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棒倒しの巻き返しの件、実は五十鈴から聞いた話の受け売りだったりする。
「でも、楽しかった!燃え尽きちゃった感じだよー」
五十鈴は晴れ晴れとした顔をしている。
彼は打ち合わせにも積極的に顔を出していたし、今日も朝早くから、頑張ってたもんなぁ。
うんうん、と彼の言葉に相槌を打っていると
突然、五十鈴は思いだしたように
「そうだ。実はトワヤくんに頼みたいことがあってね…」
と、少し遠慮がちに切りだした。
その様子がいつもと少し違う気がしてボクも自然、神妙な顔になる。
「ボクでできることなら良いんだけど」
「うん、それは大丈夫」
そう言って彼はボクを教室へ連れ出した。
「…依頼?」
ゴースト退治の依頼が、時折教室へ届けられる。
五十鈴は今回、その依頼に出掛けるらしいんだけど、そこでボクのチカラが必要だそうなのだ。
所謂、サポート要請。
今回の五十鈴の頼みごととは、それだったのだ。
ボクは、こうした特別な依頼を自身で受けたことはないし、サポートを要請されることもなかった。
初めてのことってすっごくドキドキする反面、テンションは跳ね上がる。
「うん!ボクで良ければぜひに」
思いのほか乗り気になったボクに、逆に五十鈴が怯んだ。
「ホントに良いの?ネタっぽいけど…」
「は?ネタ?」
その依頼内容を良く良く見てみると、「ウン」を全員が踏むのがどうの、「ウン」を投げるヤツが居るだの…と書いてある。
「…ウン、てあのウン?」
「うん、あのウン」
少しトーンダウンしたボクにつられるように、五十鈴も若干小声になる。
「…うーむ。。。」
少し考え込んではみたものの、どうとでもなれ的な気持ちもボクにはあって。
「OK、ボクで良けりゃ、全力でサポートさせてもらうよ」
(一応)ボクだって女の端くれ。
ウンを踏むことを快諾するとは思ってなかったんだろう。
逆に五十鈴の方が
「えっ!?ホントに良いの?」
と驚いている。
「あぁ、構わんよ。どうせ今更…」と半ば独りごちて、ボクは少し笑ってみせた。
ボクの言葉に少し引っかかりを持ったのか五十鈴は、
相談ごとなら話を聞いてあげるからねと言ってくれた。
彼は法師見習いだから、人を安心させる話の仕方を覚えないといけない、のだそうだ。
骨になってしまったお師匠さまからも、ずいぶん熱心な指導をされているらしい。
その話に、ボクは師弟愛を感じずには居られない。
「ありがとうな」
ボクは少し心に引っかかってたことを訊いてみる。
並んだ事象を並べて、それを自分に都合よく解釈しているだけじゃないだろうかと不安に駆られることもある。
だけどそれを確かめるほどの勇気が、ボクには未だなくて、宙ぶらりんの気持ち。
「きっと大丈夫だよ。それで良いと思う」
五十鈴はボクの背をぽんと叩いて、そう言ってくれた。
「うん、ありがとな」
良い友人に巡りあえたものだなと感慨深く、ボクはもう一度彼に、今度は心からの笑顔を向けた。
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