今日は寄り道もそこそこにして早めに部屋へ帰ると、コーヒーを沸かして机に向かった。
普段なら、ここまで優等生なことはしないのだけれど、
今日ばかりは重要なミッションを抱えているのだ。
ボクはかばんから、1冊のバインダーノートを取り出した。
前回のテストが間近に迫ったある日、ようやく、ああ来年は受験なのだ、と気づき、勉強に本腰を入れることにしたボクは、授業で使っていたノートを見返して愕然とした。
メモと呼んでも差し支えないほどの(時折ミミズが這ったような)走り書きの羅列。
センセの板書をそのまま書き写した(らしい)これでは、あまりにひどすぎるし、いったい何のことを言いたいのか、書いた本人にすら、さっぱりわからないときている。これではあんまりだ。
そこで一念発起。
ボクは清書用のノートを準備し、授業の記憶が鮮明なうちに、清書することにしたのだ。
この清書作業、ハマると案外楽しいもので、重要項目ごとにマーカーで色分けしたり、ワンポイントや疑問点に簡単なイラストを添えてみたりした。
そうやって楽しみつつ纏め上げたノートは、前回のテスト時に大いに役立ち、(自分の過去の成績と比べて、だけど)目覚しい点数アップを記録した。
まさに快挙!やればできる子!!
それで味をしめたボクは、今でもノートまとめを欠かさない。
しかし、今日は自分のためではなく、大怪我を負った恭一から預かったノートへの書き写し作業。
他人のノートなどなかなか見る機会には恵まれないから、なんだか緊張してしまう。
けれど、恭一のノートを開いたボクは、少し目を見張って、それから顔を綻ばせた。
ああ、やっぱりね、と嬉しくなったのだ。
……性格、出てんなぁ。
何事もキッチリしていないと落ち着かない彼らしい、整ったノートがそこにはあって。
…でも、待てよ?
ボクはノートのことを頼まれたとき、彼のかばんからこれを取り出したぞ。ってことは、授業の段階ですでにこの完成度なワケ?!
ボクはため息を漏らしつつも素直に「すごいなぁ」と彼を尊敬してしまった。
これだけまとめられるってことは、授業の内容をきちんと理解しているってことだもの。
うん、ボクも負けてらんないや。
(でもボクは、授業のときにそこまで理解できるはずもないので、ノートまとめで盛り返す!)
彼がこのノートを見返すとき、できるだけ違和感を覚えないようにと、彼のノートの取り方と見比べながら、しばらくのあいだ書き写し作業に没頭した。
それはそうと。
今日ほど、幼いころから習字教室に通わされていて良かった、と思ったことはないかもしれない。
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