一昨日から降り出した雨は、昨夜のうちに上がったらしい。
今日は一転、空は青く、カラリと晴れ渡っている。
カナメから屋上に出られる話を聞きつけて、さっそくボクも見学に行くことに。
エレベーターを出たら、すぐにでも外の景色が広がるものとばかり思っていたから、
開いた扉の外がまだ、薄暗い屋内だったので、思わず怯んだ。
あぁそうか。
エレベーターを風雨に晒すわけにもいかないもんなぁ、
考えれば至極あたり前のことに気づかない自分に苦笑をこぼす。
気を取り直し、重たい鉄の扉を開いたら。
防水加工が施されている緑色の床がまず目に飛び込んできた。
それから、奥には、ガラス張りの…温室らしき建物。
「へぇ…けっこう広いモンだなぁ」
高い建物の屋上に上がるなんて、
幼いころに、両親に連れられて出かけた地元のデパートの屋上以来かもしれない。
その時の記憶と、今眼前に広がる景色が、ふっとダブった気がして。
吹き抜ける風はとても強く、ボクは現在に引き戻される。
近所の建物の庇(テント)がバタバタと派手な音を立て、なびいている。
その風は、びゅうっとボクの項を撫で、
スカートをひらひらとはためかせて、遠く空へ吹き抜けて行った。
手すりにもたれて、空を見上げた。
ちぎれちぎれの雲はとても白く、抜けるような空の青さと美しいコントラスト。
陽射しは眩しくて、けれど肌にまとわりつくような暑さは感じなくて。
爽やか、という表現がぴったりな午後。
あぁボクも、
あの風みたいに──
目を閉じて、風に身を任せ、ふわりと浮かぶ、あの感覚を思いだす。
少し切ない感傷が、胸を支配して、ふっと消えた。
だって今はもう。
ボクが風に身を任せたとしても、独りなんかじゃ ないんだから。
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