友だちは、そんなに居なかったよ。
どっちかっつーとおとなしい部類だったし。
なんだ?そのツラ。
信じてねぇだろ。
今でこそ、ちゃんと能力を制御する術を覚えたけれど
物心ついた時にゃもうすでに『旅人の外套』は覚醒していて、
でも、うまく、制御できんかったのな。
ついでもぼんやりしていたら、ふわっと身体が軽くなっちまうしさぁ。
便利だな、って思う反面、なんだか変な気分だった。
あれはボクが小学生ぐらいの秋の、ある晩のことだったっけな。
家族で夕食を摂ってた時に、
たしかその日は何か行事があって、食事を摂るのも面倒に感じるぐらいボクは疲弊していた。
いつも以上に制御は効かず、両親の目の前で、ボクは風を纏っちまったんだ。
母親は、それに気づかず、
「あら、トワはおトイレ?行儀が悪いわね」
と廊下へのドアの方を振り返りながら、素っ頓狂なことを言った。
対して父親はというと、
「あぁ、そうだな」と一言相槌を打って、それでも、ボクの目を見ていたなぁ。
あん時の父親の顔、今でも忘れられん…
その日の夜半、父親が珍しくボクの寝室に来たんだ。
「まさか、お前もなんて、なぁ…」
その表情からは、何も読み取れなかったけれど、
さっき、ダイニングで見せた険しさはなかった。
父親はボクの目の高さまでしゃがむと、
「いいかい、トワヤ。さっきのあの『
チカラ』を気安く使ってはいけないんだ。
使ってしまわないように気持ちを引き締めて、生きていかねばならん。
それが、ぼくたち能力者の決まりなんだよ」
そこまで一気に言うと、ボクの頭に手を置いた。
ボクタチ ノウリョクシャ ノ キマリ。
いきなりそんな話、理解できるわけがない。
でも自分からは、それ以上を聞いちゃいけない気がして。
そうか、姿が勝手に消えてしまうのは、きっとボクが人間じゃない幽霊かなにかなんだって、
そんな風に納得するしかできなかったよ。
「能力の制御方法は感覚的でしかなくてね。
説明を聞けば誰にでもできるという類のものではない。だから…」
父親は、ボクに青みがかった翠色の綺麗な石を、
──ほら、このピアスの、 この石を握らせて言ったんだ。
「応急処置的ですまないが。
お前がちゃんと能力を制御できるまでは、 これを肌身離さず持っていなさい」ってな。
あはは、今はちゃんと制御出来てるって!
なんとなく、捨てる理由もないから、持ってるだけさ。
そんな石ころをもらったところで、父親の言うとおり、制御は侭ならなかったから
何度か変な気分も味わったなぁ。
仲良しだと思ってたダチがまぁ何人か居たんだけどさ。
その子らの前で、気が緩んで消えちまったこともあったんだ。
さっきまで楽しそうに笑ってたのに、そいつら。
うん、友だちなんて面倒だなと思ったね。
だから、覚えてることは、ほとんどないや。
去年、中学3年の夏ぐらいかなぁ。
進路の話もぼちぼち出だして、ちょっと自棄になってたのもあって、
街をぷらぷらしてたんだ。
そしたら、ふと呼び止められて、銀誓館学園のパンフレットを手渡された。
知らないおっさんだった。
でもそのおっさんは、何かを知っているような風でもあったなぁ。
あぁ…そうか。
ボクに能力があると知った父親と、おんなじようなカオしてた、うん。
ココに来る道すがら、そのおっさんは教えてくれたよ。
いつまでも周囲と和合できず浮いていたボクを心配した父親が、
ボクの銀誓館学園への編入を依頼したのだと。
母親は「そんな遠くへ進学させなくても」とかなり反対したらしいけどな。
でもボクは、この学園に来て良かったと思ってる。
(顔を逸らして)オメーにも、会えたしな。
あぁ、そうだ。こんな話を聞いた。
自分の年を3で割ると、それが自分の人生の時間なんだってさ。
今ボクは15歳だから…えぇと、明け方5時ぐらい?
ちょうどこれから、陽が昇るころ、だな。
なんだかそう考えると、今まであったこと、まぁあんまし覚えてねーけども、
今とこれからのための準備だったんじゃないかと、そんな気がするよ(少しはにかんで笑った
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