボクも祝ってくれる事実は嬉しかったし、いちいち訂正するのもめんどくさくてそのまま受け取ることにしていたから、こうしてホントの誕生日にお祝いしてもらえるなんて、なんだか逆に新鮮ですらある。
まいおは、美容と健康(?)に気遣って、小さなケーキを持ってきてくれた。
今食べても、明日の朝食べてもいいように、と言って。
宵越しのケーキは色々とアレなので、今から食うよ、と笑って受け取る。
寒いし遅いし立ち話もなんだからと言って、まいおは「またね!」と手を振って帰ってしまった。
ドアを閉め、紅茶でも淹れようかとテーブルにケーキの箱を置いたときに、
ケータイのメール着信を報せるランプが点滅しているのに気付く。
まいおが訪ねてきたのと時を同じくして、届いていた1通のメール。
「誕生日、おめでとさん」
短い一文だったけれど、差出人の名前を見て目を瞠り、それからボクは、してやられた、とこっそり破顔した。
posted by 渡月・トワヤ
at 21:42:16 │
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……突然の静寂。
正確に言うと、防波堤に当たって砕ける波の音は何事もなかったように続いていたし、汽笛の音も、時折響いていたから、静寂なんてものではないんだけれど、それまでに響いていた音が凄まじかった所為で、ぷっつりと無音の中に漂う感覚に襲われた。
そして徐々に、規則正しい波の調べにあわせるように、勝鬨は上がりはじめたのだ。
ボクは不覚にも攻撃を食らってしまい、魂が肉体を凌駕することすらなく倒れていたけれど、生命賛歌の効果でまるで眠りから覚めるように、意識を取り戻し身体を起こした。
まだ、擦り傷や強かに打ちつけた痕が痛むけれど、これも程なく治まるだろう。
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終わった。
ボクら銀誓館学園は、あの忌々しい原初の吸血鬼が日本へ上陸するのを阻止することに成功したのだ。
ある者は互いの無事を喜びあうように肩を叩きあう。
またある者は逝った仲間たちを偲んでいるのだろうか、空を見上げている。
ボクはそうした、ざわめきの中で、周囲を見回した。
最後の戦いの少し前に互いの武運を祈り、タッグを組んだアイツは。
ふっと視線が止まる。
少し離れた場所に立ち、衣服の埃を手ではたいている相棒を見つけた。
「カナメー!無事だったか!」
思わず駆け出していた。
「おうおう。もう終わりかー?ってぐらい、チョロかったけどなぁ」
カナメは振り返り、ボクを見てにぃっと笑った。
その表情を見たボクは心底ホッとして笑みを零していた。
それが、この戦いを終わらせて初めての笑顔だったなんて、
そんなわけないぞ!ないったら!!!
…ともかく、終わってみればボクの知り合いに、多少ケガ人は出たものの死者は出なかった。
偽善かもしれないが、本当に良かった。
さァて、ちゃんぽん食って、かすてぃら買って。
福岡観光して帰ろうっと!
明日のガッコは、偽身符で決まりだね。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:56:33 │
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24時間営業のファストフード店。
窓際のカウンター席に座って、
ホットのコーヒーカップを両手で包んで、ひとり。
夜明けを待つ。
命、大事に。
posted by 渡月・トワヤ
at 19:30:41 │
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ガッコが終わると、ボクは飛ぶように部屋へ帰り、昨夜のうちに準備していた荷物を抱えて、鎌倉駅へ。
そして今、地元の駅横にあるショッピングモールをぷらぷら歩いていた。
ボクが地元を離れてまだ1年も経っていないけれど、
駅周辺は再開発が進み、帰るたびに何かどこかしら進化を続けているように思える。
駅からバス1本で実家まで帰れないこともないんだけど、父が「その時間なら仕事帰りに迎えに行ける」というので、ボクはこうして時間を潰しているというワケだ。
約束の時間がもうすぐに迫ってきたので、駅前のロータリーに出た。
程なくして、父の車が滑り込む。
「すまんなぁ。待ったか?」
年の瀬が迫るとやはり仕事って忙しくなるみたいだということぐらいは、ボクにだって判る。
「そうでもないよ。店回ってたし」
夜の帳が下り、街灯やネオン、すれ違う車のヘッドライトが流れていくのをぼんやり眺めていると、家へ向かう道とは違う方へ、車は曲がった。
予想していたカーブと逆だったため、身体が父の方へ振られ、腕がぶつかる。
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「ははは、ちゃんと見てないとまた倒れるぞ」
おかしそうに笑って父は言う。
「え、家に帰らんほ?どっかに寄るん?」
父の横顔を見ながら尋ねると、
「うん、ちょっとな」
とすっきりしない返事。
すっきりしないのは、こっちだ。
まぁ、助手席に乗せられてるだけの身だ、誘拐されるのも侭よ。
車はトンネルを抜け、海峡を臨む山の山頂へと続く道へ入った。
確かに山道はぐねぐねと蛇がうねるように九十九折。
ちゃんと前を見ていないと、左右に振られてしまう。
「まぁ、なんだ。トワヤがこの景色をたまに思い出せればと思ってな」
車を駐車場に止め、展望台への階段を上りきったところで父が言った。
ボクを連れてきた張本人は、こんな強風が吹く場所へ来ることを想定していなかったんだろうか。
そぐわないほどの薄着で、両手をズボンのポケットにねじ込み、首をすくめて寒さをしのいでいる。
海からは、冷たく湿った風が、絶え間なく吹きすさぶ。
ボクはマフラーを口元までたくし上げ、ほぅぅと息を吐いた。
「思い出すも何も…。ちゃんと覚えてるって」
へへっと笑って、鼻をすすると、鼻が冷えきっているのがよくわかる。
「うぅ、寒っ!早く帰ろうやぁ。腹も減ったし」
ボクがくるりときびすを返すと、背中に届いた父の言葉。
「───」
「あぁ…判ってるって」
ボクはすべてを振り返ることはせず、ポケットから左手だけ出し、軽く上げてそれに応えた。