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陽射しは暖かく柔らかいのに、スカートの裾をはためかせた風はまだまだ冷たい。
ボクは思わずブルっと身震いして「ふぅぅ…」と小さく呟き、亀の如く、マフラーに鼻までを埋めて、あたりをキョロキョロと見回した。
先ほど感じた違和感はなんなのだろうか?
周囲を窺ってみるものの、これといった変化があったようには見えない。
気のせいかなぁ、とまた帰宅方向を向いた時に、あっと思ったのだ。
街路樹の向こう側。
空の青の色が、ほんの僅かだけど濃くなっているのだ。
そしてそこに浮かぶ雲もまた、その端をふわふわっと毛羽立たせ、軽やかそのもので。
もしかしたらそれは、他の人には取るに足らないほどの小さい変化なのかもしれない。
でもボクは、ボクの好きな冬の乾いた空の色が少し遠くなってしまったような気がしたんだ。
しかしそれは確実に、春がもうそこまでやってきているとも言えるわけで。
あぁ、だって今日は節分じゃないか。
明日はもう、暦の上では立春、春なのだ。
そういえば、さっき通り過ぎたケーキ屋の立て看板に、
「恵方巻ロール」と銘打ったロールケーキの絵が描いてあったっけ。
…さすがにあれは「一人1本食え」ってワケじゃない…よな?
そこまで考えたところで、まいおの顔が浮かんだ。
まいおなら「節分だし!」って言って1本まるっと食ってしまいそうなんだもの。
ボクはなんだかニマニマしていたらしい。
すれ違うガキんちょがやけにこっちを見てニヤニヤしてるのでそれに気づいて、慌てて頬を引き締めた。
ボクも今日の晩飯、太巻きにしようかなぁ。
あれを「ガブリ!」とやりゃ、一年息災でいられる、はず?
(正しくは、縁を切らないように、ということで1本丸まる齧るそうです)
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