午後、夏期講習からの帰り道。
ぎらぎらした陽射しは容赦なくボクに照りつける。
移動販売車でフレッシュフルーツジュースを売っている屋台を見つけ、フラフラと呼ばれるようにテントの日陰に入った。ちっとも涼しくなんかならないけれどメニューを眺め、マンゴーとオレンジのミックスをお兄さんに注文。簡易カウンターに頬杖をついて脱力した。
ふと視界の端に、空のグラスにくるりと突っ込まれた薄黄色の紙が数枚と鉛筆が2~3本。どうやらアンケート用紙らしい。裏にはこちゃこちゃと何かが印刷されているのが透けて見える。何がそんなに印刷されているんだろう?
暇と好奇心にまかせて、ボクはそのうちの1枚をひょいと抜き出し、裏返してみた。
ジューサーで手際よくジュースを拵え中のお兄さんが、ちらりとボクを見やり、にっこり笑う。
紙を抜き出す現場を見られ、ぎこちなく笑い返し、そのまま用紙を返すのも悪い気がして紙に目を落とす。「待っている間にお楽しみください」なんてタイトルと共に心理テストが印刷されていた。
「~している人は誰?」といった設問が4つ。
自分の周辺に居る人たちを当てはめていけばいいらしい。
用紙の下半分は答えが、ひっくり返して印刷されている。
へぇ…心理テストかぁ。
とりあえず、やってみっかな。
軽い気持ちで答えることに。直感、直感、ぜーんぶ直感。
ひっくり返し答えを確認。
…瞠目したボクの頬が、みるみる紅潮する。
「──当ってた?」
気安さを装ったお兄さんの声にボクははっと顔を上げた。
このタイミング。
どうやらカウンターの奥からボクの表情を窺っていたらしく、お兄さんは意味ありげににやにや笑っている。
「…べ、別に」
言いながらアンケート用紙を元あった場所に戻し、うろたえるボク。ちきしょう。バレバレじゃないか。
「そうかぁ。はい、お待ちどうさま♪」
お兄さんは気にする様子もなく、ボクにプラスティックのカップを手渡してくれる。
「ありがとう!」
ボクはカップを受け取ると半ば逃げるように、一向に弱くなる気配を見せない白い光の中に飛び込んだ。
ジュースはとろりとして甘酸っぱく、本当に美味しかった。
寮へ帰ると、ボクはごろりと転寝することにした。
陽射しは容赦なく照り続け、ジュースごときでは太刀打ちできないほど強暴に、ボクの体力を奪い取っていったようだった。
眼球そのものも日焼けしたみたい。
目の周りは引きつり、瞳はカラカラに乾いてしまっている。閉じたまぶたを両手の指先でぎゅっと押さえると、じゅわっとした疲労感が広がるようだった。
ふと気づくと、夕焼けのオレンジがボクを包んでいた。
どれぐらい寝てしまっていたんだろうか。
ぼんやりする頭を振って身体を起こし、ケータイを開いて時間を確認。
窓の外に見える空には夕闇が降りはじめていた。
蜩が遠慮がちに鳴きはじめる。
夕食の時間にはまだ少しあるから、散歩をしてこよう。
ボクは寮を出た。
庭先のノウゼンカズラが、風に小さく揺れている。
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