posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:26 │
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その山の頂上付近にいるという薄紅色の鳥は、
とても美しい声で啼くのだそうだ。
聴いてみたい。
しかし、聴いたが最期。
深い眠りに引きずり込まれ、その鋭い嘴で──。
となるそうな。
あぁ、怖い怖い。
綺麗なバラには棘があるというのと、ちょっと似ているね。
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posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:15 │
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深夜、ポストへ届けられた手紙を胸に抱きしめて、
「うゎぁ…やったぁ!」
嬉しさのあまりボクはその場で地団駄を踏んだ。
テーブルに便箋を広げ、何度も読み返し、そのたびに嬉しさを噛み締める。
両のてのひらは、頬をぐいっと持ち上げて、キープ。
そうでもしないと、顔が崩れてしまうんじゃないかってぐらい、だらしない笑顔になっちまいそうなんだもの…!
posted by 渡月・トワヤ
at 22:46:39 │
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── ふぅ。
今読み終わったばかりの本を閉じた。
淹れていたお茶は、とうに冷めている。
ボクはそれを飲むのも忘れて、活字を目で追っていたのだった。
主人公の緊張をそのままトレースしたかのような、息をつかせぬスピード感溢れる物語。
ボクは、文字通り息をするのも忘れていたみたいに、今になってようやく大きく息を吐き出し、目頭を軽く指で拭った。
ハッピーエンドと言うには、あまりにも失ったものが多くて切なくなる。
しかし、それでも明るく溢れる光を、軽やかに吹き抜ける風を、ボクはラストの場面に感じることができた。
ボクはこの物語から「信じることの大切さ」と「生きてこそ」というメッセージを受け取れたように思う。
すっかり冷たくなったお茶を一口含んだ。
喉はすっかり渇いてしまっていたようで、渋みが喉の奥をちくりと刺す。
ふと思い立って、香に火を点け、煙をくゆらせた。
少し、煙が目に滲みる。
ボクは奇しくも、能力者として生を受けた。
この物語の主人公ほど過酷ではないにしろ、やはり「死」というものを身近に感じずにはいられない瞬間は多くって。
だからこそ、より強く「生きたい」と願えるんだと思う。
ボクにはまだ、やりたいことがたくさんある。なりたいものだって、ある。
まだ、こんなトコで、くたばるわけにはいかない。
走れ、走れ、とにかく走り続けろ。
いつか言われたセリフを思い出す。
喉が喘鳴し、膝が折れて、視界が霞んだとしても、
その声に背中を押されるようにして、ボクは前へと進むだろう。
でも、ボクは一人じゃない。
信じられる仲間が居る。
その事実は、何にも替えがたい宝物だ。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:00:56 │
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休み時間。
「…ねぇ、今日がケーキの日って、知ってたー?」
クラスメイトとの雑談中に飛び出した話題。
皆が口々に「知らないよねぇ」と言いながら顔を見合わせる。
話題を切り出したそのコは
「いちごが上に乗っかってるからよ」
と人差し指をピンと立てて、えっへんと得意顔。
は?
いちごが上に…?
皆一様に、眉間に皺を寄せつつ首を傾げる。
ボクはというと他聞にもれず、彼女たちと一緒になって首を傾げていた。
苺の帽子をかぶった、ハロウィンの時のまいおを思い出しちゃって、頭の中は満面笑顔の彼に占拠されていたのだ。それ以上の思案が浮かぶ余地が、ボクにはなかった。
「わかんないかなぁ…?」
しょうがないなぁ、とでも言わんばかりにケータイのカレンダーを表示させ、ぐるりとボクらへ見せてきた。そして一瞬の間の後「…あぁ」と納得したようなため息が、じわじわとあちこちから漏れる。
「じゃあ、ケーキの日って毎月あるんだね」
ボクは彼女に問う。
「あ、うん。そうなるね」
このコ、どっかのケーキ屋でバイトでも始めたんだろうか…?
とまれ、彼女のおかげ(?)で頭の中は、スウィーツのことでいっぱい。
今日の放課後は、絶対、恭一とケーキを食べに行こうと心に決めた。
「○○の日」とか、普段はあまり気にしないけれど、ケーキは別腹って言うじゃない。
銀杏並木の下を歩きながら、隣を歩く恭一を見上げ、ボクはにぃっと笑った。
「…というワケで、今日はケーキを食いに行こうと思うんだー」
「……というわけでって」
恭一が苦笑するのも無理はない。休み時間の顛末をまだ話していないのだから。
「ふふっ。今日はケーキの日なんだって。どうしてだか判る?」
「あぁ…それで」
恭一はボクの唐突さに合点がいったようで微笑んだ。
「…でも、それは知らないな……どうしてだろう?」
「いちごが上に乗っかってるからなんだって」
クラスメイトと同じようにヒントを少しずつ。
「……あぁ、なるほど。それは予想できなかったな」
ちょ…、なんでそれで納得できるんだよー!
ボクは思わず、アヒル口。
西日が射し込む、とあるケーキ屋のイートインコーナー。
恭一は、ブラックコーヒーとモンブラン。
ボクはダージリンティといちじくのタルトをチョイス。
席に向かい合って座って、いただきます!
「…あー、そのモンブランも美味そう。一口ちょうだい♪」
言うが早いが、フォークをぷすりと刺し、一口食べた。
恭一は、しょうがないなぁ…と、ボクを見てやさしく笑う。
カップから立ち上る湯気が、ふわりふわりと揺れていた。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:27:45 │
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今日の晩飯は何にしようかなぁ。
わりとパスタが多めな、最近のボクの食事。
秋はきのこが美味しいから、それをふんだんに使いつつ、味付けでバリエーションを楽しんでいる。
今日もそんな感じにしちゃおうかな…
などと考え事をしながら、色づく街路樹の並木道を歩いていたとき、視界の端っこからふわふわと白くて小さいものがボクの目の前を横切っていった。
…ん?
わ、ゆきむしだ!
しかもよくよく目を凝らしてみると、飛んでいたのは一匹二匹ではなかった。
こんなに飛んでいるのを見るのは、はじめてだ。
今年は、雪がたくさん降るのかなぁ。
よろよろ、というか
ふらふら、というか。
腹についている綿状のものがいかにも重たそうな飛び方。
そもそも、「ゆきむし」ってネーミングが、すでに愛らしいよね!
ボクは試しに、ちょうど目の前を横切ろうとする一匹へと、両手を差し出してみた。
あたかも、舞い降りる雪に手を差し伸べるように。
ボクのてのひらに囲われて、逃げる素振りでも見せるのかと思いきや、ああこんなところに一休みできる場所ができた、とでも言うように、これ幸いとボクの指先へ止まったのだ。
驚いたのはボクの方。
逃げられるとばかり思っていたのに、あっさり捕まえてしまったのだから。
おいおい、ちょっとは警戒しろよ。
パチンってやられたらおしまいなんだぞ?
その警戒心のなさに、どうしようもないなぁ、なんて若干の庇護欲を掻きたてられつつ。
へぇ。
お腹の下辺りを包むように、何か出てんだなぁ。
あまりに小さすぎて、その白い綿状のものに触れる勇気はさすがになかったけれど、まじまじと観察してしまった。
さて、晩飯は何にしようか。
思考が振り出し地点に戻ったところで、ゆきむしを空へと放つ。
ゆきむしは、上へ下へとふらふらしながら、そのあたりを漂い続けている。
むしの名に影響され、心が冬の支度に取り掛かる。
今日は、シチューにしようかな、あっ煮込みうどんもいいかも。
考えるメニューも、考えるだけでほかほかするようなものに変わっていた。
だってほら。
もうすぐ、冬がはじまるよ。