夜、コーヒーを飲むのは(寝付けなくなるから)本当はよろしくないことなのだけれど、もう少し起きていたい気分だったし、明日は学校も休みだから、たまにはいいよね。
…なんて、誰にするでもない言い訳をしつつ、階段を下りているボク。
ボクは、食堂に下りてきた。コーヒーを淹れるために。
今日は甘い香りで酸味の少ないモカにしようと決める。
胃のためのミルクは必須。
それから、この豆に良く合うこっくりとした甘みのハチミツも入れることにした。
よしよし、ほっこり度(ヒーリング度とも言う)アップ。
自室に戻ると、最初は本を読むつもりでいたのにどういうわけだか、「どうせだしあと2、3ページだけでも先に進んでおこうかな」と参考書を再び開いていた。
一応、今日の予定としていたところは全部終わらせていたから、それで良かったんだけれど、なんと珍しいことに「今日はもう少しだけガンバろうか…」などと殊勝な気持ちが生まれていたせいだ。
その理由はなんとなく、わからないでもない。
決してオカルト的な意味合いではなく、すぐ傍に彼がいて頬杖をついて微笑み、ボクの勉強を見ていてくれているような気がしていたのだ。そのためかはわからないけれど「なんだかここはもうひとつ、頑張っておいたほうがいいぞ」とボクの心の中の誰か、いわゆる野生の勘とでも言うものがしきりに訴えてくるのだ。
あぁ、はいはいわかりましたよ…。
ちゃんとやっちょるよ。
勉強、頑張っちょるけぇねー!(心の叫び。遠いあなたに届けVer.)
不思議だけれどこんな風に、なんとなくだけれど、離れていても彼の存在を近くに感じられるときが最近増えたように思う。そして、彼も同じように、ふとボクの気配を感じ「よし、頑張ろう」と思ってくれていたらいいな、なんて考えている。
そんな風に感じられるのはきっと、相手の存在をいつも自分の心に住まわせているからじゃないかなぁって思うから。
あれは、ボクらが付き合う前の出来事だ。彼がなんのてらいもなく口にした言葉。それはボクがずっと思い描いてきた理想だった。
理想を口にするほど気恥ずかしいものもない。なにしろ(惹かれあってはいただろうけど)恋人でもない相手にそんな話、下手をうてばドン引きされるだけ。ましてやそんなディープな話題に触れられるほどの気丈さもあの頃のボクにはなくて。だから彼にすらその理想を話したことなどなかった。
にも関わらず自分の想いが彼の言葉として滑り出てきたのだ。驚くなというほうが無理な話だろう。でもだからこそ「この人となら、本当にそうなれるかもしれない」と感じられたのだった。
そして「そうなるかもしれない」というボクの予感は違うことなく、今もまさにその通りの道筋を辿っていると確信にも似た気持ちをボクは抱いている。
ただ、あえてそのことを彼に確認したりするような野暮なことはしないから、それがボクの思い込みという可能性だって否定はできないけれど、まぁ、その時はその時だ。
ボクの気持ちに変わりはないのだし、逆に言えば、彼に聞かずとも、きっとそうだろうと確信できることこそが、今回のことについて言えば、本質なのかもしれないのだし。
物理的な距離など、関係ない。
離れていても、一人だと感じない。
ずっと傍に居るって。
そう想いあえるあなたと出逢えたことが、ボクにとっては何よりの幸福だ。
さて、あと1問解いたら、今日の勉強は本当におしまい。
少しだけやさしい本を読んで、あなたの無事を祈りながら眠ることにしよう。
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