その人だかりの中心に、一冊の雑誌。
…あぁ、なるほど。
茶色とピンクで塗りつぶされたように見えるそのページ。ボクはその内容をちらっと見て、女の子たちが騒いでいた合点がいく。そりゃ盛り上がるなっていうのが無理な話だ。女の子にとっては、このイベントは一大事。
「手作りって重いかなぁ…」
「うーん。相手の感じにもよるよねー…あ、これいいなー♪」
ページをめくりながら、ため息をついたり、あれもいい、これもかわいい、と口々に言う子たちの周りには、なんだか淡いピンク色の花びらが舞っているみたいだ。ボクはその花びらのあまりのかわいさに多少気圧されながら、
「…ってか、何でボクを呼ぶの!」
ボクを呼びつけた子の肘を突き、ひそひそ声でそう訊ねる。
「…へっ?」
彼女は何をいまさら、と若干あきれた調子で
「だって。あげるんでしょ?」
視線を、ちらりと教室の前方へ走らせてボクを見、にやーっと笑う。
「~~~~~っ!!」
彼女につられて動かした視界に飛び込んだ後姿に、ボクは思わず赤面し言葉に詰まった。
「…あ、そうか。もうとっくに考えてるか、さすがラブラブ♪」
彼女はくすくすと笑う。
「…いや、あの…その~、まぁ、なんだ」
恋バナなんて、慣れてない。
(そもそも、こういう…恋って初めてだし…!ましてやチョコを渡せる相手が居たことなんかないし…恥ずかしいし……!)←声にならない声
うへへ、と笑って誤魔化せ!
とりあえず視線を彼女から逸らして泳がせていると、机の上に広げられていた雑誌のページに、ふと目が留まった。手作りチョコのキットの特集で「初心者にも簡単にできる!」という文字に、ボクの目は釘付けになった。
(…ガトーショコラが手作りできるだって!?)
料理は一通りできるけど、お菓子作りは、てんでダメだ。
でも、やっぱり……彼に喜んでもらいたい。
うーん。
今日帰ったら、お菓子作りのエキスパート(!)フルるんに相談に乗ってもらおうかな…
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