地元に居たときは今のように「自分のチカラ」を出す機会などあるわけがなく、加えて言うなればできるだけ目立ちたくなかったからどちらかといえばぼんやりした─悪く言えば無気力な─子供だった。
そう、鎌倉に来てから。
ボクの世界はぐるりと180度の華麗なターンを決めた。
銀誓館学園に集う多くの仲間と出会い、本来自分が持っていたチカラが活かせることを知った。大好きな風を誰に遠慮することなくめいっぱい吹かせられるようになったのだ。そしてまた、そうやって自在に吹かせる風の中には、他者の傷を癒し浄化せしめる力もあるということを知ったのだから、世界も変わるってものだろう。
自分が吹かせる風に誇りを持って、今までの"オシゴト"も全力疾走でやってきた。入学当初からつるんでる友達もそんな全力疾走系だったのもあり、ボクとしてはそれが普通のことなのだと思ってたんだ。
今回、彼と最初から一緒できる幸運を得て、ボクは俄然張り切っていた。
「やってやるぜ!」そんな風に多分鼻息もすごく荒かっただろう。そんなボクの顔を見て、よく彼は笑わなかったよなぁと思う。
ボクらが最初に向かった決戦の場は中島公園。
敵の数体は取り逃がしたが攻略は成功したようだ。少なくともこの場に居た一般の人たちの命を救うことはできた。御の字だ。
生命賛歌の降り注ぐ中、ボクは彼を探す。はたして、呼吸を合わせて共に戦った彼は、ほど近い場所にいて。そしてやっぱり、どんなに大勢の人が居てもボクには彼はすぐに判る。彼の姿を認めるとボクはホッとして肩がすとんと落ちた。
あー。。。
ボクはそこではじめて自覚する。本当はこんなにも力んでいたんだってことに。
歩み寄ってくる彼と目を合わせたまま、
「力んでるつもりはなかったんだけどなー」
ボクはそう言って、肩を竦めながら苦笑いした。
「もっと力を抜こうぜ」
先は長いんだからな。ボクに並んで歩き出した彼はそう言いながら、大きな手でボクの肩を抱き寄せるようにしてぽんぽんと軽く叩く。
「大丈夫だからさ」
彼のその一言で、ボクの体の中に、さぁっと風が吹いた。
ああ、そうか。そういうことか。
大丈夫というその一言が驚くほどの安堵感を与えてくれるのは、それを裏打ちする強いやさしさを彼が備えているからだろう。
その言葉はきっと、彼の心の底からちゃんと湧き上がった彼自身の言葉で、だからボクの胸にまっすぐちゃんと届いたのだ。
ボクはともすれば涙腺が緩みそうになって内心慌てた。まだ緒戦じゃないか。
彼に気取られないよう顔をあげないままボクは、うん、と小さく頷き、次の戦いに備えて彼と給水所へ向かった。
彼がいれば本当にボクは大丈夫なのだと、確信しながら。
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