posted by 渡月・トワヤ
at 22:53:38 │
EDIT
「…気分転換など、しませんか?」
そんな誘いを受けて、ゼンの家に遊びに行くと、おじさんやおばさんへの挨拶もそこそこに本堂に通された。
出会ってすぐぐらいに、ゼンの今の住まいが、禅寺だと聞いたことがあったっけ。
えっ、お堂?
…ま、まさかなぁ。
もしや…と思い、恐る恐る尋ねると
「えぇ…心が落ち着きますよ」
人が良いのか悪いのか、
ゼンはにっこりと笑顔を浮かべて、ボクを本堂の中へと招き入れた。
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坐禅なんて、初体験。
うぉぉ、キンチョーするぜ!
内心ドキドキしつつ、ゼンから、呼吸法や座り方、姿勢など大まかに聞いて、
さっそく始まった・・・
ボクは坐禅と瞑想って同じだと思っていたんだけど、どうやら違うみたいだ。
ゼン曰く「何も考えず、ただ座るために座るのですよ」
と、なんとなく雲を掴むような言い方をする。
座るために、座るとは…
ぼんやりするのはお手の物だけれど、これとは違うのかなぁ。
考えなくても良いといわれたのに、
気づけば次から次へと、思考がさまざまにぐるぐると頭の中を駆け巡る。
さらに困ったことに、ゼンにはまるでそのボクの頭の中が見えるのかと思えるほど、
思考がぐるぐる回りだすと、すぐにボクのところへやってきて
右肩を軽く「トントン」と打ち、警告を出すのだ。
ボクは合掌し、首をやや左へ傾ける。
「…喝ッ!」
どれぐらいの時間が経ったのだろうか。
鐘が鳴り、この時間の終わりが告げられた。
「…お疲れさまでした」
ゼンの部屋で、熱い茶が出された。
ボクはと言えば、なんだか長時間ジョギングでもしたのかと思えるほどの妙なけだるさが全身を覆っており、口を開くのも億劫になっていたので、ゼンの労いにも、こくっと頷いて返しただけだった。
「…ふふっ。渡月さん…今の方が座るためだけに座っているみたいですね」
からかうようなゼンの口調に、ちらりとゼンを見、茶を一口啜った。
神妙な気持ち、とでも言おうか。
何かを言おうと思っても、言葉が紡げないでいた。
思いつくどの単語もが、少しずつズレているような、不思議な感覚に襲われていて
「ん~…」
ボクはようやく一言を発した。
それはただの唸り声にしかならなかったけれど、
唸ってる自分がなんだかおかしくて、照れ笑った。
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