鬼灯市への参加呼びかけ中の教室で先輩が
「知人?友だち?…あぁ、寮の後輩だ」
とボクのことを指して言っていたのを耳にして、ボクは教室の外で立ち止まり、表情を硬くする。
先輩にとって、ボクは知人のひとり。そういう認識だったということだ。
…何をボクは。
先輩のやさしさに思い上がっていた自分が恥ずかしくなる。
今ならまだ、平気なカオをして「ただの後輩です」って笑って済ませること、できるだろうか。
── 胸が、ちくんとする。
どう振舞えばいいだろう。
自分の取るべき行動を決めあぐねて、教室のドアに伸ばした手は動かないままだ。
今までのボクなら、間違いなく笑って誤魔化したろう。
それは、自分が傷つくのが怖かったからに他ならなくて。
傷つくのを恐れて、手を伸ばすのを躊躇い、結局それは、自分を大切にしていないのと同じことではなかったか。
今までと同じことをやってて、それでいいのかい?
それじゃあ、何も変わってないじゃないか。いいかげん、学習しろよ。
だからボクは…
自分への叱咤は、皆まで言わず、ぐっと飲み込んで。
心に積もる滓を確かめるように、ゆっくりと、瞬きを一回。
そうだ、ボクは決めたんだ。
自分の心に正直に生きよう、って。
ボクが先輩を想っていることと、
彼がボクを想わないこととはなんの関係もない。
どっちみち、ボクの気持ちは先輩には知られちゃっているのだし、この気持ちに迷いや疚しさは微塵もないのだ。
自分を大事にしない者が、いったい他の誰を大切にできるというのか。
彼を好きだと想うこの気持ちを、ボクは大事に抱きしめて歩こうと決めたんだ。
そんな風に考えてるうちになんだか悔しくもなってきて!(ボクの心は忙しい)
せめて「友だち」って即答してもらえるぐらいに、なりたいから。
これしきのことで、メゲてたまるか。
先輩に続くように教室に足を踏み入れたボクは、
「仲良くなりたい下心満載で、絶賛片想い中の寮の先輩を誘ってみたんだ♪」
そう宣言して、にっこりと笑った。
笑うと、心は想像以上に軽くなるから不思議。
「メゲてたまるか」
もう一度心の中で繰り返す。
そう。恋する女子は強いのだ。
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