posted by 渡月・トワヤ
at 11:10:36 │
EDIT
「うん、それじゃあ行ってくる」
ボクが玄関を締めるまで
母はその不安げな表情を変えなかった。
駅までは、父親に車で送ってもらった。
20分ほどの時間、あんまり会話はなかったけれど、
元々父はそんなに饒舌ではないから、気にも留めない。
「次に帰るとしたら、夏休みになると思う」
ボクの言葉に
「そうか、まぁ元気にしてたら、それでいい」
と言い、母さんにはたまに声を聞かせてやってくれ、と付け足した。
いよいよ駅が近づいた。
ボクは、窓の外を眺めたまま、
「父さん、銀誓館学園にボクを送り出してくれて、ありがと」
一息に言い切った。
父は短く「あぁ」と一言返しただけだった。
それでも安心したように、大きく息を吐き出すのが聞こえたから、
ボクはもうそれ以上言うことをやめ、
懐かしい町並みにまた、別れを告げるように、
流れる景色にぼんやり視線を走らせた。
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