posted by 渡月・トワヤ
at 16:40:31 │
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エレベーターにて。
「R」を押す。
薄暗がりのエレベーターホール。
目の前の鉄製のドアを開けると、瞬間、ボクの額にかかった髪の毛を、突風が薙ぎ払う。
目を射る陽光のまぶしさと、その風の強さに、思わず瞳をぎゅっと閉じる。
いつもこんな感じで始まるボクの屋上時間。
ただ、いつもと違うのは、隣に恭一がいるということ。
昼休みに、弁当をつつきながら見上げた空の色が高くて、どうしても此処へ、恭一を連れてきたくなった。
放課後の予定は特に決めていなかったし、今日もまた、ボクのワガママに彼を付き合わせる形になったけど、もう、これがボクらのスタイルだと言い切っちゃって、良いかもしれない。
防水化工の施された緑色の床。
エレベーターホールの上部には給水槽が設置され、出口の左手の壁側にはベンチがおかれている。
「へぇ…此処が……」
恭一は、ぐるり見回して、ひとりごちる。
「眺めは抜群だろ」
フェンスまで駆け寄って彼を振り返り、
「風はちょっと強いけどね」
へへっと、満面笑顔。強く吹く風も、ボクにとっては心地よいのだけれど、彼には少しキツかったかもしれない。
「ああ。確かに眺めがいいね」
ゆっくりと歩を進めていた彼もそう頷いて、ボクの隣に立ち、遠く目を細めた。
彼の、手に触れる。
やわらかく手を繋ぎあう。
もう、ボクらにとって、なんの違和感も生まれない一連の仕種。ボクは、手のぬくもりに心から安堵する。
「いつか、此処からの夕陽の見事を、恭一と眺めたかったほよ」
「……そうか」
空は徐々に、オレンジのグラデーションに染まる。
ボクらは、オレンジに照らされる。
きみの空色の瞳にも、夕焼けが映ってる。
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