posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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夜。
二人で逢うのは、もう日常の一コマだ。
ボクが授業終了のチャイムと同時に、彼に何も言わずに教室を飛び出していったことを心配して、恭一は「驚いたぞ」と言った。
一緒に帰る約束はしてなかったし、それから ── 海がどうしても見たくって…。理由をなんとなくごにょごにょと口の中で言っていると、
「トワヤが吹っ切れたのなら、それでいい」
と、何かしら察してくれているみたいでも、ある。
けれど、やっぱり、心配かけちゃったよなぁ。
一緒に行こう、って、連れ出せば良かったんだろうか。
今そう思ったところで、後の祭りだけれど。
「僕も今度、海を見に行きたいな」
そう言う恭一に
「じゃあ今度は、一緒に見にいこう。プチデートだね!」
そう言ってボクは、少しはにかんだ。
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今までは、一緒に帰るという約束も特にはしていなかったし、帰る方向も違うから、そういうもんかな、って思ってたんだ。
タイミング(というか目)が合えば、じゃあ一緒に帰ろっか?…というふうな感じで。
こういうことって初めてだから、良く判ってなかった、というのが正解なんだけれど、ね。
今度、一緒に海を見に行こうね、ってそんなきっかけから、
じゃあ明日からは一緒に帰ろうよ、っていう話になって。
……これってひょっとして、毎日デートということ?
商店街を見て歩こうか、とか
どんな風に今まで放課後は過ごしてたのか、とか…。
そんな話をしながらも、結局、最終的には二人して、書店や図書館に入り浸ってそうな気がしそうだよね、なんて笑いあう。
それでも、そういったなんでもない日常を共に過ごせることは、ボクの憧れで。
そういうものこそが、本当のしあわせなんじゃないか、とボクは思う。
恭一は、自分の寮とは違う方向でも、紫陽花会館の前まできっとちゃあんと送ってくれるんだろうな。
部屋に上げる気は、今んところ、ないんだけれど……
あ、でも、ボクのお気に入りの屋上には、連れていきたいなぁ。
のんびりと空を見上げておしゃべりしたり、それぞれ好きな本を読んだりして過ごせたら、とても素敵!
だとしたら、守衛のおじさんにも、恭一の顔は見せておいたほうがいいのかもしれないなぁ。
あっ!
カナメに見つかったら、意味ありげに黙ったままニヤニヤされそうだから、要注意だ…!
とまれ、さっそく明日はどこに行こうかなぁ(そわそわ
posted by 渡月・トワヤ
at 16:10:59 │
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授業の終わりを告げるチャイムと同時に、ボクは席を立つ。
急に、海が見たくなって。
江ノ電に乗り、ひとり、湘南の海。
夏は終わっても、サーファーには関係ないらしい。
この時間でも何人かいて、沖へ向かって水を掻いていく様を見ていると、そのカラフルなボードが、波間に浮かぶ鳥のようにも見えて。
海へと吹く風を背に受けてボクは防波堤に立ったまま、その風景をぼんやりと眺めていた。
耳に届くのは、潮騒だけ。
傾いた陽射しと相まって、風はもう肌寒い。
だいぶ体が冷えてきたところで、ふと我に返り、ジャンパーを羽織った。
もし仮に、こんなとこで風邪でもひいちまったら…恭一はなんて言うだろう。
ボクのことを、常にその心に住まわせてくれているであろう人の、やさしいまなざしを思い出して、まつげを伏せた。
足元から、静かに静かに、気流が起きる。
それは、目に見えないヴェールとなって、ボクを包み込みたそうに揺れている気配。
……今は平気だから。大丈夫。
ボクは口の中でつぶやいて、その気流を解き、陸風と混ぜるようにして海へ還した。
迷う必要など、ない。
あの波のひとつひとつが、時の流れを具現しているではないか。
そう。
振り返って悲しむことも、恐れることも、詮無いこと。
今、此処に在る事実を大切にしないで、何を大切にできるというのか?
恭一を想うと、胸がぎゅっとして、
それから、逢いたくてたまらなくなるのは、どうしてなんだろう。
逢って、何をするというワケでもないのに、
あの穏やかな空気が、ただ ただ いとおしい。
──トン。
防波堤から、砂浜へ軽く飛び降りて、砂を一掴み。
ぱっと空へと撒いて、ボクは自分の心も砂とともに解き放つ。
(もちろん、近くに人がいないのを確認したよ!)
posted by 渡月・トワヤ
at 10:02:18 │
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グラたんやまいおからの、少し早いハロウィンの贈り物。
心がほどけてくようなあたたかい詩と、やわらかい色彩の画の詩集がほしかったんだ。
「こんなの、あったら良いなぁ…」
って、何気なく言ったことばを、まいおたちは覚えてくれていて、探してくれたんだって。
「はい、トワヤさん!」
と言って、まいおが手渡してくれたクラフト紙の封筒。
中を開くと、ボクが欲しいって言ってた、まさに理想の本が1冊入っていた。
画集としても良質で、絵だけを眺めても、心に陽だまりができるような本。
「…わぁ!」
ボクはうれしくなって、ぱらぱらっとページをめくり、胸に本を抱きかかえる。
「ありがとう!すげぇうれしい!」
だらしないほど頬を緩めて、ボクは彼らに何度もお礼を言った。
この本は何冊か仕入れて、SWEEEETedのショップにも並べてもらうことにもなった。
この本を手に入れたうれしさを誰に伝えたいか…それは言わずもがな。
「きょういちー!見て見て!じゃーん!」
彼に駆け寄り、本を両手に掲げてお披露目する。
恭一は(たぶんボクのその勢いに)少し驚いた表情を見せたものの、すぐにいつもどおりの笑みを浮かべてボクを見る。
「あのね、ずっと欲しかった本なんだ。まいおたちが見つけてくれたほよ!」
恭一は、ボクから本を受け取って、少し目を通す。
「へぇ……。素敵な本だね。この表現、すきだな」
恭一はやさしく笑う。
「ホント?そう思う?!」
ボクもうれしくなって、笑う…いや、これじゃあ、むしろ顔面総崩れだ。
うれしすぎて骨抜きなボクを見て、恭一は困ったように笑う。
恭一がこの詩画集を気に入ってくれたのは、どうやら本当らしい。自分も1冊買おうと、有言実行。本当にすぐさま買いに行ってくれたようだ。
同じものを見て、同じように感じ、同じように大切にできる気持ちを分け合えること。
小さいことだけれど、こういうことがとても幸せだと思う。
こんな想いを積み重ねて。
そうして、ボクらだけにしか紡げない物語が出来上がってくんだね。
posted by 渡月・トワヤ
at 15:03:28 │
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今年も学園をあげて、大々的に南瓜仮装行列が行われるそうだ。
実際のところ、ボクはあまり、仮装には興味がない。
「踊るあほぅに見るあほぅ云々…」とは言うが、見てる方が楽しいものもあるのだ。
仮装といえば。
ちょうど去年の今頃は、Aviarioに入団したころで、狼の付け耳を付けさせられたんだっけな。
…懐かしいなぁ。
今頃、奏助サンや竜太サンは元気にしてるんだろうか。
ボクが入団してまもなく、気づけば解散していたあの場所。
結ばれたかに思われた運命の糸は、いともあっさりと解けてしまい、
あの場所を気に入っていたボクにとっては、なんとなく苦い思い出。
学年も違うし、なまじ学校がでかいだけに、そうそうバッタリ鉢合わせ、なんてこともなく。
きっとそのうち、彼らの記憶からも、ボクは消えてくんだろうな。
まぁ、すでに、消えているかもしれないということは否めないけれど…それはそれ!
さて、今年の仮装行列。
自分がどうするつもりもないけれど、友だちが「どうしようかなぁ」なんて考えている姿を見るのは好きだ。
*SWEEEETed*の面々も、こういうことが大好きなだけに、ハロウィンはアツい話題!
結社でも、何かイベントをするんだって、まいおが言っていた。
ボクも、その手伝いをする気は満々だ。
いったいどんなイベントをするのかな。カボチャプリンとかケーキとか…
フルるんやハルカと(女の子チームで)一緒に作ったら楽しいかもなぁ。
楽しみを計画するときの人の顔というのは、とてもきらきらしていると思う。
話し合いに花を咲かせる友だちの顔を見てると、なんとなく幸福のおすそ分けをもらえたようでボクはうれしくなっちゃうから、少し離れたソファに座って、にこにことその様子を眺めている。
開け放った窓からは秋の風が、庭を横切って部屋へ滑り込む。
湿り気を帯びたやわらかい土の匂いを孕み、もうすぐまた雨が降りそうだと、ボクに告げる。
テーブルサイドのランプが、きらきらとした黄金色の光を放ち、ハロウィンの話し合いに華を添えているようだ。
…Aviarioを失ってから。
自分のホームとも呼ぶべき場所を探し歩いていたんだと、今になって思う。
気が付けば、*SWEEEETed*はボクにとって、とても居心地の良い大好きな場所になっていた。
お菓子の甘い香りと、コーヒーのにおい。
みんなの楽しそうな笑い声が、ランプの光にきらきら輝いて、
カーテンがやさしくゆれる
秋の穏やかな午後。
posted by 渡月・トワヤ
at 19:15:48 │
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庇を打つ雨音がする。
天気予報どおり、今日は朝から雨模様。
コインランドリーを回し、軽く掃除を済ませて、ゆるりと過ごす日曜日の午後。
ボクは床に寝転がって、図書館で借りてきた本を読んでいる。
本に限ったことではないけれども、第一印象って重要だと思う。
やっぱり、本ならなんでもいいというわけにもいかず、
どんなに内容がすばらしかったとしても、「あぁ、これはダメだ」と思う本にも、たまに出合う。
今回借りてきた本は、だから、開く時にはすごく緊張したんだ。
── 恭一と同じものを見て「良いね」って笑いあえたら素敵だって、思うからこそ。
しかし、先のボクの些かの不安など、いまやどこ吹く風。
こうして、ごろりと寝転がってリラックスし、物語の展開に心はやらせるボクがいるのが何よりの証拠。
規則正しい雨音につられ、瞼も徐々に落ちてきてしまいそうなほどだ。
ボクは起き上がって、ミルクで煮出した紅茶を一口飲んだ。
ミルクティに最適の茶葉を最近手に入れたモンだから、今はロイヤルミルクティに凝っていて、今日も他聞にもれず、心解ける甘い香りに包まれる。
それにしても、この甘い香りは、ミルク由来か、はたまた茶葉由来なのか。
今度、ストレートで飲んでみなくちゃ…だな。
カップをテーブルに置き、またボクは本へ手を伸ばす。
…どれぐらい時間が経ったのだろう。
はっと気づいて、頭を上げる。
本に手のひらを挟んで(!)、行き倒れるようにしてボクはいつの間にか眠ってしまっていたようだった。
部屋はもうすっかり暗くなっていて、とても活字を読めるほどではない。
時間を確認したくて、ケータイを手繰り寄せる。19時をゆうにすぎていて、驚いた。
ちょっと自分!
リラックスしすぎだよー!