posted by 渡月・トワヤ
at 13:28:14 │
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カフェオレはハチミツを垂らして少し甘くした。
しとしとと細い雨が降っては止み、またいつの間にか降りだしているような日曜日の午後。
部屋の中は程よく暖かで、ボクはベッドに腰かけて本を開いている。
色々気がかりはあるけれど。
きっと、だいじょうぶ。
だから今日は、ちょっとだけ考えることをやめて、大好きな本を読もう。
なんの予定もない日曜日。
気が付くとボクは、ベッドにぱたっと転がってうとうとと微睡んでいた。
ゆっくりと身体を起こして、ぼんやりと頭を巡らせる。
不思議だね。
近くにいないのに、ずっと傍にいるみたく感じられて。
温かいその腕にやさしく包まれ守られているような、心が凪ぐ日。
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posted by 渡月・トワヤ
at 14:37:14 │
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柔らかい陽射しが、常緑樹の葉をふんわりと覆っている午後。
吸い込む空気は、思いのほか冷たくて。
ボクの胸は、何を思うより前に、勝手にぎゅっとなって。
どうしてだろう?
何がそうさせたのか?
ボクはしばらく考えて、そして自分なりの答えを見つける。
普段は思い出すこともない出来事がある。
それは単に"思い出さない"というだけのこと。
何か─たとえばそれが風の匂いや音、花の色など─を切欠にして自分の内に仕舞われていたものが、今日みたく本人の意思とは関係のないうちに引っ張り出されてくることがある。
そんなとき、ああ忘れたワケではなかったのだな、って思う。
そしてやはり、これからも忘れることはないのだろう。
そういう思い出さない思い出が、ボクの一部になっていく。
それは決して、嬉しいことばかりじゃない。
思い出したくもないほど悲しいことや、やりきれないこと、切なくなることだってたくさんある。生きているんだから、それは当然のことだとも思う。そして、その直接的な痛みは時間でしか癒せないってことくらいは、もう知っているけれど。
今日胸に去来した想いは。
頭の記憶でなく、心の記憶。
だから……理屈じゃなくて、感覚でしかとらえられなかったモノ。
けれどボクは、たとえ時間がかかっても、逃げたりしないで向き合い、受け入れて、乗り越えていけたらいいなと思う。
そうすることで、しなやかな強さや、やさしさを持つひとになれるんじゃないかって。
たくさんのさまざまな想いを抱えればこそ、輝けるんじゃないかって、考えているから。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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今年の初詣は、寮のみんなとお伊勢さんへ行った。
けれど、彼は都合がつかなくて一緒できなかったんだよね。
一緒に初詣したかったなぁ…と思ってたボクの目に1枚のチラシが留まり、教室の中からの話し声で(盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど)、初日の出がどーの、という単語が聞こえてきた。
あっ、そっか!
初詣じゃなくて初日の出にだって、充分ご利益はあるんだよな(確か)!
ボクは良いことをひらめいた(そしてそれは往々にして、言うほどたいしたことでもない場合が多い)子供みたいに、ほゎぁと顔を蕩けさせながら鼻歌混じりで寮へと帰り、彼の部屋に遊びに行く。
「というわけで、一緒に初日の出を見に行かないか?」
嬉しそうに言うボクに、彼は一瞬絶句し、
「初日の出…?」
となぜか曖昧に笑った。
しかしすぐに「いいぜ、一緒に行こう」と快く応じてくれ、ボクは、「ありがとう!」と満面の笑み。
ただ、彼が返事に淀んだ一瞬の間と、その後笑うのを堪えているような彼のどこか微妙な表情が引っかかったボクは、「ん?」と傾げて少し考える。
…。
あっ!
「うぉぉぅ!初日の出じゃなくて、普通の日の出だっ!」
年明けからもう、何回も日が昇ったというのに"初"ってなんだよ!とセルフツッコミ。
自分のアホさ加減に我ながらビックリしつつ、てへ、と笑ってごまかすしかないボクだった。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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書棚から取り出した1冊をパラパラっと繰り、ふと止める1ページ。
「楽しい日々」
「私はとても幸せです」
「あなたは幸せを運ぶ」
それはあのときからずっと、
ボクのこころに咲きつづける白い八重咲きの花。
posted by 渡月・トワヤ
at 21:42:47 │
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神戸に、フェンリルが現れた。それも、抗体化しているらしい。という噂がボクらの間を駆け抜けた。
銀誓館学園、全国各地への一斉襲撃は、そのための隠れ蓑にすぎなかったということ。
まったく予想できなかったか、と言われれば、半分ぐらいはそんな気もしていたけれど…まぁ、後からならどうとでも言えるよな。
とりあえず、目の前のことから、ひとつずつ確実に。
(とりあえず、センターは無事終わらせた!)
フェンリルと聞くとボクは去年の2月に行った、ヴャウォヴィエジャの森のことを自動的に思い出してしまう。
──なにか…
……ボクは頭を振って、その思考を頭から締め出した。終わったことは終わったこと。前を見据えて歩いていこう。
一足先に彼は神戸へと向かった。
「みんなの活路を開いてくるぜ」
なんてことを笑いながら言って。
相変わらずカッコイイけれど、心配してないと言えばうそになる。
JCして日が浅い彼は今、少しだけツイてない。なのに彼は自分の身を呈することを厭わないから。
出来ることなら今すぐ、傍に行きたい。共に闘いたい。
けれどボクは、ボクが決めたやるべきことをやってからじゃないと神戸へは向かえないから。
悶々とする心は、握り飯をじゃんじゃん拵える情熱に昇華する!
梅、おかか、昆布、鮭。
ちゃんとした塩を使った塩むすびも、いくつか。
「おにぎりは愛情で握るの。だから美味しいのよ」って、母も言ってたし。
寮の仲間たちの顔を一人一人思い浮かべながら、米粒をつぶさないほどの力で、きゅっきゅっきゅっ。
しかし数多く作っていると、だんだん飽きてくるので、変わり種も用意することにした。まぁ、ちょっとした遊び心だ。
天ぷらを今から揚げるのはちょいと面倒だしそも冷蔵庫にはエビがなかったので天むすは諦めて、豚の細切れを使った生姜焼きを作って、具にした。
粒山椒がピリっと効いたちりめんも、渋いチョイスだけれど結構美味くてボクは好きだ。
よし、時間だ。
ボクは大皿に握り飯を山ほど盛り付けてラップをかけると、神戸へと向かった。
結果は、ひとまず完全勝利。
逃げたブリュンヒルデの行方や目的は気になるところではあるけれど、欲張らず、ひとつひとつを確実に。
寮に戻ると、先輩が握り飯の山を見つめ、食べたそうにしている。
「たくさん作ったのだし、たぁんとお食べー♪」
ボクは握り飯をふるまいはじめる。
先輩が一つ手に取ると、横からほかの先輩も「豚の生姜焼きのが美味そう!」と手を伸ばしてくれた。ボクは胸がふっと熱くなる。
皆がこうしてまた、ここに集えたことももちろん嬉しかった。
けれどボクは、それよりもっと。
誰かにこうして自分の作ったものを食べてもらうことが本当に好きなんだって思い知る。
美味い飯は元気の素。
それは、決して自分が食べる飯に限ったことじゃないんだなぁ。
自分が作った飯が誰かの笑顔に変わることでもまた、ボクは元気になれるんだ。
だって、美味しいカオって、すっごく幸せそうなカオだもの。
それをボクの作る飯が手助けしているのなら、こんなに満たされることってないよ。
ボクはもう一度、心の中で自分の将来の夢を確認する。
胸にあふれる喜び。
やっぱり、それが天職なのだろうと思う。