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日は、徐々に短くなってくる。
ボクが部屋を出たのは、17時頃。
今の季節、夕焼けはとても見事で、茜と藍の混ざり合う空を遠く見ながら歩くと最高なのだけれど、今日もあいにく曇り空。イマイチ情緒にかける。
徐々に街に明かりが灯り出す時間。
外灯もぽつぽつと点灯し、営業時間を目前に控えた飲食店が忙しなくその準備に追われているようだ。
花屋の軒先の花たちは、今日はまだ一緒に過ごせるねと、まるで売れ残ったことを喜んでいるかのように蕾を寄せ合って、内緒話の真っ最中。
ボクはまた、前を向いてずんずん歩いた。
堤防傍に立つ電柱には葛が生え登り、もうすぐ天辺までを覆ってしまいそうな勢いを見せている。
階段を使って堤防に上り、川を渡る風にそよぐススキの波を眺めた。
もう暫く歩けば、きっと海に出るだろう。
海を眺めるのなら、冬の海。
物心ついた時から、すぐ傍に海がある暮らしをしていたからか、
鈍い鋼色の海は、心が落ち着く風景だ。
しかしそれは、日本海側の荒い風に打ちつけられる風景で、
果たして太平洋側、鎌倉の冬の海は、どうなのだろうか。
いっそ海まで足を伸ばすか…
なんとなく腕時計を見やると、もう18時をとうに回っていて。
道理で腹の虫も騒ぎ出すはずだ。
ボクは堤防の上で、空に手を伸ばして「うーん」と大きく伸びをする。
このまま海まで行けば、腹が減りすぎて行き倒れるかもしれん。
くるりと踵を返して堤防をタタタッと駆け下りて、元来た道をランニング。
街にはもう、夜の帳が下りていた。
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