もうすぐお友達の誕生日だから、贈り物をしたくって。
彼女はボクとまったくタイプが違っていて、女の子らしい(というとちょっと失礼な感じかも)人だ。おっとりしてて、可愛いものやきれいなものが好きだし、実際そういうものに囲まれているのが何よりも似合う女性。
昔近所に住んでいた、ピアノを弾くのが上手でやさしいお姉さんに、ちょっと雰囲気が似ているかもしれない。
1歳しか違わないのに、この違いはなに…!(ガクガク
ちらりと聞いた話では彼女は最近、ちいさな森の中にレストランを開いたんだとか。
彼女のことだから、きっとハーブなんかもいろいろと使った料理やお菓子を作るんじゃないかなぁ。
もしかしたら、レストランの周りは、ちょっとしたバラ園になるかもしれない。
甘いお菓子の香りに誘われて、蝶々や、リス、野ウサギ、シカなども集まってきそうなイメージ。
ボクはまだ見てもいないのにそんな風に思いをめぐらし、そういえばもうすぐ彼女のお誕生日だったと思い出したのだ。ならば、開店祝いも兼ねて何か贈り物をしたら喜んでくれるんじゃないかという結論に達し、今この店にいるというワケ。
そういうテイストの店を選んだのもあり、品揃えは彼女のイメージとほぼ重なる。
…やっぱエプロンかなぁ。
料理=エプロン、という安直な発想から、ひとまずキッチングッズがおいてあるコーナーへ。
陳列してあるエプロンを次から次に取り出して彼女のイメージと重なるかどうか、確かめる。間違っても自分にあてがったりはしない。それぐらいは自覚している。
(近頃、若干服装はおとなし目になったものの)店内に居るほかのお客さんとは明らかに雰囲気の違うボクに声をかけあぐねている店員さんたちの様子が視界の端にちらちらと映る。
が、気にしては負けだ。
それに、ある程度ほうっておいてもらったほうが自分のペースで選べるので、実際ボクは助かっている。
そのうち取り出したエプロンにボクは「おっ」と手を止める。真っ白で、厚手でありながら柔らかい上質な布。レースがふんだんに配されたエプロンは、まさに彼女のイメージだ。
けれど。
残念なことに実用性には欠けている感じ。
それじゃあ意味がないんだ。彼女が似合うのは、可愛いだけのエプロンじゃない。
ボクは少し肩を落としながら、その白いエプロンを元あったところに戻した。
うーん。
エプロンは、やめよう。
自分が望むようなエプロンには巡り合えず、ボクは店内をぐるり徘徊しはじめた。
…ん?
そのうちボクが足を止めたのは、おしゃれなスコップやプランタが置かれたガーデングッズのコーナーだった。
ボクが花についてちょっとだけ詳しくなれたのは、彼女の影響が大きい。
ボクは見て楽しむだけだけれど、彼女は育てる楽しみを持っていて、いつかの引越しの手伝いをしたときに、彼女の荷物にいくつもの鉢植えがあったことを思い出した。
あ、これいいかも!
ぱっと目を引いたのは、白い革製の手袋だった。
それはガーデニング用の手袋で、こういった皮製のものならバラのトゲだってへっちゃらだ。ボクの脳裏にバラのお世話をする彼女の映像が浮かぶ。
パイピングと手首に縫い付けてあるリボンが同色で誂えてあって、実用的には見えないほど、デザインも可愛らしい。
リボンの色違いで4種類ほど並んでるうちの青を迷わず選び取って、とりあえずボクは自分の手にはめ、手を握ったり開いたりしてみた。案外やわらかくて、指の動きを妨げない。うん、これはいいぞ。
「──着け心地はいかがですか?」
ボクがあまりに何度も手をにぎにぎしていたからだろう、店員さんが声をかけてきた。ボクははっと我に返り顔を上げ「えっ、あ、えぇと。考えてた以上にやわらかくて、つい…」とにぎにぎしていた言い訳を聞かれてもいないのにしている。
「そうなんです。柔らかい革を使って女性用に作られたものなんですよ。だいぶ細身でデザイン的にもおすすめなんですよ」
ふわりと微笑んでそう話す店員さんの言を受け、もう一度手に取った手袋に視線を落とす。
言われてみれば、ホームセンターとかで目にするようなガーデニンググローブは無骨な印象(「森の男!」ってイメージ)だ。それに比べるとデザインも凝っているし、だいぶスタイリッシュ。
今手に持ってる白と青の配色も清潔感あふれる彼女にはぴったりだと思った。だからこそ最初に手に取ったともいえるけれど。
「よし、これ、ください!」
なんだか気合が入っちゃって、ちょっと大きい声が出る。
対応してくれた店員さんは、ちょっとだけ目を瞠って、それからくすっと笑い、レジへとボクを促した。
紫とオレンジの淡いグラデーションに羊雲が広がる空の下。
少し欠けた月が、寮までの道を歩くボクの後ろからついてくる。
(気に入ってくれるといいなぁ。)
ボクは少し、にまっとしてしまうから、慌てて頬をぐっと抑えた。
贈りものって、贈る方にとっても、なんだか魔法みたいなところがあるよね。
しあわせな気分を半分こにできるんだから。
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