posted by 渡月・トワヤ
at 16:59:14 │
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とあるJRの駅の改札。
無事に(というのも変な表現だけれども)冬休みの前半の予定をすませることができたボクは、自身の実家で年を越すため、今ここに居る。
切符を買い、少し離れたところで待つ恭一の姿を見れば、一抹の淋しさを感じずには居られない。
それでもやっぱり、ボクは彼の姿を見ると、心から落ちつくことができるのだ。
「…おまたせ」
「ああ」
買った切符をポケットに入れて、ボクは恭一の手を握る。
家に着くのは夕飯に間に合えばいいから…時間が許す限り、一緒に居たい。
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物理的に離れていたって、メールも出来るし、電話だってかけられる。
それはわかっているけれど。
「…昔は物を思わざりけり、かぁ」
「…ん?」
ボクの独り言。なんでもないよとへへへと笑う。
時計を確認。乗ろうと思う電車までは少し時間がある。
「そうだ。折角だし、買い物に行こうよ」
キャリーバッグをコインロッカーに預けて身軽になったボクは、恭一の手を引き地下鉄乗り場へと歩き出した。
地元に居る時にも、この街の名は良く聞いていた。
実際、実家で見ていたテレビの殆どは海峡を越えての電波だったから、この街の知識だけは豊富にあって、行ってみたい場所は多かったりするのだ。
………
楽しい時間は、どうしてここまで速く流れていくんだろう。
あっと言う間に、電車の時間になってしまった。
改札の前で、ぐずぐずと繋いだ手を解けず
「…それじゃあ、また」
「うん」
何度か、同じせりふを繰り返すボクに、恭一は飽くことなく、けれどちょっとくすくす笑いながら付き合ってくれている。
「ほら…もう時間だぞ」
「…判ってるって…ちくしょう。えぇい!」
ボクは意を決して、唇をとがらせて手をほどいた。
また、すぐに逢えるよね。
それに、逢えない時間も、ボクらは二人の時間を共有しているんだよね。
心の中で自分に言い聞かせながらボクは改札をぬけて振り返り、恭一に精いっぱいの笑顔で手を振った。
「良いお年を!」
流れる車窓は、夕暮れの空を映す。
ボクはほおづえをついてその風景を眺め、この3日に起こった出来事を順繰りに思い出す。
すごく緊張してたのは本当だけれど、恭一がずっととなりに居て、両親の前だろうとなんだろうと、手を握ってくれていたから、大丈夫だって、思えた。
そして、堂々と家族に「付き合っている彼女だ」と紹介してもらえたこと、
ボクらのことを認めてもらえたこと。
こんなボクでも……そう言うと恭一はきっと怒るんだろうけれど、やっぱり、こんな髪の毛の色をした女の子が息子の彼女だとすんなり受けいれる大人が一体どれだけ居るのかと、たとえ恭一が「大丈夫だ」と言ってくれたところで不安な気持ちはぬぐえなかったから、本当に嬉しくて。
そしてなによりも、ただ認めてもらえただけでなく、お母さんはボクをとても気に入ってくださったみたいだし…彼の妹の美弥ちゃんも、なんとなく、ボクを慕ってくれている気がした。
恭一はお父さん似なんだなぁ…顔はともかくとして、仕草や雰囲気がそっくりだった。
もっともっと大人になったら、恭一もお父さんみたくなるんだろうか。
やさしくて、おだやかで、あたたかい。
…たしかにあの家族が、恭一そのものなのだ。
嬉しくて、夕焼けがにじんでしまいそうだ。
ボクは注意深く、周囲に悟られないように、窓へと向き直り、しゅんと鼻をすすった。
――ボクが感じたこの喜びを、きみにも感じてもらえたらいいな。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:32 │
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「それじゃあ、また明日」
いつもと同じおやすみの言葉。
いつもと違うのは、それでもまだ、彼と一つ屋根の下に過ごしている、ということ。
見慣れない廊下を、客間まで歩く。
方向音痴でなくて良かった、と今日ほど思ったことはない。
そんなワケで寝付けるワケもなく、ボクは読書でもしようか、と本を取り出した。まず、小説を取り出したものの、寝付けないようなそわそわした心では、活字はただの文字の羅列みたいで、ちっとも頭に入ってこない。
こりゃあダメだな…、と小説は諦めて、歴史資料的な本を取り出す。
敷かれていた蒲団にごろりと俯せて、本を開いていたとき。
ふすまを遠慮がちにトントンとノックするような音が聞こえてきた。
「…トワヤさん、もう寝ちゃいました?」
ボクは反射的に飛び起きて、布団に正座してしまう。
しかし、あの声は、ご両親の…お母さんのそれではないと気づき、
「あ、いや…寝てないよ」
答えて、少しふすまを開いた。
目の前には、恭一の妹――美弥子ちゃん――が居て。
「何か…用事かな?」
彼女の、ヤケにキラキラした表情に釣られるように微笑み、思わず
「そこ、寒いよね。入るかい?」と問うた言への、
「いいんすかっ?」その即答に、彼女はボクがそう言うのを見越していたのかな、と思わず苦笑い。
「…で、お兄ちゃんとはどこで?」
「…ん?ってえぇ!どこでって…」
ストレートすぎる!
恭一から「いろいろと質問されるかもね」とは言われていたけれど、まさか、この時間にこうやって部屋までやってきて尋ねられるなんてさすがに思わなかったし、これまでも、特に誰かから恭一との馴れ初めを(しかもこんなにズケっと)訊かれたこともなかったので、正直面食らっていた。
「…んと、どこでったって。クラスメイトだよ」
手持ちぶさたで、枕を軽く抱き締めて。
「あ、そうなのかー。で、どうやって付き合いはじめたんすか?」
お母さんの話では、彼女も能力者だと言っていたっけ。
「んー…3ヶ月前の、アリストライアングルがきっかけだよ」
「…へぇ」
ボクは言葉を選びつつ、できるだけ彼女の質問には答えようと思った。
まぁ…ある程度は、オブラートに包みつつ、ね。
彼女は恭一とは、良い意味で正反対な感じだな、と話をしつつ思う。
人なつこくて、にこにこと良く笑う。
どちらかと言うと、ボクに似ているのかもしれないな。
そう思えば、なんだか可愛くも思えてきて。
「…ふ、ふぁぁ」
彼女がこの部屋へ訪れてからとうに1時間は経っていて、さすがに彼女も眠たくなったようだ。
そろそろ帰った方がいいんじゃないのかな、と言うボクの言葉に
「んぅ~……」と生返事をしつつ、うとうとと舟を漕いでいる。
…えぇと、彼女の部屋は聞いてないけど、恭一の部屋のとなりだろうか?
送ってって違ったら、なんかいろいろとマズい気もする…
暫く考えてみたものの、ボクの方も緊張がようやく解けてきたようで、だいぶ眠たくなってきていて、思考がまともに働かない。
しょうがない、か。
彼女に布団をかけてやり、自分も少し離れるように毛布をかぶって丸まった。
女の子同士だし…許せ。
ボクはなんとなく、頭の中で恭一に謝った。
…明日、兄妹ケンカが勃発しないことを祈るのみだ…!
posted by 渡月・トワヤ
at 15:20:50 │
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…緊張しすぎて、記憶が定かでないことは、黙っておこう(苦笑
posted by 渡月・トワヤ
at 23:50:54 │
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凍てつく風が、肌の露出部分を、ことごとく突き刺していくみたいだ。
ジーンズにしてきて良かったぁ…とか、
スカートとか履いてたら、きっと泣けてた…とか、
あっ、そもそも今日は、スカートなど履いてくるべきシチュエーションではないのだった、とか。
ボクは頭の中でぐるぐるくだらないことを考えて寒さを紛らわそうと試みていた。
しかしどう転んだって、寒いものは寒い。
小さく震えながら目をぎゅっと閉じるとマフラーに鼻先までを埋めて、「うぅ~」と唸った。
隣に立って時刻を確認していた恭一が、視線を時計からボクへと移して、少し困ったように笑った。
「もうすぐ来るから、な。」
小さい子をあやすような口調だけれど。
恭一にそう扱われるのは、どこかくすぐったくて、嫌いじゃない。
「…ん」
小さく頷いて、かじかむ指先を確かめるように、繋いだ手を握りなおした。
恭一の言葉通り、ほどなく到着した1台のバスに、列をなしていた人たちは黙々と乗り込んでいく。
皆、身体が芯から冷えていると思う。
バスの中はすでにじゅうぶんに暖房が効いており、ボクらとともに並んでいた人たちの安堵のため息と、遠慮がちな会話が聞こえはじめる。
座席の位置を確認していたら、恭一が頭上のラックへ荷物を上げてくれる。
小さく「ありがとう」と言って、シートに腰を下ろした。
車内は、普段乗る路線バスとも遠足で使うような観光バスともちょっと違っていて、縦3列の独立したシートだった。座席は一つずつが結構大きくてリクライニングもでき、毛布もちゃんとそろえてある。バスの中心あたりには、少し降りる階段があって、その先はトイレになっているようだ。
ほどなくして、街灯が照らす中、バスは動き出す。
そわそわきょろきょろ、と落ち着かない様子で車内を見回していたら、隣に座った恭一と目があう。
「……まったく。」
しょうがないなぁ、とでも言わんばかりに、くすくすと笑う彼。
ボクは、エヘヘと笑った。自分の頬が上気しているのを自覚する。
だって、こんなに嬉しいことってない。
明日のことを思えば、緊張で眠れるか、今から心配はあるけれど…
でも、ずっと隣に居てくれるから、大丈夫だよな。
いつしか後方へと流れる車窓の明かりは消えていた。
ギアチェンジの揺れもなくなり、ゴォォォ…という継ぎ目や揺れのない路面を拾うタイヤの音が続いていることから察すると、すでに高速道路に入ったのだろう。
車内の照明を消します、というアナウンスとともに電気は消され、社内を仄暗く照らすのは常夜灯と非常出口のグリーンの明かりのみ。時折、対抗車両や後続車のヘッドライトが照らしては消える。
ボクは椅子を軽くリクライニングして肩まで毛布をかぶると、恭一の方を向いた。
闇の中で、彼の輪郭がボクの方を向いていることだけは判る。
一晩中、こんなに傍にいられるなんて…今でもちょっと信じられない。
そう思うと、顔から火が出てしまいそうだ。
…暗くて、良かった。
どこかしら不安になりそうな心が、ボクの手を、彼へと伸ばす。
恭一は、ごく当たり前の動作で、指を絡めて優しく握ってくれた。
そしてそれは、まるでボクの望むとおりに、ボクの心を穏やかな暖かさで満たしてくれるのだ。
「…おやすみ、恭一」
「ああ、おやすみ。」
するり、と音もなく、されど名残惜しそうに、ほどかれる指。
ボクはその手を掻き抱くように、少し身体を曲げて目を閉じた。
眠れるかどうかは、まだわからない。
けれども明日、目が覚めたら。
ボクがまだ知らない、恭一の生まれた街の空が、頭上に広がっているんだね
posted by 渡月・トワヤ
at 00:00:51 │
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SWEEEETedの洋館。
大広間に飾られたクリスマスツリーの下に置かれたプレゼントの数々。
まいおが東奔西走してくれたおかげで滞りなく、いよいよ待ちに待った交換会の時間!
「いっせーの…!」
「いっせ~の!」
「セーノォ!」
皆の掛け声が重なって、続いてガサガサと包みを開ける音。
ボクが引いたのは、表紙にエーデルワイスの描かれた綺麗なアルバム。
わぁ…
偶然に選んだものだったにもかかわらず、今のボクにぴったりな贈り物だ、と思った。
今までならば、思い出というものに、そこまで執着などしていなかったのだけれど……
現金なものだ。
彼と出逢ってからは、目に映る何もかもがキラキラと眩しくて、共に見るものすべてを大事に仕舞っておきたくなっていて。
彼と共に過ごすその時間のひとつひとつを、永遠に閉じ込めてしまえたら。
このアルバムがぱんぱんになっちゃうくらい、たくさんの想い出を作りたい──。
「あ、それ俺の選んだやつだ」
グラたんがボクの抱えたアルバムを見て、うれしそうに笑った。
「わ、そうなんだ?すごく綺麗なアルバムだよね。ありがとう、大事に使う!」
ボクも笑う。
周囲にあふれるのは、みんなの幸せそうな笑顔。
本当は、贈り物の交換という名目の、笑顔の交換会なのかもしれないね。
…ふと脳裏を過ぎる笑顔。
来年は、ここでも、一緒に過ごせたらいいな。
と、そこへ、真打登場!
ちょっとクラシカルな郵便屋さんのコスチュームに身を包んだまいおが、皆が手にした贈り物を見ながら、各々へカードを手渡していく。
「はい、トワヤさん」
にっこり笑って、ボクへもカードを手渡したまいお。
郵便屋さんのコスチュームだけれど、ボクにはサンタクロースに見えた。
みんなが笑顔で過ごせるよう一番心を砕いているのは、いつだってまいおだってこと、ボクは知ってる。
そんなまいおに、ボクは甘えちゃっているけれど。
来年も絶対、こんなふうにプレゼントの交換会、しようね!