posted by 渡月・トワヤ
at 15:16:04 │
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今年の入梅は例年に比べて早そうだ。
とまぁこれは、今朝の天気予報の受け売り。
それでも今日も朝から小糠雨が断続的に降り続いていて、街路樹の葉や咲き始めたツツジに雨粒を滴らせ、街全体もどこか、しんと息を潜めているみたい。
ボクにはその静けさが、いかにも梅雨のはじまりらしく思えるのだ。
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今日のような、音のないやさしい雨がボクは好きだ。
漂う空気全体にまるで雨が溶け込んでいるみたいで、いちいちの呼吸を深く繰り返しては、ひとりうれしくなってしまう。
ひんやりとした空気の感触が、心をすぅっと落ち着かせてくれるように感じるからなのだと思う。
もう少し気温が上がれば、今のこの心地よい湿り気は一転して「じっとり」という表現がぴったりになり、不快指数は上昇する。
自分ではどうしようもできない大きな力によって、自身に対する印象が180度変わるなんて、なんとも切ないな、なんて思いつつ。
人生なんてのも、結局似たようなもんなのかもしれない。
自分ができることなんて、タカが知れてる。
…人生とか。
話が思いのほか、デカくなっちまったな。
ともかく、今日はボクにとっては心地よい気候だ。
これを満喫しないテはないよね。
下校を告げるチャイムが鳴ったら、急いで帰り支度を整えて。
お気に入りの傘をパンと広げたら、寮まではぐるりと遠回りの道を選ぼう。
口ずさむ歌はもちろん、あの曲で決まりだな。
(洋楽だからもちろん全部ソラでは歌えなくて、結局8割ぐらいはハミングになるわけだが)
posted by 渡月・トワヤ
at 17:08:07 │
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少し蒸す部屋。
空けた窓から部屋へと滑り込む風は温くて湿り気を帯びている。窓から見える空にゆっくりと流れる雲もどんよりと灰色になってきており、雨が近いことを告げている。
ボクは読みかけの本にしおりを挟んで窓辺へ行くと、便箋を広げて文字を目で追う。
それを終えるとボクは、ふぅ、と小さく息を零しながら空を見上げて、口元を緩めた。
友達って、本当に、ありがたいなぁ。
posted by 渡月・トワヤ
at 20:25:44 │
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今夜は満月だ。
ボクは月でも眺めようと思い立って、寮の屋上に上がった。
まさに今、遠く街の明かりの上にぽっかりと、少し紅い月が顔を出したところらしい。
昼間はさわやかな風が吹く、まさに初夏の陽気だった。
だからその延長でうっかり薄着で来てしまったんだけれど、思いのほか肌寒くて、ボクはぶるっと身震いした。
…まぁ、ちょっとの間だけだ。
このままで良いか。
ボクは、髪の毛を風に遊ばせるままにして、手すりに凭れた。
── 時間が、かかっちまったなぁ。
ボクがほぅっとついたため息は、風がさらりと攫っていく。
夕方、プリズムが床に散らした虹を見ていて、「あぁ、そういうことか」とボクは突然理解した。
月光には、浄化作用があると聞いた。
その真偽はともかくとして、宙高くのぼってゆく月は、徐々にその光を増しながら、辺りを柔らかく白く浮かび上がらせ、なんとも神秘的な雰囲気にする。
草も花も皆、息をひそめているかのようで、耳にツンとした静寂が届く。
ボクの心も、いつの間にか凪ぎ。
ボクは小さく、独り言ちた。
── Hopefully, that make your tomorrow will be happy.
posted by 渡月・トワヤ
at 00:00:21 │
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どこかへ行きたいなぁと思い立ったは良いけれど、またまた時期が悪すぎた。
原初の吸血鬼との決戦が近く、教室は独特の熱を帯びはじめる。
そんな中でも、楽しみは楽しみとして。
「睡蓮の開花を見にいこう」というチラシが目に留まる。
睡蓮の開花?
よくよくそのチラシを眺めれば、睡蓮は夜明けとともに開くという。
水底から、夜明けを待って。
水面を目指して、浮上しながら、ポンという音を立てて開くのだと。
その音は、生命賛歌にも似ているんじゃないだろうか。
── 水底を蹴って、浮き上がれ。
時計などなくとも、彼ら、あるいは彼女らは知っているのだ。
自分が花開く、その時を。
徹夜して(もしくは仮眠をとって)開花の瞬間を皆で楽しもうという企画だった。
夜が明けきる前の藍、冴え冴えとした静寂に包まれる。
その空気が、ボクは好きだ。
それを感じることができるなんて、素敵だなぁ…
えぇと、出発日は……
は、明日!?
ちぇ、気づくの遅すぎ、ボク!!!(教室前でがっくりと項垂れる
posted by 渡月・トワヤ
at 16:33:22 │
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空はくすんだ青、いわゆる花曇り。
ハナミズキが咲き誇り、モッコウバラの香りが風に乗って届く午後。
図書館からの帰り道。
ボクは、散歩を兼ねてふらふらとそぞろ歩く。
さえぎるものなどなにもなく、思考はまとまっては、そしてすぐに風にはらりとほどけていく。
ぼんやりと、それでも思考に没頭していたボクは最初、まるで気づいていなかった。
さらさらと吹く風に乗り、
やさしくて、
どこかしら懐かしく感じる音が、この耳に届いていたことに。
風に溶け込んだそれはアンビエント。
散歩のワンシーンに流れるBGMのようだと思う。
だけれど、そんなものはドラマの中だけのことだ。
BGMなどあるわけがないのだけれど、
しかしそれは、花の香りをまとった風と共に、間違いなくボクの耳へと届いたのだ。
その音に誘われるまま足を向ければ、
音はいつしか声になり、歌となった。
そして行き着いた先には、濃い桃色の山桜がはらはらと散る、
見慣れない御屋敷が建っていて。
足を
踏み入れていいのか、躊躇う。
下手すりゃ不法侵入だものな。
それでも。
その歌声に、抗うことができなかった。
ざり、と砂を踏んだ音に
歌声はふと、途切れ
ボクは
小さく、あっ、と声を零す。
歌声の主は、ゆっくりとこちらへ向き、
そして、ふわりと笑んだ。
ボクは、歌の邪魔をしたことと
誘われるままにここまで来てしまったことに
少々の照れくささを感じながら
「散歩の途中で、道に迷ってしまったかな。
なんだか心地よい歌が聞こえてきたので──」
なんとなく、思ったままを口にする。
そうして、えへへ、と頭を掻いた。