posted by 渡月・トワヤ
at 16:21:29 │
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「……というワケで、今日は図書館へ行こうと思いまーす」
ボクは繋いだ手をきゅっと握って、恭一に笑いかけた。
彼は「ん」と頷いて、笑い返してくれる。
いつも恭一はボクのワガママを笑って受け入れてくれる。
だからボクは、それが当たり前になってしまわないように、いつだって「ありがとう」って気持ちをちゃんと伝えたいと思う。
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平日の夕方の図書館は、人もまばらだ。
ボクらは、図書館に入るのとほぼ同時に繋いでいた手を解く。視線を交わして静かに微笑いあうと、各々の気になる書棚へと向かった。
こういう時、特別言葉が要らないという事実に、胸が温かくなるのを感じる。
ボクらが共に過ごしてきた時間は、ボクらだけの空気を形作っているんだなぁ…って実感するんだ。
最近色々と本を読み漁っているボクは、今日も今日とて、小説の棚をぐるぐると見て回る。
気に入りの作家はやはりいて、その人を中心に探すけれど、時々は、なんとなくタイトルに惹かれたり、背表紙の雰囲気が良かったりするものを手にとって、最初の4~5ページを読んでみる。
文体とか、雰囲気とか、そういうのを感じ取って、読み続けられるかそうでないかの判断をする。
今回のは、ちょっと無理っぽいな。
今のボクの気持ちとは、そぐわない。
ボクは本を閉じて棚へそっと戻した。
それから、小説は諦めて美術関係の棚へ向かう。画集なんかを開くのも好きだからだ。
ミュシャの画集を手にとると手近な椅子へ座って、ぱらりとめくる。
潔い線、風に舞い流れるような長い髪の毛のうねり。
明確でありながら、緻密で繊細。
ボクは見入る。
ふっと顔を上げると、ちょうど正面の棚の向こう、恭一が見えた。
彼は彼で、活字を追っているようだ。
ボクはいたずらっ子みたいに、画集から顔を覗かせるようにして、彼の真剣な面持ちを盗み見る。
彼の姿を見るだけで、
ボクの心は、こんなにも満たされて、
そして、なぜだか涙が溢れそうになってしまうんだ。
その溢れそうな雫を、ひとは、しあわせと呼ぶのかもしれない。
posted by 渡月・トワヤ
at 12:34:20 │
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実家から、野菜なんかがダンボール1箱、送られてきた。
大根や白菜、ネギやりんご。
野菜が若干高いから、これは助かるなぁ!
さっそく、使わせてもらおう。
しかし。
ふと見ると、大根の葉っぱも1本分まるまる新聞紙に包んで入れてあった……
これ、どうしようかなぁ。
母に電話して、大根の葉っぱの処遇をどうしようかと訊ねたところ、
粗塩で浅漬けにするといい、という。
へぇ、塩だけでいいのか、それなら簡単だな。
というワケで、葉っぱをさっと水洗いし、塩を振りかけて、重石をしておいた。
それが昨日のこと。
今日はぼちぼち水分も抜け、食べごろになったようなので、
適量を取り出し、一口大にざくざくと切り、一つ、ツマミ食い。
……う!?辛っ…!
ボクは慌てて、水でさっと洗ったけれど、口の中に残るのは、野性味溢れる素朴な味で。
これは、白いご飯が恋しくなるって!
というわけで、昼飯は白い炊き立てご飯と、大根の葉の漬物オンリー。
あぁ、そうだ。
これも出しておこう。(大好きな辛子明太子、イェィ!
やっぱりご飯との相性はバッチリで、食が進む。
さらに驚きなのは、明太子と大根の葉、それからご飯の三つ巴の相性が最高だったということ。
ヤバイよコレ、ご飯、何杯でもいけちゃう…!
でも如何せん、ボク一人で食べるには、量が多すぎる。
パスタに和えたりもできそうだけど…やっぱりさすがに、ねぇ。
どうしようかな、ってぐるり思案し、後で皆にちょっとずつおすそ分けすることに決めた。
よし、飯を食ったら小さいタッパー、たくさん出そうっと。
posted by 渡月・トワヤ
at 15:55:14 │
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さっきからニヤニヤがとまらない。
ノートをとりつつ必要以上にうつむいてみたり、咳払いしてみたり、
頬杖をつくフリをして両ほほをリフトアップしてみたりして、これでも努力してんだけどなぁ。
こんなカオを、まいおに見られたら、
「トワヤさんってば、また浮き足立ってる…!良い意味でだけど!」
なんて言われちゃうんだ。
まぁ、そう言われるのが判ってるからって、ポーカーフェイスを貫く根性などあるわけもなく。
だって、嬉しいもんは嬉しいんだ。
いいじゃない、笑顔はきっと伝播するんだよ。
オープンマインド万歳。
あ、そうだ。
家に帰ったら、ファンレター出さなくちゃ!
posted by 渡月・トワヤ
at 17:17:57 │
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今日は、雨が降った。
この時期にしては珍しい、かな。
雨は嫌いじゃない。
雨だれの音を聞くと心が落ち着くし、傘に跳ねる雨粒の音はウキウキしちゃう。
霧雨は情緒があって好き。
……だけれど。
片手にかばん、片手に傘。
これでは、手をつなげないじゃないか!
posted by 渡月・トワヤ
at 20:17:43 │
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何度目かの呼び出し音の後。
──はい、もしもし。
いつも電話に出るときは、1オクターブ上がる母の声。
変わらないなぁ…まぁ、当たり前か。
「あ、ボクだけど」
──ああ、トワ?
「母さん、ブッブー減点1。詐欺に引っかかるよ?」
ボクは、母の無防備さに苦笑いしつつ、ダメ出しする。
──平気よ、だってナンバーディスプレイだもの。
…あ、さいですか。
──で、冬休みは帰ってくるの?またバイトが忙しくて帰らないって言うの?
ぼんやりしてんだか、鋭いんだか、この人だけは未だに良く判らない。
「ああ、そうだった。そのことで電話したんやった……今年は帰るよ」
──何日くらいになりそうなの?
「んと…それなんだけど…多分31日になるんじゃないかと……」
──31日って……おせちの数の子の皮むき、間に合わないじゃない。
そ こ か よ !!
「いやあの…ちょっと寄るトコがあって……」
──お友だちのおうち?
厳密に言えば違うけど、ややこしくなりそうなのでとりあえず割愛。
しかし鋭い。
「…うん、まぁそんなとこ。で、年明けて3日に今度はその…えぇと…・・・・・ ・ ・ 」
やっぱ恥ずかしくて小声になってしまったけれど、母は耳聡く聞き取った。
──まぁ……おおおおお父さん!!トワが……きゃあぁ、あのトワに※▼●×☆◆●☆※♪
きゃあきゃあと年甲斐もなく俄然盛り上がる母。
…あの、電話中なんだけどー…ってボクの声は聞こえるワケもなく。
まあ、喜んでくれる気持ちは、わからないでもないんだ。
弟や妹は昔からしょっちゅう家へ友だちを連れてきていたけれど、ボクに関して言えば、ほぼ初めてのこと。ましてや、それは、ただの友だちではないのだから。
ボクは耳まで赤くなっていることを、自覚する。
結局、興奮し収拾がつかなくなった母は、父へとバトンタッチした模様。
(むしろ、父が代われと言ったみたい)
電話線の向こうでは、弟と妹を巻き込みながら「何を作って、おもてなししたら良いかしら」なんて
張り切っている様子が聞こえてくる。
と、耳に、受話器を受け取った父が吐き出す、大きなため息が届く。
ボクは自然、背筋が伸びる。
父はボクに、元気かと訊ねるやいなや声のトーンを落とし、彼は能力者なのかと、ボクにだけ判るように問うた。
ボクは「うん」と肯定し、父は「そうか」とだけ、呟く。
──自分で決めたんなら、どうせ俺が「許さん」って言ったところで、オマエはテコでも動かんのだろう
「…そりゃまぁ、ね。でも決めるとか大袈裟やろ、付き合ってるってだけなほい…
ただ、やっぱけじめくらいはつけとかんといけんかなぁ、って」
離れて暮らしてる分、たくさんの心配をかけていると思う。
特に父さんは、ボクの学園生活がすなわち何と隣り合わせなのかを、知っているのだ。
だからこそ真正面から向き合って、ちゃんと伝えておかなければ、と思う。
だけれどやっぱり、そういうふうに思ってるうちの半分も、上手に言葉にはできなかったけれど。
「それに、頑固なのは父さんに似たんだよ」
ボクはへへへっと笑い、その日にはお気に入りの店で、ケーキを買っておいてほしいと強請っておくことも忘れなかった。