彼はやっぱり、とても強くて頼りがいがある。
もっとも強くボクがそう感じるのは、攻撃時もさることながら彼が癒しの歌をうたうときだ。
ボクは、たとえば深手を負い疲労を感じていたとしても(もうちょい粘れば倒せる)と思えば回復そっちのけでブーメランを飛ばしてしまう。まぁ、攻撃は最大の防御なりってワケだ。
その点、彼はいつだって全体に気を配っているみたいで、少しでも疲れを見せるメンバがいればすぐさま攻撃の手を止め、あのやさしく力強い歌声で傷の痛みや疲労感を和らげることにその能力を使う。
そして彼には、その癒しの歌の力がとても似合っている、とボクは思っている。
GT深く。
幾度目かのゴーストとの遭遇。
イグニッションするのとほぼ同時に彼と目配せし、小さく頷いてみせる。彼との連携は、もう違和感の欠片ひとつなく。ボクは前方の空中に魔方陣を描き、体内の魔力を高めはじめる。
彼がゴーストとの間合いを詰めるため地面を蹴った、その刹那。
「愛してるぜ、とわ。……って聞いてないか」
その言葉がボクの耳に届いた時には彼はすでにゴーストの懐へ飛び込んでおり、キツい一撃をお見舞いしているところ。
──!?!?
ボクは目を白黒させる。
き、聞いてないかって、ンなワケない。
だいちの声は大きくて良く通るんだから、ちゃんと聞こえてる。それにだいちからそう言われたら嬉しいに決まってるよ。でも、今この場でそれを言うか…?今までそんなこと言ったことなかったじゃないか。
描き終えた魔方陣から注がれる魔力で体内に力が満ちていくのを感じつつ、それとはまったく違うルートで身体の熱も上昇を始める。細胞が活性化してくみたいだ。鼓膜の内側では脈を打つ音が大きく響いて、…心までも満たされるような気さえしていた。
いやいやいや!
ボクは頭をぶるんと振って。
ともかく、目の前のゴースト殲滅が最優先だ!(炎の魔弾奥義、炸裂☆)
GTからの帰り道。
彼に手を引いてもらいながら(もうすぐ新月なのに街灯を見て「あ、まんまるお月さまだ」とか思っていたりして)ボクは明らかにぽやっとしていた。
あんなにハッキリと強く「愛してる」なんて言い切られたことなどなくて、ボクは正直、うれしくてのぼせていた。帰りの道々、何を話したのかも覚えてないほどで、ボクはずいぶんと腑抜けな相槌を打っていただろうけど、彼はそんなボクでもきっと「構わない」と笑って、ボクがコケたりしないように手を引いていてくれるのだろう 。
…愛してるなんて、口にするのは簡単だと思っていた。
そう、口にするだけなら、きっと簡単だ。
愛を歌った歌だって、世界にはあんなにあふれかえっていて。
だけど、実感を伴ってしまったとき、ボクはおいそれと口にできなくなってしまっていた。
そういう歌を歌うときですら、彼にイメージが結びつけば、その部分だけ妙に遠慮がちな声になってしまう。
彼に対するあふれそうな想いは掛け値なしに本物だけれど、だからこそボクは、彼に一度もそう言えなくなってしまっていた。
…でも。
つながれた手をぎゅっと握りながら立ち止まり、彼を見上げる。
訝しげにボクを振り向く彼。
ぶつかる視線。
ボクは少し微笑んで言った。
「…あんな大きな声で言えば、どこに居たってちゃんと聞こえるよ」
ボクの振った唐突な話題に一瞬きょとんとした彼の頬に、次の瞬間朱が散る。
「…え?あ、あぁ・・・」
頬をぽりぽりと掻いて、彼は少しボクから視線を逸らした。
「でも本当に嬉しかったよ、ありがとな」
そんな言葉を貰えるなんて思ってなかったから。
みなまでは言えなくてボクは、繋いだ指を手持無沙汰に閉じたり開いたりして、それを見つめていた。
「ウン。それならいいんだ」
少しもごもごと口ごもり照れてる彼が可愛いく思えて、ボクはもう一度彼を見上げると、くすっと笑いをこぼした。
じゃあ、帰ろうぜ。そう言ってまた歩き出そうとした彼の腕にすばやく手を伸ばしてボクはしがみつく。
軽くバランスを崩した彼の耳元に背伸びして唇をさっと寄せボクは小さく「ボクも愛してるよ。だいち」と囁いた。
安売りする気は毛頭ないけれどね。
本当に、嬉しかったんだ。
だからこの気持ちを少しでも、あなたと分かち合いたくて。
ボクの言葉はおんなじように、あなたの心を喜びで満たしてあげられるかな。
口にするのは本当に勇気が要るけれど、
本当の想いなら、あなたがいつもしてくれるように臆することなく伝えるべきだ。
なにより、ボクらは直球勝負なところが似ている。
だからこの気持ちも、きっと曲がることなくしっかりまっすぐに伝わるって信じてるよ。
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