posted by 渡月・トワヤ
at 01:13:28 │
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先日の夢見の悪さが思わぬ尾を引いている。
また怖い夢を見たらどうしよう、と考えてしまって、少し眠るのが怖くなってしまったのだ。
(昨日の今日で、今度は不気味な夢を見てしまったのもある)
そんなので疲れが取れるわけもなく、このままでは負のスパイラルに陥りそうだ。
それはマズいよなぁ…と考えたボクは、友達や先輩に出くわすたびに、
「疲れを取るにはどんな方法があるだろう?」と聞いて回ったのだった。
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友達の一人は
「寝る前にホットミルクを飲むといいよ」と教えてくれた。
それはボクも聞いたことがあった。
メイプルシロップやハチミツ、生姜などを溶かして飲むと目先も変わっていいよとワンポイントアドバイス。
──ふむ。
ボクは手帳にさっとメモをした。「メイプルシロップ・ハチミツ」はもちろんセットで。
また、先輩の一人からは
「アロマテラピーが良いんじゃない」との意見をもらえた。
──ほほぅ。
もともと良い香りのものが好きなので、お香はしょっちゅう焚いていた。
しかしインセンスは当たり外れが多く、粗悪なモノだと煙たいだけで終わってしまうこともあり、これでは、セラピーには程遠いというもの。
もちろん、アロマテラピー自体にも以前から興味はあったんだけれど、テラピーという単語がなんとなく物々しいイメージだったし、精油を扱うというのが難しそうで、なんだか敷居が高いなぁ…と感じていたのだ。
まぁ、今思えば、スタート地点を思いきり勘違いしていた、ということなのだけれど。
そんなことをなんとはなしに言うと先輩が
「アロマキャンドルでチャレンジしてみたらどう?」
とさらなるアドバイスをくれたのだ。
え?アロマキャンドル!?
今までの敷居の高さはなんだったのだ?本当にボクは難しいイメージばかりを先行させていたようだ。
アロマキャンドルって、すっごく気になってたんだけど、あれもアロマテラピーのひとつなの?
ボクの顔に、子供のようなキラキラが浮かんだのだろう。
先輩は「くすっ」と笑うと、ラベンダーやカモミール、マジョラムなんかがリラックス効果が高いし、手に入りやすくておすすめだということまで教えてくれたのだった。
ボクは学校からの帰りに、とあるインテリアショップに立ち寄った。
以前この店はふらっと足を踏み入れたことがあって、その時にアロマキャンドルの品揃えがあることだけは知っていたし、ラベンダーならメジャーだから、きっと置いてあるはずだと踏んだのだ。
果たして、ラベンダーの香りの小さなろうそくと耐熱ガラスのアロマキャンドルポットを手に入れたボクは意気揚々と寮への帰り道を辿っていた。
この時点で、すでに悪い夢のことなどすっかり忘れており、ボクの気分がかなりウキウキしていたことを知る者は誰もいない。
夜。
風呂から上がると、体が芯からほわっとほぐれていた。うん、いい感じ。
ボクは夕方買い求めたアロマキャンドルとポットをいそいそと取り出すと、火を付ける。香りが立つのは、もう少し蝋が溶けてからなのだろう。
よし、こうなったら雰囲気は大事だ!
ボクは思いきって部屋の照明を落とした。
薄暗い闇に、ぽわっと浮かぶ、小さなオレンジ色の炎。
もちろん火なのだから、手を近づけるだけで温かい。(手を近づけすぎたら火傷するだろうね)
そういった暖かさをじかに感じることも癒しの一つなのだろう。
それに時折ゆらりと揺らめくオレンジ色の炎は、物理的なだけでなく精神的にも暖かい作用をもたらしてくれるらしい。ぼんやりとその揺れるさまを見ているだけで、心の中の固まっていた部分が、蝋のように溶けてさらさらとした透明な水になっていくように感じられた。
そうか、こういうことがテラピーなのか。
これは、想像していた以上の癒し度。
ちょっとしばらく、ハマりそうだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 03:57:56 │
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はっとして、ボクは目を開いた。
ここはどこだ…?
さっきまで繰り広げられていた光景と今ボクが横たわっている現実がつながるはずもなく、今自分が何処に居るのか、良く判らなくて。
ボクはぼんやりとしたまま、常夜灯が淡く照らしだす天井を見る。
頭の中がじーんと痺れ、ぐるぐると回りつづけているような感覚がしている。
ボクの目の前に差し出された紙。
星、あるいは手のひらにも似た図形と、それに散りばめられた数式が記されたそれを与えられ、解くように言い渡される。
「こんなの見たこともない。解けないよ」
その紙を突き返したものの、ボクを良く知る男性に「しょうがねぇな。ヒントをやるよ」と説得され、もう一度解く羽目に。
そこで何が変わったのか。
見たこともないはずの数式が解けてしまった瞬間、ボクは何者かから追われる立場になった。
追われる理由もわからない。
そもそもあの図形に何の意味が?
問う隙を与えないほど強いチカラで手首を掴まれ「走れ。逃げろ!」と夜の中へ引きずり出された。
ワケも知らされず逃げて、
逃げるたびに場面は切り替わり、
場面が変わっても
それでも、やはり逃げ続け、追い詰められてボクは、
直感だけで飛び込んだ、、、
──夢、か…。
耳に届いてきたのは、あえかな虫の音。
ようやくほぅっと安堵の息を漏らしてゆっくりと身体を捻り、枕もとにおいてあるケータイを手繰り寄せて時間を見た。
午前3時。
夜明けまでは、まだ遠い。
ボクは身体を起こした。
布団の中、足を投げ出して座った格好のまま、ボクは夢の中の出来事を反芻した。
もともとボクは夢をあまり見ない性質。
それが、目覚めた後までもこんなにハッキリと思い出せるほど怖いと思うような夢を見たため、ちょっとばかり神経が昂ぶってしまったのだと思う。
いつか本で、あるいは映画で「いつか見たことがある」ような描写に重なる背景もあった気がした。
もし自分の「今、覚醒している間の記憶」とそれが重ねられるのなら、さっき見た夢に理由をつけられる。
そこまで恐れることなんかない。そう言い聞かせられる、そんな気がして。
それで、なんとか重ね合わせようと試みてみたのだけれど、途端に靄がかかったようにぼんやりとしてしまい、何一つ上手に重ねることができなかった。
まぁ…そもそも夢なんて、自分の見てきたものや経験してきた記憶の断片が、ごちゃまぜに織り上げられて世界を形作るのだろうから、重ね合わせたところで、何の救いも意味も、見つけられるワケないんだよな。
さっき見た夢も、書店の地下に夜の公園があったりして、なかなかシュールだった……
ボクは、大きくため息をつくと、夢の記憶を辿るのをやめた。
しかし、こんな時間に目が覚めるなんて今までになかったこと。
横になっても夢の残滓がまぶたの裏にちらついて、眠れる気がまるでしなかった。
そしてふと感じる、今、自分は一人だという孤独感。
怖い夢の余韻。
あるいは単に疲れすぎか。
ボクはどうしていいか解らない小さな子供みたいな気持ちになり、少しだけ泣いてしまった。
でも、泣いたのはほんの少しの間だったと思う。
まさか自分が泣くとは思わなかったし、そも泣いたって仕方がないのだと気づいたボクは、思い直して部屋を出、食堂へ降りた。
とにかく、心が冷え冷えとする感じがしたからだろう。
何か暖かいものでも胃に入れれば、少しは落ち着くんじゃないかと思ったのだ。さすがにコーヒーや紅茶では、ますます目が冴える、ぐらいの分別は持っていた。頭の隅で、夜食用に買っておいたインスタントのスープか味噌汁がまだあったはずだと考えを巡らせて。
この時間の寮内はさすがにしんと静まり返り、誰の起きている気配もない。
ボクは極力足音を立てないよう、そろりそろりと廊下を進み、食堂の一角の蛍光灯だけを点した。数度点滅してほどなく灯った白くて冷たい明かりの元、ボクはさらにできるだけ物音を立てないように湯を沸かして、マグカップに味噌汁を作る。
そしてふと視線を上げた先。
蛍光灯に薄く照らされた談話室の掲示板が見えた。近づいて確かめると、明日から始まるプールに、ボクが固定メンバとして名を連ねるチームが参加する旨、記されている。
時間が時間だし、指名はされていたものの、強制ではないということも書き添えてあった。
昨夜はそれを確認するか否かのタイミングで、眠ってしまったのだ。
やっぱりボクは相当疲れていたらしい。だからあんな夢も見るんだ…。
気づけたのはラッキーか。参加表明だけでもしておこう。
ボクはその掲示板の最後に、名前を書きくわえておいた。
食堂のテーブルについて、ふぅふぅと冷ましながら、味噌汁を飲む。
炊事場からは、冷蔵庫の低いモーター音が絶え間なく聞こえてくる。
コトリ。
カップをテーブルに置く音がやけに良く響くように感じるのは、いつもはここが、仲間の集うにぎやかな場所だからなのだろう。
時計を見遣れば、もう少しで午前4時。
目が覚めてから、もう1時間近く経っていた。
味噌汁効果か。夢の名残も、少しだけ薄らいだみたいだ。
これを飲み干したら、また布団に戻ろう。
少しでも休めれば、
明日には夢のことなど半分以上忘れて、きっとまた笑えるようになるはずだから。
posted by 渡月・トワヤ
at 19:41:29 │
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陽が沈む時間は日ごとに早くなり、夕闇があたりを包めば風はひんやりと頬を撫でる。
秋が深まったある日の夕暮れ。
今日、ボクは学校帰りに図書館に行き、閉館ぎりぎりまで自習していた。その後ふと思い立ち書店に足を伸ばしていたせいで、こんな時間になってしまった。街灯が足元に長い影を落とす。どこかの家からは夕餉の香り。
寮の近辺は閑静で、すれ違う人もほとんどない。1年前に住んでいた場所とはかなり違うけれど、今は入寮して本当に良かったと思っている。
友達が増えたことも嬉しかったし、(もちろん、彼に出逢えたことが一番の僥倖だ)それ以上にいざ受験生になってみると、それまでの「普通」がそうではなくなっていることに気づいたのだ。
静かな環境は(優等生的に言えば)勉強するには集中できるうってつけの場所だ。そしてなにより、一人暮らしのときは当然、自分のことは自分で面倒を見ないといけなかったのだもの。風邪ですら、うかうかとひいていられない。
ラクな方へ逃げることは簡単だけれど、家訓が染みついちまってるボクにはコンビニ飯とか魅力を感じないワケで、そうなると自炊にかける時間って、結構大事。
そんなことをぼんやりと考えるとはなしに考えながら歩いていたとき。
「……とわ~」
ボクの名を呼ぶ声にはっと顔を上げ、振り返る。ここでそんな風にボクを呼んでくれる相手は一人しかいない。
ボクの胸はきゅっと掴まれたようにとくんと跳ね、表情がふわりと緩んだ。
「今帰りか?」
ボクに追いついた彼にそう尋ねられ、ボクは「うん」と頷く。自然につながれる指先。ボクらは並んで歩き出した。
「元気、出たみたいだな」
彼が嬉しそうに笑んで言う。
「うん、充電完了!だいちのおかげだよ」
ボクは、何度言っても足りない「ありがとう」の言葉の代わりに、彼ににっこり笑ってそう答えた。
「そうか、それなら良かった。じゃあこれからは、またしっかり受験勉強だな」
ボクらの間で半ば挨拶と化した単語。この一年のキーワード。
うん。
そうくると思ったよ。
ボクはふふん、と勝ち誇って笑い、
「今日はもう図書館でも勉強してきたんだぜぃ」
つながれていない方の手で、ピースサインをして見せる。
彼は「へぇ」と少し感心したように片方の眉を心持ち上げてボクを見下ろすと、
「ああ、それでこんな時間に一人で歩いてたんだな?」
そう言ってボクの頭をその大きな手で撫でてくれた。
「腹、減ったなぁ。早く帰ろうぜ」
「うん、そうだな。ボクもお腹すいた~」
つなぐ指を握りなおす。互いが同じだけのちからをこめて。
こういうとき。
ボクらをつないでいるのは、この指先だけじゃないって、
ボクは強く感じるんだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 08:12:04 │
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こんな季節だからなおさら、暖かさが嬉しい。
つながれた手、心。
こんなふうに絆は固く強くなっていくんだね。
心が、ぬくいみずでひたひたになってくみたいだ。
「充電完了~!」
ボクは空へと腕をぐぃっと伸ばして、にっこり笑む。
胸をいっぱいにする想いを確かめて、大きく深呼吸ひとつ。
そして、ガッコへ続く道を軽い足取りで駆けていく。
posted by 渡月・トワヤ
at 15:51:13 │
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運動会が終わった、ある日。
寮の談話室でとある先輩が「白銀寮マル秘写真集」など言いながら、一冊のアルバムを広げていた。
もう一人の先輩が「後で見せてね~」なんて言っている。
今年の運動会は、後夜祭のみの参加になっちゃってて、どんな様子だったか気になってたんだよね。
「マル秘」ってのが少々ひっかかるが、ボクはしれっとその輪に近づいて、耳をダンボにした。
どうやら先輩はクロネコの着ぐるみを纏いつつ、さまざまなシーンを激写してきた模様。(器用な黒猫だ。)
先輩が撮ったと思しき寮生のさまざまな表情を切り取った写真が、繰られるページにセンス良くレイアウトされており、それがどんなシーンだったか、説明もそれぞれにしてくれていた。
棒倒しのシーンが一通り終わり、次のページ。
「……だろ、それからいいムードで踊る大地と・・・・・」
そこのところで、ボクは弾かれたように、「うわぁ!」と声を上げた。
「ね、その写真、焼き増しして(できれば引き伸ばしてパネルにして)ほしいんだけど!」
考えるより先に、口走ってしまった。
でも、もしそれが叶ったら、部屋に飾って、しょっちゅう眺めていられる。
そしていつでも思い出せるのに。
あの夜の胸のドキドキも、
炎の熱さに瞳が潤んだことも、
彼の顔を見上げる面映ゆさも。
全部全部、忘れることなどないけれど。