posted by 渡月・トワヤ
at 17:19:58 │
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プールの地下で行われているバトルカーニバル、ボクらのチームの初戦。
「…あーっ!」
相手チームのメンバ表を見て、ボクは声を上げる。
まさかこんなトコで、二人に会えるなんて思いもしなかった!
こういうのって、なんか嬉しい。
二人ともボクよりレベル高いからなぁ。
胸を借りるつもりで、いざ、勝負!!
ボクは初手で自身の魔力を高めるため、前方の空中に魔方陣を描きつつ……ニヤ。
勝つ気でいってるよ!
いつだって本気だよ!
フザけてなんかないよー!
でも頬が勝手に緩むんだもん!
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posted by 渡月・トワヤ
at 19:29:41 │
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ボクの首元に光るのは、ごく細いシンプルなシルバーのネックレス。
まぁ、ボクの小遣いで買えるものだから、高価ではない。(でも一応silver925)
けれど、これは、金額の大小が問題ではないのだ。
「いつでも使っていいからな」
微笑みながらそう言われ手にやさしく握らされたものを見て、ボクは自分の頬にさっと朱がさすのを感じた。
それを渡されるということ自体が彼から「お前は特別だよ」と言われたようでもあって素直に嬉しかったし、微笑む彼に見惚れていたのも事実。ボクは彼のゆったりとした微笑みがすきだ。
ただ、使っていい、と言われたところで、具体的にどんなときに使ったらいいのか、本当のところ、ボクはよく判っていなかったりもするんだけれど。
それでも、ボクはこのてのひらに包んだモノに、彼の想いが込められている気がして、とにかく嬉しかった。
彼の言に小さく頷いて
「わかった。ありがとな」
と微笑み返す。
気がつけば、彼と恋人同士になって1ヶ月。
「え、まだそんなもの?」と思わず言ってしまいそうになる。
あまりそういう実感が湧かないのは、それ以前とさほど付き合い方に変わりがないように感じられるからだろうか。
周囲に恋人同士だと認められてはいるものの、彼とボクとのふたりの関係性についていえば、彼はこうなる前からずっと一貫してボクを大切にしてくれていたから、よけいにそう思えるのかもしれない。
ただ、安心感についてだけ言えば、以前の比ではないほど大きくて。
これも、その安心感のひとつ…と言えるかもしれない。
ボクは再度、手のひらに包んだそれを見つめる。
たとえばボクのこころがグラグラとゆれ、何かを見失いそうになってしまったなら、おそらく彼は、躊躇なくその両腕をボクへと差しのべて受け止めてくれるだろう。
頼られることが多かっただけに誰かに頼るのは苦手なボクだけれど、彼の頼もしさは、そんな苦手意識さえいつか吹き飛ばしてくれるような気がしてる。
だって、ボクが今日も笑顔でいられるのは、彼が傍に居てくれるからに他ならなくて。
こんなにしあわせなことが、ほかにあるだろうか。
次の日、ボクはシルバーの細いシンプルなネックレスを買った。
ボクの小遣いで買えるほどのそれは決して高価なものではないけれど、値段の問題ではない。
ボクは彼からの贈り物をその銀の鎖に通して首からぶら下げ、服の上からそぅっと握った。
これは、ボクが笑顔でいられるお守りだから、
肌身離さず持っていたいんだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 19:48:08 │
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「カウニストゥーリアンパイヴァー………♪」
ゴキゲンなボクの鼻歌だが、即興すぎて二度と歌えない。
うーん、一期一会の心。
台風の影響で、ちょっとだけ風が強い雨の日。
別に飛ばされちゃうほどの風でもないとは思ったんだけど、
彼が「一緒に帰ろうぜ」と言ってくれたから、駅で待ち合わせた。
彼からのお誘いは、いつでも心が浮き立つのだ。
並んで歩くと傘を傾げても横に広がっちゃって他の人に迷惑がかかってしまう。
うーん。
ボクは(ちょっと恥ずかしかったけど思い切った)自分の傘をたたんでしまうと
「えい!」と彼の傘に飛び込み、腕にくっついた。
彼はちょっとだけ驚いたように目を瞠り、それから穏やかでやさしい微笑みをくれるのだ。
その笑顔はボクを心から寛がせる。
ボクは胸の内がくすぐったくて「えへへ」と笑った。
それで嬉しくなったボクは、先ほどの即興の鼻歌を歌ったというワケだ。
「それ、何の歌なんだ?」
雨に濡れないように、ボクの肩を抱き寄せながら彼は問う。
「…さぁ?」
ボクはにこっと笑って首をかしげた。
えっ?と軽く驚きながら「なんだそれ」と愉快そうな顔をする彼に
「今なんとなく歌っただけだからさ。二度と同じ歌は歌えないよ」
そうしてボクは、歌詞の意味をこっそりと彼にだけ打ち明けるのだ。
──今振り返れば。
あの春の出来事から始まったのは、自然の営み。
あの出来事は、いわば種蒔きだったのではないだろうか。
蒔かれた種は、土の中で眠りに落ち、
季節は流れ、梅雨の豊かな雨で潤され芽吹いた若葉。
それは夏のまばゆい光を受けてぐんぐん育ち、いつしかとても美しい花を咲かせたんだ。
きっともうすぐ訪れる秋には豊かな実が生るんだろう。
そしてその実は、また新たな花へと繋がっていく。
その自然の流れのなかで辿り着いた、今ボクがいるここはだから、ボクが居て然るべき場所なんだって思う。だって、ボクがこんなにも素直でいられる場所なんて、他の何処を探しても見つかりっこない。
ボクは花のように。
花が風に揺れるように、あるがままを受け止めよう。
ハチミツ色の陽の光をいっぱいにあびて、
あたたかな大地がしっかりと支え、育んでくれるよう。
だからボクはいつも、花のように笑っていられると思うんだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 22:44:37 │
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──?
ボクは英語の長文和訳の手を止めて顔を上げ、窓の方へ顔を向けた。
まぁ、見たところでカーテンはひいてあるから、音と気配が感じられるだけなんだけれど。
それでも、ごく小さな雨粒の、かすかな雨の音がした。
大型で強い台風がゆっくりした速度で日本に近づいてきている。
この分だと新学期早々、暴風雨の中通学…ということも十分にありうるわけで。
それが風台風であるのなら、年中風が強く吹いてるようなところで生まれ育ったボクにとっては、けっこう余裕。むしろちょっとワクワクしちゃうんだけどなぁ。(ビョォォ!とかいう風の音に興奮してしまう)
でも、雨が伴うと、もうダメ。
暴風雨の中、傘をささずレインコートを着て歩くのも、そりゃ少しの間は楽しいけれど、長靴の中までズブズブになるのは、気持ちが悪くてガマンできない。
もし仮に学校が夏休み明け初日から休校とかになっちゃったら、課題を(めずらしく全部やり終えたから)めちゃくちゃ肩すかしだ。
そういえば、中学生の時に一度だけ、通学時間と台風の上陸が重なった時があったなぁ。
街路樹が折れる被害が出てしまうほどの猛烈な台風だったけれど、そのときのボクらが知る由もなく。
通学路が一緒の友達と傘をさし、風の音でかき消されるのをいいことに「ぎゃー!」と大声で叫んだり半分ヤケクソで笑ったりしながら通学したのだ。(友達の傘は折れた)
今思えば、ちょっと無茶だったかな。まぁ、無事だったからいいや。
でも、せっかくずぶ濡れになりながら登校したのにクラスメイトの半分以上は登校していないし、担任もなかなか顔を見せないし、そのうち隣のクラスから「今日はどうやら休校だったらしい」という話まで聞こえてくる始末。
雨粒は、ますますはげしく窓に打ちつけられるばかり。
なんだかボクらは世界から取り残されちゃったような所在なげな気持ちになる。
実際、ボクらと外界(大げさ)との連絡手段といえば、携帯電話の所持は校則で禁止されていた手前、職員室前にある公衆電話だけだったし、親に「迎えに来て」と電話をするのも、同級生の手前ちょっと恥ずかしかったりもしたし。
「お前ら、少し風がおさまったら帰ってえぇぞー」
見回りに来た教師もそんなことを言うが、そもそもいつごろ風雨が弱まるのか、ボクらみたいな子どもでは見当もつかないっつーの。
ますますボクらはしょげかえり「帰る?」「どうする?」と互いの顔を見合わせるばかりだった。
でも、こうやって鮮やかに覚えているのは、そこまでだ。
目の前でぱちんとシャボン玉が弾けたみたい。
まるで夢からさめたときのように、その日は結局どうやって家に帰ったのかとか、ちっとも思い出せないでいる。
「臨時休校」って単語はそれだけで浮き足立つには充分だ。
なのに校舎内の雰囲気は、いつもより少ない生徒数が生みだす静かな動揺とそれを悟らせまいとする強情とで、なんだか妙な緊張感が漂っていたし、完全に外界とへだれがシャットアウトされたような感覚。
なんやかんや言っても、ボクらはある意味ハイになっていたのかもしれないな。
雨の音が、間遠になる。
ボクは、ミルクティを一口。
さて、残りの和訳もやってしまわないと、途中でやめたらワケがわかんなくなってしまうな!
もうちょっとだけ、集中集中!
posted by 渡月・トワヤ
at 17:00:06 │
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夕暮れどき。
ボクは気分転換に、散歩に出た。
久しぶりのお天気だったからか、夕方になってもむわっとした昼間の空気が居座ったまま。
ボクは空を見上げる。
青からオレンジの淡いグラデーションの空に、大きな刷毛で白い絵の具をさっと塗ったような巻雲が自由に一面広がっていた。
秋っぽくなってきたよなぁ。
蒸し暑い地上の熱を忘れ、ボクは風になり、上空の乾いた秋の空気を感じたようだった。
あぁ、そうか。
あの雲のひとすじひとすじ。あれはきっと、風の足跡なんだ。