昨日の夕方見つけたハクモクレン。
木の皮のような硬い蕾を割って出てきた花弁は、実は、まだ開花には至っていなかった。
ただ、遠目からはそこまで確認できなかったし、3日のブランクがあったのを忘れていたから、
まるで一夜のうちに様変わりしたような錯覚を覚え、大声を出してしまったというワケだ。
そうだな。
神さまがもし居るのなら、蕾の代わりに、真っ白の鳥をちょこんと乗せていって、皆を驚かせるためのイタズラをしたんじゃないか、と。
そんな感じ。(実際「おぉぉ!」と驚かされたボク)
夜。
ボクの幸運度回復にGTへ向かった際、先日銀誓館に編入したばかりの弟も連れ出した。
「コータの戦いぶりがどんななのか、しっかり見ててやっからな」
そう言って笑うと
「まだあんまり慣れちょらんけぇ、判定は甘めで!」
と拝んでいた。
ボクはニヤニヤして、それには何も答えず。
正直なところ、ボクはコータがやりやすいようにやってれば、それでいいと思っている。
強制したり押し付けたりするのは、好きじゃない。
「姉ちゃんはいつ覚醒したそ?」
GTの最奥を目指している途中、コータがそう訊ねてきた。
「んー。覚えてねぇや」
「えー!?」
明らかに不満の声をあげる。
「覚えてないのは本当だよ。幼稚園ン時にはもう勝手に、旅人の外套なんて発動してたしな」
こうして、弟と自分の能力のことについて話をすることになるなんて思いもしなかったなぁなんて、感慨深く。
「…へぇ。ちっとも、気付かんかったよ」
「そりゃそうだろ。一般人の目には、旅人の外套発動イコール見えなくなるってことだもん」
「あぁ、そうか」と彼は頷いて、ごく自然な調子で「姉ちゃんも大変だったんだなぁ」と呟いた。
…わかったようなことを言うようになったなぁ。
ボクは何も言わず、あいまいに笑った。
帰り道、吐く息は白かったけれど、なんとなくふらふらとそのまま散歩をする。
足は勝手に紫陽花会館へ向かうが、そのままにした。
まぁ、もうちょっと荷物もあるし、CDの入った段ボールぐらいは持って帰ろうか、とも思って。
昼間と夜とは、風景って、すごく違う。
あのハクモクレンの木が、月明かりに青白く照らされているのが見えた。
あ、と思い、足が止まる。
あの白い蕾が皆一様に、まっすぐ空に向かって枝に並んでいる。
その木立の様子は、さながら、夜道をぼんやりと照らす大きくて立派な燭台に見えた。
ボクは、不思議の国にでも迷い込んじゃったんだろうか。それか、ガリバー旅行記の巨人の国。
小さいころ物語で読んだ小人たちは、人間の暮らしとであった時、こんな風に思ったのかなぁ。
弟と久しぶりに直接話したせいか、自分が小さいころの(主に読んだ絵本や童話の)記憶が色々と蘇ってくるようだった。
自分がおとぎ話の世界に迷い込んだような、なんだか不思議な気持ちになって、ボクはしばらくハクモクレンの燭台を眺めていた。
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