[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「トワヤは、毎日ちゃんとご飯を作ってるんだったよね?」
秋桜の野原でのデートで交わした、そんな会話を恭一は思い出したようだった。
ふと彼を見ると、ボクが食べていた弁当に視線を注いでいる。
「うん、そうだけど…あはは、あんまり見んどって。可愛い弁当とかじゃねぇし」
見映えが良い弁当とは言いがたいから、ボクは少し恥ずかしくなる。
「……ああ、ごめん……でも、美味しそうだから、恥ずかしがることなんてないのに」
「…あ、ありがと」
美味しそうだ、と褒められて、くすぐったくて。
ボクは上手な言葉が見つからなくて、それをごまかすように、玉子焼きをぱくっと口に放り込んだ。
ごちそうさまをすませると、ふわ…と小さくあくび。
恭一は心細かくて、そんなボクの様子に気づくと、自分の上着を脱いで、ボクへとかけてくれた。
昨夜、ボクが風邪気味だったことを気にかけて、
「こんなところで寝ちゃダメだぞ」
と、心配顔をする。
「うん、寝たりはしないよ、大丈夫。それに此処は日当たりもいいし暖かい」
ボクは微笑んで頷いた。恭一に不要な心配はかけたくないから、自分を大事にするって、決めたんだ。
恭一から借りた上着を羽織り、ボクは彼の肩に自分の頭を預けて寄りかかるように座って、空やそこを渡る風を眺めることにした。
恭一はそんなボクの様子を見、それから本を取り出して、読み始める。
遠く、昼休みの校庭の賑やかさが耳を掠めて、ボクらの間には、穏やかな静寂。
言葉を交わすも交わさないも、ボクらにとってそれは、瑣末なことなのだと思う。
ふたりで居れば…それがどんなに短い時間だろうとも、こんなにも穏やかでやさしい時間が流れるから。
ボクにとって恭一との時間は、かけがえのない、たからものなのだ。