「……此処でいいのかい?」
恭一はそんなボクの様子に、戸惑いを隠せないでいる。
「…うん」
ボクは小さく頷いて「だって、さすがに寒いやろう?」
ここ数日は特に、朝晩の冷え込みを引きずって、日中も気温が上がらないのは本当だ。
だけれど、それだけの理由で、彼が納得してくれないことも、ボクは知ってる。
彼が注意深く、ボクの表情を見つめたままでいるのが、何よりの証拠だ。
今まで、昼休みはもっぱら屋上で過ごしていた。
それがこのボクの(理由が不明な)恥ずかしがりの性格を慮った上でのことだったのだから、そのボクがクラスメイトの前で彼にくっつくようなことをするなど、彼が心配するのは無理からぬことだと、わかっている。
ボクは、深呼吸をひとつし
「だって、恭一のこと好きやし…それを隠す必要とか、ないなって思って」
昼休みの喧騒に乗じ、彼にだけ聞こえるくらいの小さな声でつぶやいた。
やっぱり、顔は赤くなっちゃうけれども、もうこればっかりはしょうがない。
「……うん、ありがとう。トワヤが良いなら、それで良いよ」
そして恭一は同じくらい小さい声で「…僕も好きだよ」と言って、はにかんだ。
…心なしかその笑顔には、嬉しさが滲んでいるように、思えて。
影響を受けやすい、といえばそれまでのこと。
昨夜読んだ本の内容にボクははっとさせられたのだ。
彼を想う気持ちにうそはないから、まっすぐ背筋を伸ばし、自信を持っていいことなんだって。
気づくのに、こんなに時間がかかっちまった。
けれどきっときみは、許してくれるんだろう。
いつも傍で、ボクの思うままにさせてくれ、ボクが回り道をしても気長に待っていてくれて、本当にありがとう。
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