ボクは部屋の窓を開け放つ。
今、部屋へ吹き込む風はやわらかく暖かい。昨夜のアレはなんだったのだ?と誰とはなしに訊きたくなるほどで。
窓から見える雲はゆったりと流れ、時折陽の光が、サンキャッチャー越しに床に揺れる。
ボクは、というと、明日出かける予定の、桜の下に埋めるタイムカプセルイベントの準備をしていた。
(それこそおもちゃみたいな)てのひらサイズのインスタントカメラや、カラフルなペン、マスキングテープなんかをキャンバス地のトートへ入れて、ひとまず準備OK!
コーヒーも飲み終わったことだし、散歩にでも行こうかなぁ。
よし、と立ち上がって、カップを手早く片付けた。
ふらふらとあてもなく散歩道。
少し前まで桜が花盛りだったけれど、今はもうハナミズキのシーズンを迎えている。
ハナミズキなら、ふちがピンクの白い花 ── 本当は花ではなく総苞と呼ばれる部分なのだけれど ── がボクは好きだ。
散歩には、花事典を持参するようにしている。公園や軒先の花で、気になったものはすぐに調べられるように。
そして時間やスペースがあれば手帳を開き、スケッチしたりするのが、今のボクの楽しみのひとつ。
今は公園の藤棚の下に居る。
淡い紫が煙るような藤の花の下にあるベンチでぼんやりとしていたら、ふと視線の端っこに赤いものが映った。
不思議に思って視線を移すと、まるで赤い風呂敷がふわりと道に広げられてるような一角がある。
いやしかし、まさかあんな真っ赤な風呂敷などあるだろうか。そもそも、あんなところに広げる理由などない。
なんなのだろうか?あれは。
ボクは好奇心を抑えることもなく、その一角へ足を向けた。
はたしてそれは、昨夜の春嵐でだいぶ揺さぶられたのだろう、きれいに落とされてしまった椿の花たちだった。
椿は冬のイメージが強かったけれど、この春先までガンバっていたんだなぁ…。
ボクはしばらく、足元に広がる椿のじゅうたんを眺めていた。
椿の花のなんと潔いことか、と、ボクははっとする。
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