ボクはいち早く彼を見つけ、彼が人ごみの中で、きょろきょろしている姿を見ていた。(いつ気づくかな~)なんて考えて些かにまにましながら。
彼がボクに気づくと同時に、ボクはひときわ明るく笑って手を振り「ここだよ、だいち!」と存在アピール。
彼もぱっと顔を綻ばせ、ボクの元へと駆け寄ってくれる。
「トワヤ~。一緒に踊ろう♪」
彼の言に頷く代わりに。
差し出された手に、手を重ねた。
「リードはできないけどな」
そう言って照れ笑う彼だけれど、それは謙遜と言うものだろう。実際、踊っている間じゅう、二人の足がもつれることは一度もなかった。上手にエスコート(もしくはフォロー)してくれるのがいかにも彼らしさというもの。
「そんなことないよ」
ボクは彼ににっこり微笑みかけ、彼に動きのすべてをゆだねている。
「それにな──」
彼のリードが上手かろうと下手だろうと、それはボクにとって瑣末なことだった。
「ボクはだいちとこうして踊りたかったんだから、それを叶えてもらえて、ボクは幸せだよ」
つまりは、そういうことだ。
ボクは彼と踊りたかった。
忙しい時間をやりくりして、ボクの元へと駆けつけてくれた彼。
彼のその想いに、ボクは胸が熱くなる。
キャンプファイヤーの火に照らされて、じわっとした熱が目を覆う。
ボクは炎から少し目を逸らし、光と闇の溶け合うあたりで視線を泳がせた。すると踊る人の輪の中に、寮のセンパイカップルの姿が見えた。
さすがに堂に入るというか、板につくというか。二人の呼吸はここから見ていてもぴったりのようだ。
彼らの睦まじさはボクの憧れだ。
たとえ、ボクらはボクらの世界を二人だけの色に染めあげるとしても。
ボクらもいつか、あんなふうになりたいな、って思うんだ。
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