──カンボジア。
今まで、特に関心を持ったこともない国。
たしか、カンボジアはカボチャの原産国だとか。
日本に初めてカボチャが持ち込まれた際「これはなんていうものか?」と尋ねた日本人に対し、何のすれ違いか「カンボジア」と答えたのが外国人で、それが日本人の耳には「かぼちゃ」と聞えたことから、この野菜がカボチャと呼ばれるようになったと、そういうどうでもいい、真偽も定かでない知識しか持ち合わせていない自分に、今更ながら呆れてしまう。
そもそも、地理は得意な教科ではないのだ。威張っても仕方がないのだけれど。
カンボジアがどこのあたりに位置するのか、えぇと東南アジア、ぐらい……?というおおざっぱさ。
自分のバカさ加減には、泣けてきちゃうぜ。
まぁ、泣いてても何も始まらないので、本当に泣きはしないけれどな。
それに知らないということは、これから知ることができるということだから、決して悪いことじゃないよ、うん。
彼は今、何をしてるのかなぁ。
そもそも日本との時差って、どれぐらいなのだろうか?
そういう素朴な疑問から、カンボジアについての無知さを思い知ったボクだったけれども、さっさと気分を切り替えて、友達から譲り受けたパームトップを起動し「カンボジア」と検索をかける。
ざんぎり頭を叩いて聞こえる文明開化の音よ、バンザイ。
さっと表示された検索結果に目を通しつつ、ボクはモクレンの形を模したカップに口をつける。
カフェオレは程よい温さになっていた。
今日もコーヒーは美味い。それだけで、元気はでてくるもの。
手ごろなサイトを開き、文字を目で追う。
そこで思いがけない文字列を見つけてボクは「うへぇ!」と思わず変な声を上げた。
自分の出身地、それも都市名がデカデカと書いてあったのだ。
まさかこんなところで出合えるなんて、とカンボジアに対してちょっとだけ湧きあがる親近感を胸に秘め、ボクは画面をスクロールさせた。
UTCは+7とある。日本との時差は2時間か。
彼が居る場所も、夜。
今頃休んでいるのだろうか。
それとも夜を徹して行軍しているのだろうか。
こうしてボクが馳せる想いが、少しでも彼に届けばいいと思う。うぅん、きっと届いている。
彼の力に変わるなら、ボクはいくらでも想いを飛ばせるし、彼もそれを知っているはずだ。
ボクは窓辺に歩み寄り、カーテンを少し開いた。
今夜はあいにくの雨だった。
けれど、しとしとと振り続ける雨だって、ボクの想いを撃ち落とすことはできない。
大丈夫だよ、あなたならやれる。
ボクはそう信じているから。
硝子越し、星の見えない空を見上げて、ボクはにっこりとほほ笑んだ。
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