「そっちの様子は、どうだ?」
そう訊ねられて初めて、空港から宿泊先までの間…さらには日本を出てからこっち、ほとんど何も目に入ってはいなかったと気付いた。
「んー…」
実は飛行機にも乗ったことがなかったボクは、内心めちゃくちゃ緊張していたんだと思う。
「…あたりまえだけど、寒い」
そんなだったからなにも思いつかず、出たのは身も蓋もない科白。だけれど恭一は「そうか」と言って少し笑い、ボクの身体を気遣ってくれる。
何か伝えたい気がして言葉を探すけれど、うまく言葉が紡げないのは、
まだ伝えちゃいけないからなのかもしれない。
一緒に居れば穏やかに感じられる言葉のない時間も、電話口ではやっぱりちょっと落ち着かない。
「明日も早いから、そろそろ休もうと思うんだが」
彼の言葉に、離れた距離を実感する。
日本では、おやすみの時間なんだね。
こっちは夕方の光が窓から満ちはじめるところだよ。
またね、と言って電話を切り、部屋へ戻って荷物をゴソゴソほどきはじめる。
自分が決めたことだから、泣き言を言うつもりはない。
気を紛らわすために、ちょい笑える漫画も持ってきたもん…!
…そういえば、恭一が言ってた焼き物って、どんななのだろうか。
観光で来てるわけじゃないから、名所とか特産品とかあまり調べてなくて、さっぱりわからない。
あっ。
空港とホテルのロビーに置いてあったリーフレット。
そういうのはすぐ持ち帰るクセがあり、今回もほぼ無意識で持ってきていたのを思い出したボクは鞄からそれを取り出して眺めてみる。
もし、帰る時に余裕があれば空港の免税店でも…
おぉ?空港はショパンのフルネームなのか…!
パンフを見ていて初めて気づく、そんな自分に苦笑い。
空港の免税店でも、帰りに見てみよう。
……覚えていたら、だけれど。
(なにぶん初の海外で、正直見た目以上にチキってんだよ…!)
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