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「時間がギリギリになってのお誘いだから、無理にとは言わないけれど」
そう言いながらまいおが見せてくれたチラシ。
「ほら、トワヤさんの好きな北欧とコーヒーとかね」
「へぇ。それは惹かれるなぁ」
チラシを確認すると、締め切りまでまだ8時間ぐらいある。
「これだけ時間があれば、大丈夫っしょ」
にっと笑って「良いよ、一緒に行こう」とまいおにチラシを返した。
まいおは「やったぁ!」と満面笑顔になった後で、
「あぁ、そうだ。それから────」
誰に聞かれるわけでもないのにコッソリ耳打ちを寄越してくる。
…!?
まさか、そうくるとは。
「たたたた確かにそうだけど!いやそんなんじゃないから!」
「良いって、良いって♪」
動揺した挙句「むぅぅ」と唸るボクを置いて、まいおは「招待状」と書かれたチラシに再び目を落とした。
「わ!サモワールなんかも置いてあるんだって!」
…さもわーる…なんだそりゃ?
まいおの隣からチラシを覗きこむと、かなりゴツい鉄製(かな?)の花瓶みたいな器の写真が掲載されている。
小さく載っている説明には、ロシアの茶器だと書いてあった。
…まぁ、ティーパーティのチラシにあえて花瓶が登場するワケないか。
「これって、お茶じゃないといけないのかな」
世界のホットドリンク。
自身でアレンジを加えて作れるように、材料も用意してくれるということだけど、
クリスマスだし、温かいドリンクで良いのなら…実は作ってみたいものがある。
「良いんじゃないかなぁ。コーディアルもあるみたいだし」
コーディアルというのはハーブを濃縮したもので、それを薄めてドリンクとして飲むものだ。
確かにこれは、お茶ではなく、どちらかというとジュースのカテゴリか。
「そっか。じゃあボクは…うん、グロギを作ろう」
ボクが最近注目している国で、ちょうどこのクリスマスシーズンに広く飲まれているグロギというものがある。
赤ワイン、もしくは葡萄ジュースとスパイスを温めて作るもの。
グロギを飲みながら青空市場を回ったりなんていうのは、その国では良くある風景だという。
ちょっとその風景を想像し、「ほわっ」としているボクを見て、まいおは
「濁点多いと、暗黒っぽいなぁ」
とボクとは違う意味で、ほわっとなっている。
…変なふたりだ。
気を取り直して、参加申し込み用紙に「必要な材料があれば記入しておいてください」という欄があったので、
葡萄ジュースとシナモンスティック、カルダモン、クローブ、それから干しぶどうとスライスアーモンドを少量ずつ、と書き記して、投函。
「じゃあ、トワヤさんがグロギる間、俺はサモワっていようっと」
「わぁ、上手いこと言うなぁ!」
ボクらは後日行われるティーパーティに思いを馳せて、ふふふっと笑いあった。
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