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コーヒーを飲みながら、infobookを立ち上げた。
次の連休、日曜から3日間ほど地元に帰省することにしたので、
(その後、旧友とも連絡がつき、会えることになったのもあり)
たまには土産でも…と思ったのだけれど、さて何が良いのかさっぱり判らない。
というわけで、調べ物。
鎌倉駅から江ノ電に乗り、とある駅の近郊に生麩の饅頭屋があるという。
江ノ電…!
その単語に、ボクは色めき立つ。
というのも、ボクは私鉄に強い憧れがあったから。
地元での主要交通機関はバスのみ。
電車はJRのみだったし、自宅から駅が遠かった所為で身近な乗り物ではない。
少数の車両が線路を走るとか…なんて素敵!
よし、今日はこれから此処に行ってみよう。
そうと決めたら、ボクのフットワークは俄然軽くなる。
店までのアクセスを手帳に書き記してから、残りのコーヒーを一気に飲み干して
「ごちそーさん!」
鞄にノートと手帳をがさがさっと放り込んで、いざ鎌倉!←
ウキウキと心を躍らせて電車に揺られ、とある駅に降り立った。
地図を確認しつつ漫ろ歩いて、程なく目的地へ到着。
乾いた秋の空気に良く似合う、落ち着いた純和風の店構え。
白い暖簾をくぐれば、おもての明るさと打って変わる日本家屋独特のあのひんやりとした気配ともいうべき空気が流れる。
「いらっしゃいませ」
静かだけれど良く通る声がボクを出迎えた。
声の主は、年頃が20代後半の女性の売り子さん。
彼女は、この店構えに良く似合う、柔らかい雰囲気を纏っている。
ボクは途端に、己がなんともこの店に不釣合いな気がして居た堪れなくなった。
視線を伏せがちにして、きょろきょろと店内を見回し、
生麩饅頭6個入りの箱(自宅用)と、バラ売りで2個(サヤカと食べる用)、
それから生麩も1本(母に煮物にしてもらう用)買い求める。
「どうぞお気をつけてお帰りくださいね」
にっこりと優しく微笑んだ売り子のお姉さんは、
ボクに紙袋を手渡しながら、店の外まで送ってくれた。
「ありがとう…ございます」
なんだか申し訳ないような気持ちと、
一端の大人と同等に、丁寧に扱われたのが、少し照れくさくて。
ボクは早口に礼を述べて ぺこりと頭を下げ、店を後にした。
店から鎌倉駅までは徒歩で20分程度。
帰りは江ノ電を使わず、歩く事にする。
気温ももうそこまで高くないから、散歩にももってこいの季節だ。
ぷらぷらと歩きながら、ふと、先ほどのお姉さんを思い出す。
なんだか、雰囲気があって素敵な人だったなぁ…
ボクも大人になったら、あのひとみたいに柔らかな風を纏う大人になれるだろうか。
今はまだ何も判らないけれど、
そんな未来の自分を夢見るのも、悪いことじゃないかもしれない。
雲ひとつない抜けるような青い空。
西の空はもう、茜色に染まり始めている。
ボクはそこを渡る風を見る。
柔らかいあの風のように、これからも生きていけたら良いなぁ。
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