posted by 渡月・トワヤ
at 15:08:14 │
EDIT
春の風のような、淡い緑色のラインの便箋が机の上に広げられていて、
開いた窓からの涼しい風に、ひらひらと揺れている。
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さやかへ。
元気にしてるか?
こっちは今日から新学期が始まったんだ。そっちもだっけか?
銀誓館学園ってめちゃくちゃデカいから、キャンパスがあちこちに点在してんの。
去年は星宮ってトコだったんだけど、今年は神楽山キャンパスってとこになったよ。
どっちも綺麗な名前だろ?
他にも瑠璃堂とか~…あとは漢字が読めないし書けないキャンパスがたくさんあるんだ。
しかし、ボクはたぶん、まだ学園全体を把握していない。
まぁ、なんとかなるさ。
新しいクラスには、あいにく見知った顔は一人も居なかったけれど、また新しい繋がりになると思えば、これもまた一興だね。
座席は廊下寄りで日当たりはないけれど、後ろから2番目だったよ。
…良いのか悪いのか、よくわかんないな。
昼寝してたらバレるかなぁ。
あいかわらず、左右の席は空いたままだけれど、
なんと今回は前にクラスメイトが座ってる!しかも女子だぜ女子!
(うわ、男子みたいな台詞を吐いてしまった)
1年のときは、一番前だったということを差引いても、周囲に誰も居なかったから、超ウレシイ!
授業中に手紙回したりしたい!
中学ンときも、何度かさやかとは手紙飛ばしあったりしたよな。
あぁ、懐かしい。
もうそっちは桜が満開?もう散っちゃったかな。
中学校の坂の桜並木は、見事だったよね。
毛虫はそのぶん、すごかったけれども…!
夏休みにはそっちに帰れたらいいなって、思っているけどバイトのシフトがどうなるか、わかんねぇな。
ともかく、時間がとれたら、会いたいね。
そっちの近況も教えてよ。返事待ってるぜ。
それじゃ、またな!
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「…んー。」
夢を見ていたのか、はたまた気道を圧迫していたのか。
自分の変な声に少しびっくりしたボクは、がばっと身体を起こした。
まだ目は半分閉じたまま、ぐるりと部屋を見回す。
あれガッコ…ガッコ行ったっけ?
机の上に広げたままの手帳の日付は、4月5日。
新しい席の場所が書き込まれているところを見ると、ガッコに行ったのは夢ではないらしい。
窓から流れ込む風は、ひんやりと頬を撫でるけど、
午後の光は柔らかく窓から床に落ちている。
時計を見ると、午後3時を少しまわったころ。
あぁ、今日は始業式がメインだったから、午前中でガッコは終わったんだった。
帰ってきて昼ごはんを軽く済ませ、さやかに手紙でも書こうかと…
えぇと、どこまで書いたっけな。
机に広げたままの便箋を手に取り、ボクはさらっと目を通した。
最後の方はなんて書いたか、ホントに記憶がなかったのだ。
なんとか最後まで書ききってるし、ミミズの這った字ではないし…、いいや、このまま出しちゃえ。
便箋をたたんで封筒に仕舞ってから、最近買ったシーリングスタンプ(留めた部分にワックスをたらしスタンプを押して封印するやつ)を施した。
これこれ、これを使ってみたかったんだよねー!
ようやく念願叶ったボクは、ふふっと笑って封筒を掲げて、四方から眺め満足げに頷いた。
よし、これを投函ついでに散歩にいこうっと。
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