「いつでも使っていいからな」
微笑みながらそう言われ手にやさしく握らされたものを見て、ボクは自分の頬にさっと朱がさすのを感じた。
それを渡されるということ自体が彼から「お前は特別だよ」と言われたようでもあって素直に嬉しかったし、微笑む彼に見惚れていたのも事実。ボクは彼のゆったりとした微笑みがすきだ。
ただ、使っていい、と言われたところで、具体的にどんなときに使ったらいいのか、本当のところ、ボクはよく判っていなかったりもするんだけれど。
それでも、ボクはこのてのひらに包んだモノに、彼の想いが込められている気がして、とにかく嬉しかった。
彼の言に小さく頷いて
「わかった。ありがとな」
と微笑み返す。
気がつけば、彼と恋人同士になって1ヶ月。
「え、まだそんなもの?」と思わず言ってしまいそうになる。
あまりそういう実感が湧かないのは、それ以前とさほど付き合い方に変わりがないように感じられるからだろうか。
周囲に恋人同士だと認められてはいるものの、彼とボクとのふたりの関係性についていえば、彼はこうなる前からずっと一貫してボクを大切にしてくれていたから、よけいにそう思えるのかもしれない。
ただ、安心感についてだけ言えば、以前の比ではないほど大きくて。
これも、その安心感のひとつ…と言えるかもしれない。
ボクは再度、手のひらに包んだそれを見つめる。
たとえばボクのこころがグラグラとゆれ、何かを見失いそうになってしまったなら、おそらく彼は、躊躇なくその両腕をボクへと差しのべて受け止めてくれるだろう。
頼られることが多かっただけに誰かに頼るのは苦手なボクだけれど、彼の頼もしさは、そんな苦手意識さえいつか吹き飛ばしてくれるような気がしてる。
だって、ボクが今日も笑顔でいられるのは、彼が傍に居てくれるからに他ならなくて。
こんなにしあわせなことが、ほかにあるだろうか。
次の日、ボクはシルバーの細いシンプルなネックレスを買った。
ボクの小遣いで買えるほどのそれは決して高価なものではないけれど、値段の問題ではない。
ボクは彼からの贈り物をその銀の鎖に通して首からぶら下げ、服の上からそぅっと握った。
これは、ボクが笑顔でいられるお守りだから、
肌身離さず持っていたいんだ。
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