校門を過ぎ、下校する生徒の波が疎らになってくるあたりになるとようやく、ボクは恭一の左手に自分の指を伸ばす。ボクの指が触れると、彼はごく自然なしぐさでその指を自分の手の中に包みこむ。
一緒に下校するようになってすぐの頃、
「手を繋ぎたいけど恥ずかしい…!」
と言って苦悩する(ただのワガママな)ボクの姿を見て、
「トワヤが手を繋ぎたくなるタイミングでかまわないよ」
と恭一は微笑ってくれた。
彼は決して、ボクに無理強いしたりせず、いつだってボクの想いを尊重してくれる。
そして、彼のその想いに報いるには、ボクはすっかり甘えてしまうのが良いと考えている。
でも……
一緒に帰るようになって早2週間ぐらい経つのに、相変わらず心臓はドキドキしていて。
もしかしたら、繋いだ手から、早鐘のような鼓動や、ひいてはボクの気持ちまでが、彼に伝わってしまうのではないだろうか。
そんな気さえ、してくる。
秋の陽射しは、紅葉の始まった木々の葉にやわらかく反射して淡いオレンジ色に揺れている。
「ねぇ、トワヤ」
恭一がボクの名を呼ぶ。その声はいつも、まるで陽だまりのように暖かい。
「…ん?」
揺れる木漏れ陽は眩しくて、
吹き抜ける風の音ですらやさしくて、
もし、しあわせというものを五感で感じることができるのならば、まさに今、ボクが感じているすべてのことがそうであるに違いない、と思う。
ボクは目を細めて、彼を見上げた。
ボクを見つめ返すその蒼の瞳にも、同じようにやさしい午後の光が揺れている。
いつまでもこうして手を繋いで、同じ速度で同じ景色の中、歩いていきたいと願う。
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