躓かないようにと視線を足元へ落としていたら、そのまま思考が悪い方へ悪い方へと向かっていった。先の不透明さ、これから行われることへの緊張状態が、ボクを気弱にさせているのは明白で。
ああ、まずいな…と思った瞬間、カンちゃんの声が耳に蘇った。
「顔をあげろ、前を向け。ってね」
ボクははっとして、顔を上げる。
いつだったろうか。
なんでそんな話題になったのかすら思い出せないけれど、彼と座右の銘の話をしていた時のことだ。
あの時ボクは彼の言葉に
「それ、良いねー。前向きー!ってカンジ」
と笑った。彼も「どうせなら、前向きな方がいいかなと思って」と少し笑い、つい後ろ向きになってしまいがちな自分を鼓舞するためなのだと言っていたっけ。
仲良くなった切欠ももはや思い出せないほど長い付き合いだけれど、一見クールなくせに実際はアツい(と思う。だってあんまり見せてくんないから)彼を、ボクは何かと頼りにするようになっていた。
自分にもし兄ちゃんが居たらこんなカンジかもな、という類の。
ボクは内にある不安を振り払うようにぶんぶんと頭を振ると、前方を行く案内人の背中へ視線を移した。
他人が聞いたら「覚悟が足りない」って呆れられちゃうのだろうか。
「どうせなら、前向きな方がいい」
彼の言葉同様、いつ、どんな時でも、ボクは自分の心に明るい光を灯していたいと思う。
何か心を晴れさせることを見つけ、笑顔で居たい、と
できるだけ、心を軽やかに保っていたい、と願う。
ほら、空はこんなにも青く美しいのだ。
出発前に、自分ができると思ったことは全部やった。後悔はない。
後は、仲間と自分とを信じるだけだ。
胸を張れ。
目線はあげたまま、ボクは乾いた冷たい風に晒され引き攣れる頬を引き上げて、笑顔を作った。
もうすぐ決戦の地。
生きることへの強烈な願望は、絶対に手放してやるもんか。
希望という名の灯火は決して絶やさぬように。
──何が何でも、生きてやる。
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