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「んぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
いつもは無人のそこに、今日は珍しく先客が居たからだ。
藍色のショートヘア。
赤いヘアゴムで少し結わえた後ろ髪が、ぴょんと立っているから、
後ろ姿を見ただけで、すぐに誰だか判る。
フェンスにもたれて、遠く空を見上げていたのは、シェリ子だった。
「おぅ、シェリ子ー!こんな時間に珍しいな」
ボクのその声で気づき、くるっと元気良く振り返った彼女に、
ボクは軽く手を挙げてひらひらっと手を振った。
「あっ、トワちんだ♪こんにちはー!」
そう言うと、シェリ子は元気いっぱいの笑顔をくれる。
彼女の背中に広がる青空と相まって、それは真夏の太陽そのもので、
彼女のこういうところが、いかにも彼女らしくて、ボクは可愛いなぁと思う。
彼女の隣まで歩を進め、同じようにフェンスにもたれた。
吹き上げる風がぶわっとボクの髪を掻っ攫い、ボクは思わず目を細める。
「何してたん?」
己だってぼんやりと風に吹かれるためだけに上がってきたようなものなのに、
(それではあまりにアホすぎると本を1冊持ってきてはいたけれど)
愚問を投げかけてしまう。
シェリ子は、そんな問いで気分を害する様子もなく
「空を見てたんだー」
と言い屈託なく笑った。
「シェリ子は、空が好き?」
持ってきた文庫本が手持ち無沙汰になっちまったので、
ズボンの尻ポケットにその本をねじ込みながら訊ねた。
「うん、好きだよ!
青空も好きだし、夕焼けも。あと夕暮れ後の暗くなった空も好き!」
そんな彼女の言葉に頷きながら、
「ボクも空は好き。夕闇のグラデーションなんて、とても綺麗だよね。
秋は空が高くなるし…この場所、ボクの気に入りの場所なんだぜ」
秘密を知られた小学生みたく、ボクはにひひっと悪戯っぽく笑う。
「トワちんのお気に入りの場所だったのかぁ…ね、ボクもたまに来てもいい?」
シェリ子が少し遠慮がちにそんなことを訊ねるから。
フェンスに指を掛けて、ボクはぐいっと両腕を伸ばして背を反らす。
「そりゃ此処はボクの気に入りだけど、シェリ子の場所でもあるんだぜ?
いつでも好きに来たら良い。ボクに断ることなんてないのさ」
風に髪の毛が躍るのが気持ち良くて、ボクは空を仰ぎ見て言った。
「そっかぁ…嬉しいなぁ♪」
ボクの横顔を見上げて、シェリ子も笑い、同じように空を仰ぐ。
二人で空を見上げてたら、急に思い出したことがある。
誰に言われたか忘れたけれど
いつか、シェリ子とボクが姉妹みたいだ、って、そう言われたっけ。
あぁ、こういうトコも似てるのかね。
なんだかそれがやけに楽しくて、
ボクはへらへらっと笑ったまま、刻々と変わっていく空の表情を眺めていた。
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