旅行から帰ってきたボクは、結社に土産を置いて回ると、ゴーストタウンへ向かうことにした。
バイトを変わってからこっち しばらく経つけれど、どうも月のエアライダーというジョブが、しっくりこなくって。
憧れだけが先行しちゃったかな。
プールでもあまりに役立たずで、情けない。
もう少し何とかしたいから、とりあえず特訓(?)だ。
「まぁ、こんなもんだろ」
一緒してもらった仲間のおかげで、そこへ巣食うモノたちは一掃できた様子で、ボクらはほっと一息つくと、帰路につくため、踵を返す。
と、そんなボクの足元に、何かがまとわりついてくる気配を感じた。
ゴースト特有の、あからさまな敵意や怨念といった、あのゾッとするような感じではないにしても、普通ではない感触で。
…まぁ、ボクらのやってることがすでに、いわゆる「普通」とは言いがたいものなのだけれど。
そろり、と視線を落とすと一見かわいらしいネコがそこに居て、ボクを見上げている。
しかし、場所柄、それが生き物ではないのは、火を見るより明らかだ。
なによりそいつは、あろうことか服を着て二足歩行をしているのだもの…!
さながら、昔童話で読んだ「長靴を履いたネコ」だ。
…いや、むしろネコ版「三銃士」が、ぽんと本から飛び出してきたみたい。
「なななな…!?!?」
慌てすぎて言葉にもならず、イグニッションもできなくて、ボクは2,3歩後ずさる。
ボクの言葉にならない声に、先を歩いていたゼンが振り返った。
彼は、一瞬目を見開いたものの、年下とは思えない落ち着きぶりで、
「…渡月さん。その仔はケットシーだと思いますよ」
と言って、くすりと笑う。
え、え…ケットシー!?
ケットシーって、プールでもたまにみかける、踊るあのネコのこと?
(プールで見かける踊るやつは、ワンダラーと呼ばれる種類だけど)
言葉がうまく出てこず、口をぱくぱくさせるボクに、ゼンは
「きっと、渡月さんは、その仔に好かれたのですね」
とにっこり笑んだ。
ゼンのことばで徐々に落ち着きを取り戻すことができたボクは、
思い切ってケットシーと視線を合わせようと、しゃがみこんだ。
ボクの目をじっと見つめ返すその仔の目は、青く澄んでとてもきれいで、そこに敵意は微塵もないと感じた。
少し迷ったものの、
「ボクで本当にいいのなら、いっしょに、おいで」
と言いながらあごをなでると、いやがるそぶりも見せずにゴロゴロと喉を鳴らし、
なんと剣礼までして見せたではないか。
部屋へ帰宅し、ふと思った。
あぁ、名前。名前をつけてあげなくちゃ。
どんなのがいいかなぁ…
あの仔の瞳は、高い空の色を映したような青。
そうだ、青嵐にしよう!
碧く薫る風とともに吹くことを選んだ仔だもの。
とてもぴったりだとボクは満足した。
今日はもう遅いからボクは寝ちゃうけれど、
明日からはどこでも一緒だよ、あお。
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