時間もあるということだったから、たまには話でもしようか、と近くのコーヒーショップへ入った。
ボクは猫舌だから、アイスラテ。
彼女は、キャラメルマキアートのラージサイズ…!
そんなに飲むのか…?
ボクが目を見開いて彼女のカップを眺めていると、面白い顔をスルナと、彼女は笑って、その後あっさり飲みきった。
彼女の祖国は、コーヒーの消費も盛んで、皆当たり前に飲んでいるという。
「いつか、行ってみたいなぁ」
森と湖。白夜の国へ。
ボクの身辺に起こった大きな変化は、ハルカの耳にも届いていたらしい。
目ざとく右手の指輪に気付くと、
「人生って、ワカラナイネ。だから面白いのかもしれないナ!」
と笑った。
ボクだって、まさか自分がこんなふうになるなんて、思いもしなかった。
自分が、自分ではない誰かのために己の生を全うしようなどと想うこと、
そして、その相手から同様に、或いはそれ以上の想いを持って、特別な存在として大切にされることなど、ないと思っていたのだから。
「…そうだね。だから面白いのかもしれない」
ボクも感慨深く頷いた。
「それでトワヤは、そんなにしあわせそうなのだナ」
ストレートにしあわせそうだなどと言われて、ドキっとする。
思わず熱くなった頬をてのひらで押さえながら、
「え!?あ……ありがと…」
ボクは彼女に、精一杯の笑みで答えた。
──いつのまにか、雨が降り出したようだ。
窓の外に次から次へと咲く傘の花。
会話が途切れ、店の中のざわめきだけが耳に届く。
「…あのナ」
ガラスに当って落ちていく雨の雫を眺めながら、
ハルカにしては珍しく落とした声で、そう切り出した、話。
いつも明るく朗らかな彼女なだけに、彼女のこんな表情を見るのは初めてかもしれない。
誰にも言えずに、どのぐらい悩んでいたのだろうか。
いたたまれなくなって、ボクを尋ねてきてくれたのだと思うと、たった2歳の年の差だけれど、とてつもなく大きなものに感じられ、彼女の小ささを想った。
迷うことは誰にだってあるよ。
どうしていいのかわからなくなることだって、これから先、いくらでもあるはず。
「思うとおりにやったらいいよ。きっと大丈夫」
ボクはいつでも応援してる。何かあれば力になろう。
「…ウン。それもそうだナ」
彼女は何かを吹っ切るように、ボクにまた屈託ない笑顔を見せてくれた。
そう。やがて雨は上がる。
君がまた心からの笑顔で、周囲に元気をわけてあげられる日がくると、ボクは信じているよ。
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