posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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「トワヤくん!」
冒険に出発する直前。
ボクの気持ちが少しばかり萎縮しているのを気にして、五十鈴が声をかけてくれた。
ボクと歩調を合わせるように、五十鈴はボクに肩を並べ
「大丈夫だよ、僕と師匠とでしっかり守るからね」
任せて、と言わんばかりに、胸を拳でぽんと叩いてみせ、満面笑顔。
テレパシー(=仮プレ)で「わ~!」とか「こっち来んといて~」とか悲鳴あげてる五十鈴を感じ取ったボクは、少し眉毛を上げ怪訝そうに、それでも笑い返してみせる。
「こんな依頼、初めてだからなぁ。ちょっとばかり緊張してんだ」
うんうん、判るよというふうに五十鈴は頷いてくれる。
「僕自身も、こんな依頼受けることになるなんて、思ってなかったし」
五十鈴の言葉に、思わず「は?」と問い返す。
「…自分で受けるって名乗りをあげたんだよね?」
意味が判らない。
「そうそう。自分で名乗りをあげたんだけどね。これも運かなー…」
目を閉じ、頭を左右にゆるゆると振って満足げな五十鈴の言葉に、
「…ウンだけに!」
「ウンだけにね!」
ほぼ同時に口にしたオチは、今回の依頼のキーワード。
ボクらは、あははと声を出して笑いあう。
緊張が、少し解れた気がした。
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やっぱ出発の前だからかなぁ?
五十鈴のテンションが妙に高い気がして理由を訊ねると、
気分を上げるために、携帯音楽プレイヤーで音楽を聴いていたんだと教えてくれた。
「どんな曲聴いてんの?」
ボク自身も音楽鑑賞は趣味だ。思わず食いついてしまう。
「んとね、僕は洋楽が好きなんだ」
ちょっと聴いてみる?と差し出してくれたイヤホンの片方を受け取って、耳へ。
ちょうど流れていたのは、ボクでも聴いた事がある有名な歌手の曲だった。
「あ、この曲知ってる!でもこれ…どこで聴いたんだっけなぁ」
何かのテーマソングだったかなにかか。
テレビから流れてきていたような映像が脳裏に浮かぶ。
「○○ってCDに入ってるよ。確か1曲目だったと思う」
「あっ、そのCDなら持ってる!なぁんだ、それで聴いたことがあったのか!」
自分の記憶力のしょっぱさが身に沁みて思わず苦笑い。
「でも、この歌手の声良いよなぁ。リラックスする時に良さそう」
イヤホンから流れる曲の感想を述べると
「トワヤくんなら、この歌手の良さ、解ってくれると思ったんだ」
五十鈴は、嬉しそうに笑った。
関西出身だからなのだろうか、五十鈴は良く喋る。
面白ければ良し。そんな価値観が根底にあるんだろうか?
ボク自身、友だちと雑談するのは大好きだし、
こういう何気ない会話はテンポこそ大事だと思っている節があり、そんな感じで彼とはウマが合う。
「さて、覚悟は完了できた?」
「…いつでもOKさ」
「嫁入り前の娘にこんなこと頼んで、ゴメンね」
手の甲で涙を拭うフリをし悪戯っぽく笑う五十鈴に、笑顔で応えてボクは前を向く。
無事に帰ってきてやる。
帰ってきても「臭ェ」なんて言われないために、終わったらちゃんと皆で掃除もする予定だし、
近場に温泉があるそうなので、帰りに皆で入ろうと約束してる。
依頼から無事に帰れたら、
きっと、綺麗さっぱりさ!
posted by 渡月・トワヤ
at 15:41:12 │
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ボクは良くも悪くも、物分りが良いらしくて、
それで、たくさんの人を傷つけてしまったし、
あっさりして見えちゃうことも多いんだと思う。
いろんなことを考えているつもりなんだけれど
口に出すと、なんだかすべてがキレイゴトみたいに白々しく思えてきて憚られる。
結局、口を噤んでしまったり、ただ頷くしかできなかったり、
無愛想な口調になっちまったり。
それにしても。
…この変化は本当に、言うようなほんの小さいものなのだろうか?
ボク的には、今まで生きてきた15年の中で一番のビッグウェーブなんだけれど。
それは、遠江の浜柳のごとく。
外から見たら、理解しがたいものかもしれないね。
ボクらには、ボクらの信条や流儀があり、
それらは歯車のように噛み合って動いている。
なんの不都合もそこには存在しないし、
滾々と沸き出す源泉のようにぬるま湯にならない居心地の良さは、掘り当てたもの。
そしてこれからも、掘り続けていけるもの。
もしこのことが本当に小さな小さな切欠だとしたら
この先一体、どんなふうな変化を見せるんだろう。
そう思うと、どうしてもこの心の動きを、抑えることができないでいるんだよ。
posted by 渡月・トワヤ
at 05:30:32 │
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果たして、ボクなんかに守られる資格はあるんだろうか?
自信のなさが、頭をもたげて、自分の価値が、判らなくなっている。
サポートを頼まれたということは、信頼されているということだ。
期待に、応えなくては。
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ボクが石化してしまえば、皆の危機に直結する。
精神的苦痛も、計り知れない。
皆がボクを守ることは即ち、ボクが皆を守リ続けられるということ、か。
しかしその時、自分の能力「浄化の風」は、どこまで通用する物なのだろうか。
ボクの力不足で効果がなかったら…どうなるのか。
それは、まったくの未知数。
不安で、昨夜はなかなか寝つけなくて。
この期に及んで、何を躊躇っているんだろう。
長針が、何度回ったんだろうか。
ほとんど眠れなくて、ボクは寝間着のまま、屋上へ出た。
びゅう、と吹く風に、思わず身を竦める。
徐々に東の空が白みはじめ、空気は冷たく澄んで、明けの明星がちらちらと大気の層で揺らいでいる。
前を向け。前を向け。
もうすぐ出発なんだ。
「しっかりしろ!」
コンクリの床にパチッパチッと響いたその音は風と共に、空へ往った。
熱を持った頬が、じんじんと鈍く痛む。
…無事に帰ってこれたら、何をしようか。
少しの間、気分が悪くなっているかもしれないけれど、
美味しい物を食べたい。(今はちょっと想像で食欲が減退中だし
フルるんに貰った入浴剤を浮かべた風呂に入って、しっかり眠りたい。
大好きなともだちにまた会って、この依頼のことを話して。
けろりと笑いあえたら、きっと素敵だ。
頑張らなくちゃ。
きっと口唇を結んで、顔を上げる。
よし、準備しよう。
踵を返して部屋へ戻り、まず。
玄関先に消臭用のアルコールスプレーを置いておくことは必須で←これ大事
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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依頼のサポートにボクが出掛けることを聞きつけて、まいおが荷物を抱えて遊びに来てくれた。
「嫁入り前の娘さんが…」
心なしか目を潤ませてる まいお。
ボクの方はもう割りと覚悟完了してんだけどね…
だってほら、踏んじゃっても洗えば済むから。
彼が持ってきてくれた荷物を開けると、ジャージやレインコート、防塵マスクまで入っている!
ボクは嬉しくなって、さっそく着替えることにした。
防塵マスク、首にはスカーフ。
ジャージの上からレインコートを羽織って、足もとは登山靴。
どっからどう見ても怪しすぎるいでたちだ!
「こんな格好でいたら、ぜってぇ職務質問されちまうな…」
さすがにちょっと恥ずかしくなって元の服に着替え直そうとしていたら
「間違っておしゃれ服で出掛けたらショック大きいと思うよ…!」
という。
さすがおしゃれっ子。
勝負服なんか(ないけど)着ていっちゃったら、それこそ精神的ショックがデカいよね…
そう思い直して、出発までの間、その格好で過ごすことに決めた。
ガッコへは、この際、偽身符に行ってもらうことにする。
(イグニッション解除すれば良いじゃない、というツッコミは、聞こえない)
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そんな感じで、なし崩し的に防塵マスクも被ったままでいたら、今度はカナメが遊びに来てくれた。
彼は防塵マスクのまま出迎えたボクを見て、防毒面のが良いんじゃないかと言ってそれでもひとしきり笑い、
「×××を踏むんやってなぁ」←伏字っぽく言っていたがボクにはその物に聞こえてしまったので…
とにまにま笑っている。
「まぁな。別に洗えば済む話だ」
と、玄関に置いておいた登山靴を指で指し示した。
「長靴の方がえぇんちゃうか」
とアドバイスをくれたものの、あいにく長靴はおしゃれなヤツしか持ってないので、登山靴で行くつもりだと話した。
でも、もしかしたら、ゴーストタウンで拾えるかもしれない。
そう思い立って、このいでたちのまま出掛けることにしたボクを、カナメはまた笑う。
「ふん、笑いたければ笑え。今は装備もアビリティもフルスペックじゃねぇからな。
…後は頼んだぜっ!」
彼の肩にぽんと手を乗せ、ボクはとびきりの笑顔で笑いかける。
「他力本願!?」
「まぁ、そう言うなって」
にまにま笑って彼の腕を取り、半ば強引にゴーストタウンへ。
…やはりというか、なんというか。
ボクはすぐに使い物にならなくなったのだった。
あと は 任せ た ぜ…(ぱたり
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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運動会が無事に終わった。
ボクの所属する8H百合連合は、午前中に飛ばした所為か棒倒しで標的になってしまい、8位にまで落ちた。しかし3ターン目での巻き返しにて、最終順位は4位となったそうだ。
~だそうだ、と言うのも、ボクは午前中こそ参加できたが、昼ごはん後に飲んだ風邪薬が効きすぎて倒れてしまい、午後はまるまる救護室で臥せっていたので、クライマックスに参加できなかったという体たらくで。
ちなみに優勝チームは、カナメやシェリ子が属する4D椿連合だったようだ。
…あぁ、あとで祝いを言いに行こうか。
参加した競技でもボクはあまりにも貢献できなかったので、打ち上げ会場の隅で小さく丸まって地味にジュースを飲んでいると
「あっ、トワヤくん!お疲れさんー!」
ボクの名を呼ぶ声に顔を上げると、五十鈴がジュースの入ったコップを手に、立っていた。
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棒倒しの巻き返しの件、実は五十鈴から聞いた話の受け売りだったりする。
「でも、楽しかった!燃え尽きちゃった感じだよー」
五十鈴は晴れ晴れとした顔をしている。
彼は打ち合わせにも積極的に顔を出していたし、今日も朝早くから、頑張ってたもんなぁ。
うんうん、と彼の言葉に相槌を打っていると
突然、五十鈴は思いだしたように
「そうだ。実はトワヤくんに頼みたいことがあってね…」
と、少し遠慮がちに切りだした。
その様子がいつもと少し違う気がしてボクも自然、神妙な顔になる。
「ボクでできることなら良いんだけど」
「うん、それは大丈夫」
そう言って彼はボクを教室へ連れ出した。
「…依頼?」
ゴースト退治の依頼が、時折教室へ届けられる。
五十鈴は今回、その依頼に出掛けるらしいんだけど、そこでボクのチカラが必要だそうなのだ。
所謂、サポート要請。
今回の五十鈴の頼みごととは、それだったのだ。
ボクは、こうした特別な依頼を自身で受けたことはないし、サポートを要請されることもなかった。
初めてのことってすっごくドキドキする反面、テンションは跳ね上がる。
「うん!ボクで良ければぜひに」
思いのほか乗り気になったボクに、逆に五十鈴が怯んだ。
「ホントに良いの?ネタっぽいけど…」
「は?ネタ?」
その依頼内容を良く良く見てみると、「ウン」を全員が踏むのがどうの、「ウン」を投げるヤツが居るだの…と書いてある。
「…ウン、てあのウン?」
「うん、あのウン」
少しトーンダウンしたボクにつられるように、五十鈴も若干小声になる。
「…うーむ。。。」
少し考え込んではみたものの、どうとでもなれ的な気持ちもボクにはあって。
「OK、ボクで良けりゃ、全力でサポートさせてもらうよ」
(一応)ボクだって女の端くれ。
ウンを踏むことを快諾するとは思ってなかったんだろう。
逆に五十鈴の方が
「えっ!?ホントに良いの?」
と驚いている。
「あぁ、構わんよ。どうせ今更…」と半ば独りごちて、ボクは少し笑ってみせた。
ボクの言葉に少し引っかかりを持ったのか五十鈴は、
相談ごとなら話を聞いてあげるからねと言ってくれた。
彼は法師見習いだから、人を安心させる話の仕方を覚えないといけない、のだそうだ。
骨になってしまったお師匠さまからも、ずいぶん熱心な指導をされているらしい。
その話に、ボクは師弟愛を感じずには居られない。
「ありがとうな」
ボクは少し心に引っかかってたことを訊いてみる。
並んだ事象を並べて、それを自分に都合よく解釈しているだけじゃないだろうかと不安に駆られることもある。
だけどそれを確かめるほどの勇気が、ボクには未だなくて、宙ぶらりんの気持ち。
「きっと大丈夫だよ。それで良いと思う」
五十鈴はボクの背をぽんと叩いて、そう言ってくれた。
「うん、ありがとな」
良い友人に巡りあえたものだなと感慨深く、ボクはもう一度彼に、今度は心からの笑顔を向けた。