posted by 渡月・トワヤ
at 22:27:52 │
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まんまるお月さまだけが、何も言わずに見守っている。
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今年の旧暦八月十五日(中秋の名月)はちょうど満月に重なる。
海辺の丘でお月見しませんかというイベントのお誘いがあり、ボクは彼と出かけることにした。
今年の浴衣の着納め。
鮮やかな黄色の帯は、夜目にも鮮やかだ。
当日は天気も上々。月明かりは煌々とあまねく地上を照らしている。
同行していた人たちの輪からそっと離れたボクたちは、月明かりに導かれるように散歩にでた。雪駄と下駄の、土を踏むゆったりとした音だけが耳に届く。
ほどなくボクらは見晴らしの良い丘へとたどり着いた。どちらからともなく寄り添って、風のない静かな海を見下ろす。
波に揺れる月光の帯へとボクは指を向け「月の道みたいだね」と隣に立つ彼にささやいた。彼も「ホントだな」と頷く。
繋いだ指から伝わる熱は、彼のやさしく温かい心そのものみたいでいとおしくて。
ボクの顔が赤いのはきっと月光が上手く隠してくれているはず。
視線を海原から彼に移すと、目が合った。
もう、それだけで胸がいっぱいになる。
なんの言葉も見つけられずボクは、自分が彼といることでこんなにも幸せを感じているのだと、せめてその何分の一かでも伝わってくれたら、と微笑みかけた。
彼と観る景色は、いつだってなんだってボクにとっては特別だし、
これからも、ともに月を見上げる機会は幾度となくあるだろう。
けれど、今日の月の美しさは、今日だけのもの。
ボクは彼からそっと視線を外すと、この風景を瞳に焼きつけていた。
規則正しく寄せては返す波の音の合間を縫うようにボクの名を呼ぶ低くて柔らかい声は、どこかしら力強くもあり、ボクの耳には心地よく響く。
ボクもだから、自然と柔らかな表情になって、「ん?」と首を傾げゆっくりと彼を見上げ──
予想だにしていなかったこと。
少し驚いて、目を瞠る。
ふと潮騒が遠くなる感覚。
唇が触れあう瞬間、
ボクは目をそっと閉じた。
ふわりと頬を撫でたのは風、
あるいは吐息。
早鐘のような鼓動、
絡め合ったままの指。
それが、
今のこの瞬間の
ボクの世界のすべて。
そっと交わされたくちづけを、空高く浮かんだお月さまが柔らかく照らし続けていた。
posted by 渡月・トワヤ
at 18:20:06 │
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試験も無事に終わり、答案が返された。
かけてくれた応援になんとか報いることができたと
ほっと胸をなでおろす週末の学校帰り。
ボクはとある雑貨屋へと立ち寄った。
もうすぐお友達の誕生日だから、贈り物をしたくって。
彼女はボクとまったくタイプが違っていて、女の子らしい(というとちょっと失礼な感じかも)人だ。おっとりしてて、可愛いものやきれいなものが好きだし、実際そういうものに囲まれているのが何よりも似合う女性。
昔近所に住んでいた、ピアノを弾くのが上手でやさしいお姉さんに、ちょっと雰囲気が似ているかもしれない。
1歳しか違わないのに、この違いはなに…!(ガクガク
ちらりと聞いた話では彼女は最近、ちいさな森の中にレストランを開いたんだとか。
彼女のことだから、きっとハーブなんかもいろいろと使った料理やお菓子を作るんじゃないかなぁ。
もしかしたら、レストランの周りは、ちょっとしたバラ園になるかもしれない。
甘いお菓子の香りに誘われて、蝶々や、リス、野ウサギ、シカなども集まってきそうなイメージ。
ボクはまだ見てもいないのにそんな風に思いをめぐらし、そういえばもうすぐ彼女のお誕生日だったと思い出したのだ。ならば、開店祝いも兼ねて何か贈り物をしたら喜んでくれるんじゃないかという結論に達し、今この店にいるというワケ。
そういうテイストの店を選んだのもあり、品揃えは彼女のイメージとほぼ重なる。
…やっぱエプロンかなぁ。
料理=エプロン、という安直な発想から、ひとまずキッチングッズがおいてあるコーナーへ。
陳列してあるエプロンを次から次に取り出して彼女のイメージと重なるかどうか、確かめる。間違っても自分にあてがったりはしない。それぐらいは自覚している。
(近頃、若干服装はおとなし目になったものの)店内に居るほかのお客さんとは明らかに雰囲気の違うボクに声をかけあぐねている店員さんたちの様子が視界の端にちらちらと映る。
が、気にしては負けだ。
それに、ある程度ほうっておいてもらったほうが自分のペースで選べるので、実際ボクは助かっている。
そのうち取り出したエプロンにボクは「おっ」と手を止める。真っ白で、厚手でありながら柔らかい上質な布。レースがふんだんに配されたエプロンは、まさに彼女のイメージだ。
けれど。
残念なことに実用性には欠けている感じ。
それじゃあ意味がないんだ。彼女が似合うのは、可愛いだけのエプロンじゃない。
ボクは少し肩を落としながら、その白いエプロンを元あったところに戻した。
うーん。
エプロンは、やめよう。
自分が望むようなエプロンには巡り合えず、ボクは店内をぐるり徘徊しはじめた。
…ん?
そのうちボクが足を止めたのは、おしゃれなスコップやプランタが置かれたガーデングッズのコーナーだった。
ボクが花についてちょっとだけ詳しくなれたのは、彼女の影響が大きい。
ボクは見て楽しむだけだけれど、彼女は育てる楽しみを持っていて、いつかの引越しの手伝いをしたときに、彼女の荷物にいくつもの鉢植えがあったことを思い出した。
あ、これいいかも!
ぱっと目を引いたのは、白い革製の手袋だった。
それはガーデニング用の手袋で、こういった皮製のものならバラのトゲだってへっちゃらだ。ボクの脳裏にバラのお世話をする彼女の映像が浮かぶ。
パイピングと手首に縫い付けてあるリボンが同色で誂えてあって、実用的には見えないほど、デザインも可愛らしい。
リボンの色違いで4種類ほど並んでるうちの青を迷わず選び取って、とりあえずボクは自分の手にはめ、手を握ったり開いたりしてみた。案外やわらかくて、指の動きを妨げない。うん、これはいいぞ。
「──着け心地はいかがですか?」
ボクがあまりに何度も手をにぎにぎしていたからだろう、店員さんが声をかけてきた。ボクははっと我に返り顔を上げ「えっ、あ、えぇと。考えてた以上にやわらかくて、つい…」とにぎにぎしていた言い訳を聞かれてもいないのにしている。
「そうなんです。柔らかい革を使って女性用に作られたものなんですよ。だいぶ細身でデザイン的にもおすすめなんですよ」
ふわりと微笑んでそう話す店員さんの言を受け、もう一度手に取った手袋に視線を落とす。
言われてみれば、ホームセンターとかで目にするようなガーデニンググローブは無骨な印象(「森の男!」ってイメージ)だ。それに比べるとデザインも凝っているし、だいぶスタイリッシュ。
今手に持ってる白と青の配色も清潔感あふれる彼女にはぴったりだと思った。だからこそ最初に手に取ったともいえるけれど。
「よし、これ、ください!」
なんだか気合が入っちゃって、ちょっと大きい声が出る。
対応してくれた店員さんは、ちょっとだけ目を瞠って、それからくすっと笑い、レジへとボクを促した。
紫とオレンジの淡いグラデーションに羊雲が広がる空の下。
少し欠けた月が、寮までの道を歩くボクの後ろからついてくる。
(気に入ってくれるといいなぁ。)
ボクは少し、にまっとしてしまうから、慌てて頬をぐっと抑えた。
贈りものって、贈る方にとっても、なんだか魔法みたいなところがあるよね。
しあわせな気分を半分こにできるんだから。
posted by 渡月・トワヤ
at 11:59:26 │
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今日の18時まで、
とりあえず、走り抜けてやる。
その後は、ちょっとへにょりとしたいなぁ。
posted by 渡月・トワヤ
at 00:37:19 │
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「9月も、どこかへ一緒に行きたいと思っていたから」
そう言って、誘いに応じてくれて嬉しかった。
一年に一度着れたらいいかなぁと思っていた浴衣を、
今年は結局、2回も着れることになって、
それもまた、ボクが喜んでいる理由のひとつ。
落ち着いた浅黄の地に、
きらめく川で水浴びをするかのように舞う蝶々の柄。
鮮やかな黄色の帯を締めたら、背筋がシャンと伸びる。
ボクは浴衣に袖を通すと、パリッとした生地を手のひらで撫でおろした。
浴衣の肌触りは、鬼灯市でのあなたの言葉を思い出させて、ボクは少し頬を赤らめる。
今年の浴衣は、これで着納め、かな。
出かける先は、海の近くの草原。
時折潮騒に耳を傾け、月を見上げたりして。
早秋の夜の気配に包まれて、二人でゆっくりと歩いて過ごせたらいいな。
posted by 渡月・トワヤ
at 12:10:03 │
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12日は満月だ。
その日の天気予報は、曇り時々晴れ。うーん微妙。
きれいな月が見れたらいいんだけれど。
教室でもお月見会のお誘いの貼り紙が何枚か貼り出されていて、ボクは心が揺れている。
受験生だから、自重すべき?
たまには息抜きもしたいし、彼と一緒に過ごしたいんだけど、仕事が忙しそうだから、無理かなぁ。
まぁ、いいや。出かけるのは受験が終わってからでもできるもんな。
ぼちぼち小望月。
今夜、屋上でプチ月見でもいいな。
彼を誘って、
あったかいお茶を魔法瓶で準備して、
みたらし団子も買って帰ろうかな。
おでかけしたいのはやまやまだけど、つきつめれば彼と一緒の時間を過ごしたいだけなんだ。それに、彼と見る月ならばどこで見たって綺麗に決まってるから、場所なんて本当は、どこでもいいんだよね。
寄り添うように、
(できれば手もつないで)
月を見上げる。
会話なんて、
「きれいだな」
「そうだな」
ぐらいでちょうどいい。
冷たくて柔らかい
銀色の光がさらさらと
降り続くようなしずけさの中で、
隣に彼が居てくれるなら、
それだけで、ボクの心は、
ぽぅっと火が灯るように、暖かい。
ボクが望んでるのは、つまり、そういうことだ。
うーん、やっぱりボクは単純なのかなぁ。