posted by 渡月・トワヤ
at 20:10:16 │
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日がまだ高いうちに出歩いたことが大きな原因だった。
陽射しが強烈過ぎたから、日陰を選んで歩いていたのだ。
それでも早く帰りたくて普段よりかなり早足で歩いたせいで、距離感が掴めなくなっていたんだと思う。
歩き慣れたはずの寮への帰り道が判らなくなり、迷子になるという失態……。
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ボクは今、駅前のファストフード店に居る。
参考書を広げ、仕事を終えて帰ってくる彼を待っているのは、先日の一件で
「今度から晴れた日は、寮まで一緒に帰ってあげるからな」
と彼が申し出てくれたからに他ならない。
彼がそう言ったときボクは、
彼が仕事を終えるのは陽が落ちるころ、その時間ならばもう暑さで朦朧とすることもないんじゃないか?と思った。
それになんだか妙に彼が(堪えてるんだろうけど)ニヤニヤしているのもちょっと悔しくて。
でも、明らかにボクへ寄越してくれる視線には愛情が満ちているように感じられたし、そも、一緒に帰るという提案だって、ボクを大切に想ってくれているからなんだろうなっていうのも理解る。
……だから、内心嬉しかったりもしたけれど、それ以上に気恥ずかしくてボクは素直になれず、「う゛ー」と唸って彼を一瞥した。
乙女心は難しいのだ!(開き直り)
結局、彼の申し出をありがとう、と受け入れることにした決定打は、
「手を繋いで」
って言葉だったりする。うーん、弱いなぁ。自分。
そういえば、こうして、誰かとちゃんと待ち合わせるのは、初めての経験かもしれない。
特に、好きな人を待つなんて・・・。
そう思うと、ちょっと照れくさくて、ますます落ち着かない。
何度となく時計を見たり、参考書をパラパラめくったり、手帳を広げてペンでぐるぐる意味不明な線を描いて、また閉じて。
顔を上げてきょろきょろしたり、コーヒーをちびちび啜ってみたり、とだいぶ挙動不審になりながら、彼に逢えるそのときをそわそわと、待った。
薄く紫がかった藍色の空。
頬を撫でる、生暖かい風。
しっかりと繋がれた手。
どちらからともなくゆっくりした歩調になって、いつもの道。
そのすべてが、ボクを安心感で満たしていく。
今日あったこと。
もうすぐ夏休みが終わること、その先に待っている前期末考査。
そんな他愛のない話をし、なんとなくえへへと笑うボクに、彼は「やれやれ」とでも言わんばかり。
大げさに肩を落としながら、ふぅ とため息をつき
「えへへじゃないだろ」と言う。
…怒られちゃった。
ちょっとしょんぼりして、しおらしく「うん」と項垂れる。
でも。
こうして握ってくれている手は、大きくて温かく、そして際限なくやさしいまま。
「でも!こうして手ェ繋いで帰れるのが、嬉しいんだもん!」
素直にこういうことを言うのってやっぱり照れちゃうけれど、思わず口を突いて出たのは、伝えたかったから。
彼は、ボクの言葉に少し目を瞠り、それからぷぃと前を向いて
「・・・早く帰って夕ご飯を食べようぜ」
そう言い、ボクを半ば引っ張るように歩き出す。
でも、ぎゅっと握りなおしてくれた手が、彼の気持ちをちゃんと伝えてくれているように感じられて、胸の中がじんわりと暖かくなる。
「そだね。早く帰ろうー!」
欠けはじめたばかりの月はまだ明るく、柔らかい光に照らされて並んだ足元の長い影に目を落とす。
もう少しこのままふたりで居たくって、彼に引っ張られつつもボクは足を速めることをしなかった。
きっとお月さまにはお見通し。
でも月は何も言わずにボクらをやさしく照らしてる。しあわせの帰り道。
posted by 渡月・トワヤ
at 14:25:36 │
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ボクは寮の屋上へ出た。
日中の陽射しはまだまだ衰えを見せずに照りつけるけれど、吹く風が熱を払う分、まだ今日は過ごしやすい。
やはり、夏はこれぐらいの気候がいい。
茹だるような暑さが澱むのは、正直しんどい。
先日、ふたりで出かけたプール。
タイミングが合ったから二人だけで行ったのだけれど、結果的に彼の誕生日のデートってことに。
あれは、嬉しい偶然だったなぁ。
ボクは日陰になる場所を選んでぺたりと座り、キンキンに冷やしたカフェオレを入れたマグに口をつけた。
ハタハタと、風にゆれるシーツの波。
空にはむくむくと入道雲。その上を軽やかに行くのは絹雲。
あぁ、ゆきあいの空。
秋はもうすぐ、そこだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 18:00:14 │
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日中、空を覆っていた雲がちぎれて丸くなり、その隙間から今にも溶けそうな淡い金色の太陽が覗く、図書館からの帰り道。
風は昼間より幾分熱を下げて吹いてくる。
ボクは太陽に向かって、鼻歌まじりで歩いていた。
…あれ?
なんとはなしに、前方の空を見たボクは、少しびっくりする。
なんと虹が見えたのだ!
でも、何か変だ。
その虹は、アーチを描いておらず、空に向かって垂直に伸びている。
それだけじゃない。
そう。
今なお、ボクは太陽に向かって歩いているのだ。
虹って、太陽を背にしたときに見えるモンじゃなかったっけ?
ボクは首をかしげ、ふと思いつく。
これは、もしかして、彩雲!?
そう思い至れば俄然張り切っちゃって、携帯を取り出し何枚か激写する。
しかし、こうなると、人間の目の不思議を感じずにはいられない。
肉眼ではあんなにくっきり見える虹が、カメラに収めると途端にこんなに…ちいさい……(指で幅を狭め)
それでもかろうじて「虹…?」と判別できそうな1枚を撮ると、ボクは満足した。
彩雲は吉兆。
わぁい、何かいいことがあるかもー!
ボクは足取り軽く、寮までの道を急いだ。
部屋へ帰ると、とるものとりあえず、本棚から雲の写真集を取り出してページをめくる。
「彩雲」のページ。
でも……
ボクが見たのは、どうも違う。
うーんと唸って、さらに何ページか、繰る。
あぁ、これか!
ボクが見たのは「幻日」と呼ばれる方の光学現象だったのだ。
幻日は割と良く観測できる現象だそうで(しょんぼり
それでも、やっぱり彩雲!?と思った時感じた気持ちは
「いいことあるかもー!」
っていう、明るい未来への希望に満ちていて。
大事なのは、そういう気持ちを持ち続けることだ。
よしっ、こりゃきっとなにかいいことがあるぜー!(小さくガッツポーズ
posted by 渡月・トワヤ
at 00:00:30 │
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少し、ドキドキしながら、
時計の針が、重なるのを待っているボク。
「お誕生日おめでとう!」
ボクはにっこり笑って、小さな紙袋を手渡した。
彼は少し驚いた顔をし、それから
「サンキュ、超嬉しい!」
そう言って、ふわっと顔を綻ばせる。
その瞬間、この胸を満たした想いをなんと形容すればいいのか。
ボクには語彙もその術もないけれど。
あなたの笑顔が教えてくれたものは、
そんなものをやすやすと飛びこえる。
あ。
ボクははっとする。
もしかすると、こういうことなのか。
そうだとしたら、それはなんてしあわせなことなんだろうか。
ボクはそっと、この幸福をかみしめる。
また少し、あなたのこころに近づけたのかもしれない。
ボクはそれが、とても嬉しかった。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:21:35 │
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夜風が涼しくて、ボクは夜の散歩に出かけた。
たまには体を動かさなくちゃ、鈍ってしまってしょうがないんだもの。
日中は(暑いのもあるし)自室や図書館で勉強を毎日頑張ってる。
友達との会話でも進路のことが話題に上ることが増えたし、実際半年後には、受験シーズンまっただ中なのだよね。
彼が忙しいながらも時間のあるときには勉強を見てくれることも、勉強を続けられる大きな理由のひとつだ。
「気が乗らないことでも、ふたりなら頑張れるだろ」そう言って、ボクの髪の毛をくしゃりと撫でて笑う。
そのたびに、ボクは泣きたいほどの幸福を感じずにはいられなくて。
ずっと彼を見つめていたら、本当に泣いてしまいそうになるから、
「う、うん」と慌てて問題集に向き直る。
…頑張りたい。
やっぱり少し挫けそうになるときもあるけれど、せめて応援してくれる気持ちにだけは応えたい。
月は半月。上弦の月。
あの夜の屋上から流れはじめたのは、月を満ちさせていく時間。
実感があるようなないような。
半ば夢の続きを見ているかのような、どこかふわふわした感覚。
ぬるい風が、ゆるりと頬をなでた。
こんな風みたいに、やさしい気持ちを持ち続けていたい。
あの人がくれるたくさんのもの。
そのすべてをいつでも両手を広げて受け止めたい。
ボクが彼にしてあげられることはきっと少ないけれど、ボクでなきゃダメなことは、絶対にあるはずだ。
ふと目をとめた生垣の上。
自由にのびやかに枝を伸ばして、ボクの頭上を覆う百日紅は濃い桃色の花。
"サルスベリ"の名に相応しく、つるりと滑らかな木肌が、月光を柔らかく反射している。
腕を伸ばし、その木肌にそっと触れれば、ボクのこころも、どこかしら、
ひんやり つるりと滑らかに。