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一日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
ガタガタと席を立つ同級生に紛れて、ボクは恭一の席まで飛んでいく。
「ねえ、恭一。今日、行きたいトコがあるんだけど、付き合ってくんない?」
恒例の下校デート。
行き先を前もって決めている時もあれば、そうでない時もあり、しかも十中八九、その行き先はボクが行きたい場所。
「ああ、良いよ」
恭一はカバンにテキストやノートを仕舞いながら、今日も優しく目を細めて快諾してくれた。
JR鎌倉駅から江ノ電に乗った。
電車内は程よく空いていて、ボクらは並んで腰掛ける。
握り合った手は、ふたりの間にそっと隠して。
今日はあいにくの曇り空。
いつもならこの時間は、西日が車内をオレンジに輝かせるのだけれど。
「恭一にも見せたかったなぁ」
そう言ってボクが唇をとんがらせれば、恭一は
「また次があるさ」
と微笑む。
さほどスピードも出ないこの電車がボクはなぜかしら好きだ。
ガタンガタン、と規則正しいレール音に紛れるように、昨日読んだ本のことや、今度行きたい店のこと、もうすぐやってくる冬のイベントのことなど、ぽつりぽつりと言葉を交わし、くすっと笑いあう。
湘南海岸公園で下車し、海までの道を歩く。
海の近くは風が強く吹く。
恭一の髪が風に舞い逆立って、見事なまでにぐしゃぐしゃになった。
ボクはなんだかおかしくて、くふふっと笑う。
恭一も、仕方ない、という風に肩をすくめて、笑った。
大切なのは、ここに在る今、そしてそこから続く、となりにいるやさしいひとと、共に在る未来。
喜びも悲しみも、二人で分かち合いたい。
それを忘れてはいけないと、ボクは海に来たんだ。
この風で、禊をするために。
風はもう冷たくて、でも心はこんなに温かくて。
ねぇ、きみに伝わってるかな?
ボクがこんなに、しあわせを感じていること。