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Hermitage

PBW「シルバーレイン」のキャラクター、渡月・トワヤ(b63279)の日記。この世界をご存知ない方はブラウザバックをお勧めします。

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  posted by at 20:40:44 │EDIT
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白銀寮・星空の屋上 ~長い一日/後編~

  posted by 渡月・トワヤ at 00:00:00 │EDIT
白銀寮・星空の屋上~長い一日/前編~より


季節が、7月から8月へと流れていく深夜0時。
『今夜、屋上で少し話さないか?』
一言書いてあるだけの手紙を握りしめたボクは、屋上への階段を駆け上がっていた。
速く、少しでも速く──。

一段一段がもどかしかった。
「そういうつもりで言ったんじゃないのに…」という後悔しか生まない言葉を重ねてしまった昼間のすれ違い。
このまま彼が離れていってしまうのではないか。ボクが「好きだ」と口走ってしまったあの時より、その考えは切実で、身を切られるかのよう。
今なら間に合う、そんな気がしていた。
本当はもともと「自分のものだ」と言える確かなものなど、彼との間にはなにもなくて。
だから、失うものなど何もないのは解っているのに。

それでも先走る気持ちを抑えることができないでいた。






「ごめん!待った!?」
階段を一足飛びに駆けあがり、少々息を切らしながら、今ボクは屋上に続く鉄のドアを勢いよく開け、意識的に明るい声を出した。
彼に、たくさん笑顔を見せたいから。
少々の気まずさは、この際見えないことにした。
ボクの声に、手すりにもたれて空を見ていた人影はゆっくりと振り返る。その輪郭だけで、ボクの心臓はさっきまでとは別の跳ね方をする。
「大丈夫だぜ。俺も今来たところだから」と言った声はいつもと同じトーンで。
あぁ……
彼の態度がなんら変わっていないことに、ボクは内心ほっとしながら足取りを緩めて彼の隣に立った。
風が汗の滲むうなじを通り過ぎていく。たとえ温くても、今はその風すら心地良く感じられる。
ボクが呼吸を整えるために深く息を吸い込んでいると、
「来てくれたのは嬉しいけれど、階段を駆け上がったらうるさいからダメだよ」
やんわりと窘められて、ボクはあっと声をあげた。
自分のことだけでいっぱいいっぱいだった自分を自覚する。周囲に対する配慮に思いっきり欠けているなんて、カッコ悪すぎる。
「…ごめんなさい」
しゅんとするボクに、まぁ、いいけれど。そう言って彼はくすっと笑った。
彼が笑うと、どんな理由であれ、それだけでボクは満たされてしまうから不思議だ。

幾度か湿った風が、通り過ぎたころ。
「トワヤと俺の今の関係のことだけれど」
沈黙を破ったのは、彼だった。
彼とボクとの関係は、いわゆる友達以上恋人未満、だろうか。
1ヶ月くらい前にとあることを切欠にして彼から「好きだ」と言ってもらえてはいたけれど、それはイコール「付き合おう」ではなくて。
大事にされている実感はあったものの、もともとやさしくて気配り上手な人だから、ボクだけ特別扱いというわけではないのかもしれない。そも、痛々しいボクへの同情という気持ちからの行動かも……。彼の本意は掴めなくて、やさしくされるたびに浮かれたり勘違いしてしまったりする自分が情けなかった。
そんな1ヶ月のボクを見て……『好きだって気持ちは揺らぐものだから』と言った彼の言葉が脳裏をよぎり、無意識に手すりを握る手にぎゅっと力が入ってしまう。
──また、「こんなはずじゃなかった」と失望させちゃったのかもしれないな。
乾ききらないかさぶたなどあっさりと剥げるもの。
生々しい傷が顔を覗かせ、ひりひりと痛む。
痛みに心臓を押しつぶされそうになりながら、彼の次のことばをボクは黙ったまま待った。
「……不安か?」
自身を見透かされたようなそのことばにはっと瞠目し彼を見つめたボクの表情で、彼はその質問が正鵠を射ていたことを確信したらしく、ふわりと笑んだ。
そんな顔で微笑みかけられたら、また厚意を好意だと、勘違いしてしまいそうだよ。
ボクは切なくなって顔を逸らし、屋上から望む遠くの夜景に目を向けた。
「…そりゃあ、不安じゃないって言ったら、嘘になるけどさ──」
そうだね。
下手な嘘はつけない。どうせ見透かされてるんだ。
「ボクが勝手に好きになって、勝手に不安になってるだけだし」
だから、気にしなくていいよ。
こうして、傍に居させてくれるだけで充分だから。
だから、その幸せをボクから奪わないで。
でも、そう願い、子犬のように彼にまとわりつくのは、
「…迷惑だったのかな」
ぐるぐる廻る思考の最後に浮かんだ言葉だけが口を突いて出た。けれどその声は風にかき消されそうなほど小さくて。
「俺が、トワヤに迷惑かけてるって気がしてる」
え?
なんで?
意外すぎる言葉。ボクは思わず彼に向き直った。
「俺はトワヤの不安を拭える方法を知っている。知っているのにやっていない。だから俺自身がモヤモヤしてるのかも」
どこか、気恥ずかしそうにボクを見つめて、彼は苦笑いした。
「…モヤモヤ?」
うん、と彼は軽く頷き、だからそのモヤモヤを取り除こうと思う、と大きく深呼吸した。

「渡月トワヤさん。あなたが好きです。俺と…僕と付き合ってもらえませんか?」

彼は一息に言いきって、ボクをまっすぐに見つめた。
それは、ボクがずっと待っていた言葉だった。
なのに、実際に耳にすると、
「え、えぇと………」
見事なまでに頭の中は真っ白になり、ボクは思いっきり狼狽えてしまっている。
ボクが彼を好きなのは、隠しようもない(隠してるつもりもなかったけれど)事実で。
だから、ボクが嬉しそうに二つ返事でOKするだろうということは、彼でなくても想像に容易いはずだ。
なのに肝心のボクときたら、言葉を失ったまま、おろおろと視線を泳がせている。
予想に反して、あまりにボクが何も言わないので彼は不安になったのだろうか。
「…ダメ?」
しおしおと首を傾げる彼。
いや、そうじゃない。ボクは慌ててぶんぶんと頭を振り、
「ちょっとだけ、待って。……頭の中が真っ白で……」
額に手を当て、おろおろと瞳を泳がせ、呼吸を整えるのだけで精一杯。
本当に夢じゃないのか。
こんな幸せがあっていいはずはない。
──ボクは…ボクは。
もしかしてこれは、自分の願望が見せている幻なのか?
そう思い至ったボクは、自分の手の甲をこっそり爪で抓ってみる。
……マジで痛い。

ボクは覚悟を決めて彼に向き直った。
彼の目を見つめて、
上ずりそうな声を落ち着けるように、ゆっくりと。
「…大地さん、ありがとう。ボクも大地さんのことが好きです。おつきあい、してください」
本当は、もっと気の利いた返事をしたかったよ。
けれど結局、なんのひねりもない、ストレート直球ど真ん中。
でもやっぱり、それがボクらしくて、いいのかもしれない。
「やったー!」
返事を受け取ると彼はガッツポーズを決め、大声を出した。
なんて、かわいらしい。
その、あまりに素直な彼の喜びぶりに、ボクは少し目を瞠り、それからその目をすっと細めた。

止むにやまれぬ事情で彼のことを「好きだ」と言ってしまったあの日。
本当は、そんなことを言えるほど気持ちは募っていなかった。
ただ、彼と過ごしているうちに感じられた未来への予感。とても眩しかったそれを失いたくなくてボクは、拙いことばを必死に繋いだのだった。
そして、野性の勘とも言えるボクのその予感はやはり当たる。
彼のことを知れば知るほど、彼に惹かれていく自分がいた。
少しずつ話をして互いを知りあい、価値観が似ていることに安心して微笑み合った。
ボクの弱いところを見ても驚かないばかりか、守ってやると手を差し伸べてくれた彼。
ボクがしおれそうになると、すっと寄り添い手を取って温めてくれた。
彼のそうした態度に、どれだけボクは救われたことだろうか。

でも。
本当ならば、もう少し時間をかけたかったんじゃないか?
ボクが勝手に好きになり、勝手に不安になっていたんだ。
もしボクの不安を感じ取り、そのために無理してくれているのだとしたら。
なんとなく申し訳ない気持ちになりそう言ったところ、
「勝手に嫌いにならなきゃいいさ」
と笑った。ボクは思わず
「なるもんか!」
ムキになって言い放つ。
「俺も、ならない」
微笑むような彼の静かな声が寄り添って。
星闇に紛れるように、触れあう唇。

──それは、こんなにも、あたたかい。

ずっと、ずっと夢に見ていたの。
彼に、恋人と呼ばれる日のことを。
その願いが叶ったのだから幸せに笑って然るべきボクはしかし、此処までかすかに届く街灯の明りに照らされて眉根を寄せ難しい顔をしている。
「なんでそんなカオしてるの?」
彼は少し困ったように笑って、やさしくボクの髪を梳いた。
そのしぐさも彼から恋人だと認められた証なのだと。
もう不安になる必要はどこにもないという実感が胸を満たしていく。
その事実は、身が震えてしまうほどの幸福をボクに与える。
そして、同時になんだかとても恥ずかしくて、どんな顔をしたらいいのか、わからなくなっていたんだ。
「なんか、ドキドキしすぎてて苦しくて…気を緩めると泣けてくるから」
そうか、と彼は小さく頷いて、
「俺は、トワヤの自然に笑った顔が好きなんだけれど。どうやったらその苦しみから解放してあげられるんだろう?」
…ああ。
なんて大きくて、やさしい。
彼から流れてくるその想いはとても温かく、ボクの胸をいっぱいにする。
「いいの。苦しいのはいい」
あなたを好きだからこそ、この胸は締め付けられる。
だからこれもきっと、幸せのひとつ。
「笑えないボクを、そのまま受け止めてくれたら」
あなたなら、ちゃんと受け止めてくれるってボクはもう、知っている。
「わかった」
ほらね、というように、そよと風が吹いた。
「あのね」
「うん?」
「こうなる前から、ずっと仲良くしていてくれただろ?」
ボクの言葉に、ああ、と彼はこっくりと頷く。
「ボクの中では、もう半分付き合っているような、そんな感覚だったんだ」
ボクの楽観主義が見せる自分に都合の良い夢だと何度戒めても、その感覚は消えなくて。
「だから、もし本当に大地さんと付き合うことになっても、何も変わらないって思ってたんだよね」
彼は穏やかに相槌を打つ。
それぐらい、あなたはボクにたくさんの幸せを、赦しを、毎日与えてくれていたんだ。
「でも……全然違うんだねぇ」
涙が一筋、頬を伝う。
だいじょうぶ、心配はいらないよ。この涙は、歓びの涙だから。
ボクはそう言う代わりに、顔をくしゃくしゃにして笑った。
「そっか」
彼はボクの笑顔を見て、安堵の表情を浮かべる。
「うん。もっと、ずっと、ぎゅーっと嬉しいことだったんだ」
自分の体を抱きしめて、へへ、と照れ笑ったボクを、柔らかなまなざしで見つめた彼は、
「これぐらい?」
その腕でやさしくボクを抱きしめてくれる。
「…うん。このくらい」
ボクもおずおずと彼の背に手を回して、その肩に頬を押し当てた。
「…ああ。俺、今すごく幸せな気分」

ボクの願いは、彼に恋人と認められること。
けれど、それ以上に日々願っていたことは、彼が幸せでありますように、ということだった。
そんなボクだったから、彼のその言葉にいち早く身体が反応してしまう。
「わ!だったらすごく嬉しい!」
思わず回した腕に力がこもって。
「…あぅ」
彼は、情けない声をもらした。

力強くて、やさしくて。
キラキラしていてカッコいいのに、どこか健気でかわいらしいひと。
ボクは知っているよ。
あなたが強いだけの人じゃないことを。
あなた自身が望む、本当のやさしさをちゃんと備えていることを、ボクは知っている。
だから、大丈夫。
安心してね。
ボクも、あなたを守ってあげられるように、強くてやわらかな風になるから。





=========

銀誓館での暮らしも、残り一年となりました。
忘れたくはない。
忘れてほしくない、大事な想い出だから。

此処にひっそりと記しておきます。(2012.01.08 トワヤ背後 記)
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