うむー。
どれぐらい問題をにらみつけていたのか。
なんだか眉間のあたりが強張っている。
背中をうーんと伸ばして大きく息を吐き出して。
ふと目に留まる、花と碧いグラス。
そのグラスは、青から緑のグラデーションに小さな気泡が浮かんでいるもの。
去年の修学旅行で沖縄に行った際に、ボクが制作体験した琉球硝子製のグラスだ。
ただのミネラルウォーターだってなんだかおいしくなるような気が(するのは、美ら海のグラデーションに似せた大好きな色合いの所為かなぁ、なんて半分自画自賛で思ってたりなんか)して愛用していたのだけれど、今年の夏はこの子に別の役割ができたのだ。
ゆるりと手を伸ばして触れると、菫色の小さなはなびらが揺れる。
造花の紫陽花。
雨の日の色にも似たこのグラスは、その子のための特等席に決めたのだ。
切り花が苦手なボクは一輪挿しや花瓶の類を持っていなくて、だからこの花を貰った時、どう飾ればいいのか、少し迷っていた。
自分が「交換しよう」と申し出ていたのに・・・後先考えなさすぎだっていうのは、まぁ別の話。
紫陽花、雨、紫、青、水の色…水……
想いをつないだ先には、答えを知っていたかのように碧色のグラスが待っていて、ボクは膝を打つ。
「そうか。ボクはこの紫陽花のために、あのグラスを作ったのかもしれない」
なんちゃってね。
とりあえず、グラスにそのまま花を挿してみたけれど、少しぐらぐらとして覚束なくて。
ボクはちょっと考えた。
花が咲く水辺を思わせる、さわやかな甘さが漂うコーンタイプのインセンスを何個かと、グラスと同系色のビー玉とを混ぜてグラスに軽く詰め、そこに花を挿した。
これでぐらぐらしなくなったし、挿す角度にもニュアンスをつけられるようになった。
うむ、満足っちゃ(思わず出るお国ことば)
実際、机につけば時折仄かに漂う水の気配が心地よかった。
今日みたいに夏の熱を冷ますような雨の日は特に、空気中の雨粒までもがその気配をより濃密にする感じがして、目を閉じると、花が咲き誇る池のほとりに居るかのような気分にさせてくれる。受験勉強で思うように海やプールに行けなかった鬱憤が紛れるような気もして、少しだけ気分的にラクになる。
机に片頬をつけたまま、ボクは紫陽花を見上げた。
この花に託された想いを、静かに想う。
願えば。
強く願えば、本当に叶うんだね。
もちろんそれは、ただ願えば目の前に「はい」と差し出してもらえるような甘ったれたものじゃないことぐらい、ボクは知ってるけれど。
庇に当たる雨音が耳に戻ってきた。さっきより、雨が強くなったみたい。
ボクはコーヒーを淹れるために立ち上がった。
ゴールは遠いけど、きっと到達できるはずだから、もう少しだけ頑張ろうと思う。
きっと最後まで、ボクは頑張れる。
近くで応援してくれる人もいる。その応援には、応えたい。
強く強く心に刻む、これもひとつの願いごと。
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