ヴャウォヴィエジャの森。
閃光が走り、雷鳴がとどろく。
雪が舞い、突風が吹きぬける。
業火は夜空を紅く染め、未だ春遠い白き世界を照らした。
── 人狼の咆哮、生徒たちの鬨の声。
救護所に運ばれる担架の中、一瞬見かけた姿に見覚えのある気がして、ボクは駆けていた。
見間違いだったら、いい。
それは祈りにも似た気持ち。
怪我を負った者・手当をする者。
その人波をかきわけたどりついたベッド。
果たして、およそ1ヶ月前に、この場所で共に戦ったばかりの仲間が横たわる。
あの時、不安に駆られたボクを叱咤激励してくれた人。
いつでもボクの少し前を歩いているようで、すっと伸びたその背に信頼を覚えた相手。
此処に運ばれたということは即ち、生命賛歌に救われたということ。
胸が上下しているのが見て取れる。ボクはひとまず安堵しながら、遠慮がちに話しかけた。
「…二度目の森なのに、感傷に浸ってる間もないよなァ」
声が震えないよう、腹から出したボクの声に、彼は閉じていた目を薄く開き
「……よう、トワヤ」
口の片側だけを少しあげて笑う。
笑える元気はあるってことか?
けれど相手の身体の痛みは如何ほどなのだろう。少なからず近しい感情を抱く相手だ。きっともしボクが彼の立場なら……強がる。だから。
「…ったく。卒業して鈍っちゃったんじゃないのー」
ボクは動揺を悟られまい、と軽口を叩き、視線を外す。
圭にーさんは、笑うようにふっと息を小さく吐き出して
「…まぁ、そこは可愛い後輩に活躍の場を…な?」
目を閉じた。
ボクは唇をきゅっと噛む。
まだ己の足で立てるボクにできることは、圭にーさんの言うとおり、戦うこと。
「……なーんて、冗談。さっさと寝て治せよ!んじゃ、ボクはまた行ってくるぜ!」
一息で言いきってくるりと踵を返し、救護所を後にした。
コマンダーから、向かうべき場所への指示が飛ぶ。
次の場所までは、もう少し。
隣を歩く恭一とつないだ手に力を込める。
もうすぐ、この手を離すときがくるけれど、ボクの心はいつだって、きみの隣に居る。それは、きっと、きみの心も、同じはず。
ちらりと視線を合わせ、微かに目を細めた。
前方に小さく、敵勢力の群れ。
「さあ、行こうか……」
「よし、行こう!」
するりと解かれる指。
ボクは前へと駆け出しながら、魔方陣を空に描きその力を享ける。
前へ、とにかく前へ進め。
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