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Hermitage

PBW「シルバーレイン」のキャラクター、渡月・トワヤ(b63279)の日記。この世界をご存知ない方はブラウザバックをお勧めします。

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  posted by at 23:34:27 │EDIT
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The story of healing.

  posted by 渡月・トワヤ at 16:58:34 │EDIT
……ふぅぅ

ボクは本を閉じると同時に、大きく息を吐き出した。


今日読み終えた本は、図書館で借りてきた本だった。
元を正せばこの本は、夏休みのはじめぐらいに書店でもらってきた「夏のオススメ100冊」とかなんとか、そういったタイトルの、自社出版物を紹介する小冊子に掲載されていたうちの一冊で、その時ボクは、心動かす『何か』がほしかったんだろう。今読み終えたこの本は「感動」とか「ヒューマンドラマ」とか、確かそんなカテゴライズだったから。
ただ、「心を動かす」ということは、それ自体でかなりのエネルギーを消耗するものだと思う。
ボクはすぐに主人公に感情移入してしまうから、それゆえに「感動作」と銘打っているものには迂闊に手を出さないように心がけている。その物語に臨むときにはこちらにも、受け止められる余力と、振り回される覚悟が必要だと考えているからだ。
そんな感じの出合い。小冊子にしるしをつけていたものの、なんとなくこの本には今日まで手を出せないでいた。
初めて手に取る作家の著書というのも、まぁ、腰が引けた理由のひとつなのは否めないけれど。

先週末のこと。
図書館でふらりと書架を渡り歩いていたときにふと目に留まったタイトルは、あの小冊子でしるしをつけていた本だった。
探すでもなく目に留まったということは今が読み時ということか。これも一期一会だと、その本を他の数冊と一緒に貸出しカウンターに持って行ったのだった。
自室に帰っても、横目で背表紙を眺めながら、他の本ばかりに手を伸ばしていた。
ここまできても踏ん切りをつけられない自分が、ちょっとだけ情けない。
えぇい、ままよ。
ボクはようやく重い腰を上げた。

その作家が好む文体も、ボクにとっては好き嫌いの別れる大事なポイントだ。
いくら評判が良くても、たとえ本当に面白かったとしても、肌に合わないと感じれば読み進めるのはこの上ない苦痛にしかならなくて。ボクの一方的なわがままだけれど、こればっかりはどうしようもない。
だから、初見の作家の本を開くときは、いつもいささか緊張してしまう。
この作家のそれは、大丈夫だった。
いや、むしろ……どうしてこんなにやさしいことばを選べるのか、とボクは早々にその作家の織り成す世界に惹きこまれてしまった。
まだほんの十数ページを読んだだけなのに。
まだ物語は始まったばかりだというのに。
──なんでボクは、涙を流しているのだろうか。

読み進めればますます、驚く。
自分自身の体験と重なるような行。
そのたびにボクの心は大きく揺さぶられ、まるであの時の追体験をしているようだった。
フラッシュバックする記憶。
ボクは思わず目をぎゅっと閉じる。
散らばっていた記憶の一つ一つがちくちくと胸を刺すようで。
でも。
そもそもこれはフィクションだ。
きっと、誰にでも起こりうる出来事で、何も特別なことなんかない。ただ、状況が似ているだけ。
理解っているのに、主人公に対して「そうしてはいけない」と叫んでいる自分。


だってボクは、その不安を、痛みを、知っているから。



ボクは閉じた本を前に、熱を持った瞼をぎゅっとタオルで押さえ、しばらく動けなかった。
やっぱり思っていたとおり、たくさん心を揺さぶられ、振り回された。
おかげでだいぶ体力を持って行かれたけれど、でも読んでよかったと思える。
心を重ねた主人公が希望を抱いたエンディングは、同時にボクの心も軽くした。
それに、こんなにも「好きだ」と思える本に出会えたのが、嬉しかった。
絶望に襲われても、また人は立ち上がれるのだと教えてくれる。
ボクはそうやって、なんらかの希望を見出して生きていく方が好きだから、この物語がそう伝えてきてくれることは、自分の生き方を肯定されているようで、単純に嬉しい。
そしてなにより、随所に盛り込まれた、美味しそうなご飯を食べるシーン!
これは、反則だ。
大事に想う人が「美味しい」と笑ってくれることだけを考えて作ったんだ、とか。
あぁ、ズルいなぁ。
そういうご飯には、元気になる素が詰まってるんだもの。
この作家も、知ってるんだ。
美味しいご飯をちゃんと美味しいと思えるようになったら、人はまた前を向いて生きていけるってことを。
ボクもいつか、誰かを元気にしてあげられるようなごはんを作れるのかな。

…あぁ、たくさん泣いたから、腹が減っちまった。
今日の晩御飯は、なんだろう?
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